ベトナム反戦を主題にしたロック・ミュージカルの映画化。オクラホマから徴兵された青年クロードが、ニューヨークへやってきた。彼はそこで、ヒッピーのグループと親しくなる。やがてその交流は、グループの一人の戦死という悲劇を招く事に、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1979年の アメリカ映画 アメリカ です。 (121分)

 

1968年のブロードウェイの​​​​​​ミュージカルを映画化した本作は、「カッコーの巣の

 

上で」 「アマデウス」 等の名作を撮った ミロス・フォアマン 監督作品です。

 

 

 

 

ベトナム戦争真っ只中の1960年代を舞台に、徴兵されオクラホマの田舎からニュ

 

ーヨークへやって来たクロードは、セントラルパークにたむろするヒッピー達を見か

 

けます。

 

 

 

 

ひょんなことでバーガーを中心としたヒッピーのグループと知り合ったクロードは,

 

2日後の徴兵までの時間を彼等と過ごす事になり、友情を深めていく事になりますが

 

というお話で、ベトナム戦争とヒッピー という相容れない世界の中で翻弄される若者

 

達を描いています。

 

 

 

 

映画のオープニングは、主人公クロードが暮らす朝靄がかったオクラホマのバス停。 

 

その画はまるでベトナム戦争に足を突っ込んだアメリカ社会の不安を表しているよう

 

にも見えます。 そんな靄をバスで抜け出し、たどり着いたのが、晴れやかでエネルギ

 

ッシュなヒッピーが歌い踊るニューヨーク。 ネクタイ姿で短髪なクロードと、あく

 

までフリーな服装でロングヘアーのヒッピーとの対比が、生きる為の義務と自由を象

 

徴しています

 

 

 


クロードはバーガー達と行動を共にする事で、マリファナを吸い、お金持ちの女性に

 

恋し、お屋敷のパーティーに紛れ込んで警察に捕まったり、池で泳いだりと、まるで

 

 「不思議の国のアリス」 が体験したような、不思議な時間を過ごす事になります。 

 

 

 

 

この中のパーティーシーンが特に印象深かったのですが、タキシードとドレスで着飾

 

ったお金持ちに向かって、「クロードはあんた達を守る為に命を張るんだ!」 と訴え

 

る場面。 

 

 

 

 

戦争の両極端にいる人間の違いが上手く皮肉られていて、その後、バーガーが豪華な

 

シャンデリアの吊るされたダイニングテーブルの上に乗り、「おれには命がある 生き

 

ているんだ」 と歌い踊るシーンには心高鳴るものがありました。 音譜   ただ、当のバー

 

ガー自身も自らの血を流そうとはしていないのですが、、。

 

 

 

 

他にも多数、素敵でパワフルなミュージカルシーンと音楽があります、セントラルパ

 

ークや教会、馬のダンスも楽しめます。 個人的に、地味ながら好きなのが徴兵検査の

 

場面。靴下からの赤いぺティキュアに真の 「フリーダム」 を感じた私でした。 ハイヒール

 

 

 

 

物語のバックボーンにはベトナム戦争があり、反戦という暗くなりがちなテーマでは

 

ありますが、本作はヒッピーを中心とした視点で描く事で若者の 「自由」 を歌い上げ

 

ています。 が、すぐそこには逃れられない現実がある事も彼等は分かっているので

 

すが、、。

 

 

 

 

バーガー達と2日を過ごしたクロードでしたが、やはり真に溶け込む事は無く、現実

 

的に軍隊を選択します。 彼から手紙が来た事で、バーガー達ははるばる車で基地へ

 

と会いに行くのですが、なんとも皮肉な運命の悪戯が起こってしまいます。 

 

 

 

 

最後、この唐突ともいえるコメディのような展開に描く事で、戦争というものの馬鹿

 

馬鹿しさと、軍隊の中に居る個人の「儚さ」を強烈に印象付けられます。 さっきまで

 

生命力に溢れ、自由の象徴のような存在だったからこそより切なく感じてしまうので

 

した。

 

 

 

 

本作、ヒッピーの面々がそれぞれに魅力的なのですが、中でもやはりリーダー的存在

 

のバーガーのキャラにはやられてしまいました。 短髪クロードとの対比が見事に利い

 

ていて、まるで むく犬ディグビー (オールドオールド・イングリッシュ・シープドッ

 

グ) のようなくるくるヘアーと眉毛、そして人懐っこい笑顔がたまりません。 彼が

 

魅力的だからこそラストの余韻が残る作品でもあります。 

 

 

 

 

仲間はとっても良いものだけど、その分失う悲しみもとっても大きいものですね、、

 

「ヘアー」というタイトルに込められたメッセージが、じわじわと浸透して来る作品

 

です。

 

 

 

 

反戦映画は多々ありますが、これほど象徴的に 悲劇と喜劇 を紙一重に描いた作品も

 

珍しいのではないでしょうか はてなマーク 同時にバーガーを代表するヒッピーは反戦を訴えて

 

いるのか、ただ自由≠勝手に生きたいだけなのか、と困惑する私でありました。 

 

といった所で、もし機会があればご覧になってみて下さいませ、です。  目

 

では、また次回ですよ~!  パー

 

 

 

 

 

 

 

文中でもご紹介した、バーガーのソロシーンです。宜しければです。 虹