長編デビュー作「へレディタリー/継承」で注目されたアリ・アスターが監督と脚本を務めた異色ミステリー。スウェーデンの奥地を訪れた大学生たちが遭遇する悪夢を映し出す

 

 

 

 

 

 

      - MIDSOMMAR - 監督 脚本 アリ・アスター

 

 出演 フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー、ウィル・ポールター 他

 

こちらは2019年制作の アメリカアメリカ スウェーデン の合作映画です(148分)

 

 

不慮の事故により家族を失ったアメリカ女性が、恋人と友人に伴ってスウェーデンの

 

ある村を訪れ、村のコミュニティに古くから伝わる伝統の儀式に巻き込まれるという

 

常軌を逸した恐怖の体験を描いたホラー作品でございます。

 

 

 

 

  大学生のダニーは精神的な疾患を抱えていたました。 ある冬の日、同じく精神疾

 

患だった妹が失踪し、両親を道連れに一酸化炭素中毒で無理心中してしまういます。

 

精神の不安定と家族を失ったトラウマに苦しみ続けるダニーを、恋人のクリスチャン

 

は内心重荷に感じていました。翌年の夏、ダニーはクリスチャンと友人のマーク、ジ

 

ョシュと一緒に、同じく友人であるスウェーデンからの留学生ペレの故郷であるホル

 

ガ村を訪れる予定であることを知りますクリスチャンはペレから自分の一族の故郷

 

で、今年夏至祭が開催される事、夏至祭は90年に1度しか開催されないので、見に来

 

てはどうかと誘われたのでした。 大学で文化人類学を専攻するクリスチャンは、学問

 

的関心もあってホルガ行きを決めます。 スウェーデン行きをダニーに隠していたクリ

 

スチャンは、仕方なくダニーも誘う事にします。ダニー達5人はスウェーデンへ渡り

 

ペレの案内でヘルシングランド地方に位置するコミューンであるホルガを訪れます。

 

 

 

 

 

一行は、森に囲まれた草原という幻想的な風景と、白い服を着た親切な村人たちに初

 

めは魅了されます。 一行は同じく部外者で、ペレの兄弟分のイングマールに誘われ

 

てロンドンからやってきたサイモンとコニーのカップルと合流し、イングマールから

 

マジックマッシュルームを勧められます。 キノコによる幻覚の中で、ダニーは妹の幻

 

を見るのでした。 村には夜が訪れますが、白夜のためにいつまでも昼のような明るさ

 

がつづきます。 コミューンに住む人々が集まり開会式のようなものが催されます。 

 

「スコール!」 という乾杯の掛け声とともに遂に夏至祭の幕が上がる事になります

 

が、それはダニー達が思うただの祝祭ではなく、そのコミューンに古くから伝わる自

 

然崇拝の儀式の開始でもあったのです。 彼女達の日常生活とはかけ離れたコミューン

 

の独特な理念と儀式によって次第に追い込まれていくダニー達。 それは徐々に現実的

 

な恐怖へと変化していくのでありました、。

 

 

 

 

アリ・アスター監督は本作が2作目の監督作品となりますが、前作「へレディタリ

 

ー」は個人的にあまりハマらなかった私でした。 で、本作となりますが、正直とても

 

計算された考察上等な高尚な映画ではありましたが、ほぼ予想通りの展開が進むお話

 

で、物語自体には斬新さを感じませんでした。 パッと見、好意的に見えるコミューン

 

に足を踏み入れた人間が垣間見てしまう恐怖のしきたり!というお話は多くあり、こ

 

ちらでもご紹介した「ウィッカーマン」や「サクラメント 死の楽園」 といった多くの

 

作品で既に描かれていますラストがほぼ「ウィッカーマン」だったのは驚きましたが

 

 

 

 

だからこの映画はつまらないかと言うとそれもまた違います。 本作の主人公を女性を

 

にした事で、様々な日常にある抑圧や孤独、恐怖、不安というものからの解放といっ

 

た俗世界からの真の自由を手にする過程が、より際立つ内容になっています。そこに

 

ダニーという女性の抱える家族の損失や恋人との恋愛という彼女自身の恐怖と不安が

 

組み込まれている事で、より観ているこちらが物語に共感出来るようになっています

 

 


 

 

一応ホラー映画という事でリアルな恐怖映像のサービスも登場しますが、どちらかと

 

言えば作品中ずっと不穏な空気と不安感が張りつめているような気味悪さが本作の恐

 

ろしさの醍醐味です。 何せ画面の中では北欧の明るいコミューンののどかな生活や、

 

可愛らしい衣装と建物が映され、恐怖とは程遠い美しさです。 その表面的な明るさと

 

のギャップが逆に、その裏の闇の恐ろしさを増幅させています。

 

 

 

 

ダニー達がコミューンに訪れる時に上下が反転される映像に代表されるように、かな

 

り綿密に計算された美しい映像によって物語られる恐怖。 かなりキューブリックやベ

 

ルイマンの影響を感じさせる映像同様に、(シャイニングの主人公の少年の名前はダ

 

ニーでしたね) 物語の設定 (彼等の使うルーン文字や絵画、といった文化のバックグ

 

ラウンド等) がかなりしっかりと裏付け定義されています。普通に鑑賞してそこまで

 

難しい映画ではありませんが、色々と考察するのがお好きな方は、そういったページ

 

をご覧になるとより楽しめるかも知れません。それだけ細かく設定されている作品で

 

もあります。

 

 

 

 

リアル熊の着ぐるみや、集団でセ〇クスを裸で応援されたり(ある意味周囲に居るオ

 

バサマのヌードが一番恐ろしかった私)、一緒に泣きわめいてくれたり、もがき苦し

 

んでくれたりと、紙一重で笑ってしまう場面もあります。 (集団行動が苦手な私には

 

地獄のような生活です) 日本古来の風習やお祭りも元を正せば生贄等、恐ろしい儀式

 

や風習だったものが時代と共にソフティケイトされているだけで、今残っている日本

 

の風習も異文化の人が見たら、かなり異様なものに見えるんだろうな~と改めて感じ

 

ました。

 

 

 

 

殺人鬼やゴーストが登場する血みどろホラーに飽きた人や、ナチュラリストに憧れて

 

いる人、恋人との別れに踏ん切りがつかない人、孤独が嫌いな人等は、この映画をご

 

覧になって、明日への活力、選択に役立ててみてはいかがでしょうか?です。

 

では、また次回ですよ~! パー