2038年の日本 ドッグ病が蔓延したメガ崎市では、小林市長が人間への感染を防ぐために、すべての犬を“犬ヶ島”に追放すると宣言する やがて犬ヶ島に隔離された犬たちは、自分たちだけで生き延びることを余儀なくされ、空腹を抱えて辛い日々を送っていた そんなある日、一人の少年が小型飛行機で島に降り立つ 彼は3年前に両親を事故で亡くし、親戚の小林市長に引き取られたアタリ 孤独な彼の悲しみを癒してくれた護衛犬のスポッツを救出にやって来たのだった そして島で出会った個性豊かな5匹の犬たちの協力を得て、いざスポッツを捜す旅に出るアタリだったが、、
こちらは2018年制作の アメリカ映画 です(101分)
「ムーンライズ・キングダム」 「グランド・ブタペスト・ホテル」 の ウェス・アン
ダーソン 監督作品の本作は、全編 ストップモーションアニメ で製作された映画で 本
作によってベルリン国際映画祭 銀熊賞(監督賞) を受賞されておられます
舞台は近未来の日本 (とにかく日本びいきの監督さん、日本を舞台にしたもの
にしたかったようで、近未来という時代設定も 摩訶不思議感 を出す為のものでしかな
かったようであります) ドッグ病 なる病気が大流行するメガ崎市では、人間への感
染を恐れた小林市長が、すべての犬を“犬ヶ島”に追放してしまいます そこはゴミで
出来た島で、なんとか生き残った犬達が生活しておりました
そんな島に、ある日小型のプロペラ機が不時着します 乗っていたのは アタリ という
少年 かつて、自身の護衛犬だったスポッツを捜しに単身 犬ヶ島にやって来た小林市
長の養子でした 新幹線の事故で両親を亡くして、独りぼっちになった12歳のアタ
リは、遠縁の小林市長に引き取られ 護衛として付けられた犬 スポッツだけが、アタリ
が心を許せる親友でした 偶然知り合った5匹の犬と共に、スポッツを探す旅が始ま
りますが、アタリを連れ戻そうとする小林市長の追手が迫ります そして犬隔離政策
の裏には、ある陰謀が隠されていたのでありました、、、といったお話です。
ストーリー云々は別として、とにかくこのヴィジュアルに圧倒されてしまいます 最
初 字幕で鑑賞し始めたのですが、冒頭 細かい映像の上に、日本語と英語の字が表示さ
れるは、日本語はそのまま、英語は字幕だわと、私の動体視力と思考は追いつかず、
パニック 映像をちゃんと見たいのを優先して、慌てて吹き替えに変更したので
ありました 有名どころの豪華俳優陣の、アテレコによる鑑賞は今回諦めた次第です
逆にいえば、それだけ見事な作り込みになっておりまして、メイキングを見るまでは
CG との合成では?と思ってしまう程のこだわりのディテールと、あえてのエキセン
トリックな日本の美術のオンパレードなのであります
北斎、広重といった浮世絵から、相撲、寿司 (これに至っては調理の手順まで見せる
サービス) 歌舞伎、和太鼓はヴィジュアルだけでなく、その奏でる音楽が、劇中で効
果的に使われておりました かなり影響を受けた 黒澤明 の映画からの引
用が多数見られまして、ゴミの島の感じは 「どですかでん」 を思い起こさせます 何
よりも旅が始まる辺りで流れてくる 「七人の侍」 のテーマ曲には嫌でもテンションが
上がってしまう私なのでした
そして本当の主人公である 犬達 はそれぞれ個性的で、見事に可愛らしく描かれていま
す。その分、犬から見た人間の エゴ が痛々しいほどに感じてしまう作りになっていま
す。当然これは犬に限らず人間同士にも当てはまる事ですが、、、このように比喩と
して描かれている部分は多くありますが、あまり難しく考えないで楽しんで観る方が
正解かもしれません。
これだけで十分ではありますが、犬に比べて物語の主人公である アタリ にはあまり生
命力が感じられなかった事は残念でした アタリと一緒に旅をする犬のグループで、
リーダー的存在のチーフと二人きりになった時の場面で、アタリが棒を投げて取って
来いといっても、野良犬のプライドで取ってこない、取ってこい、取ってこない、の
やりとりの末に 「取ってきてやるのはお前が気の毒だからと」 取りに行く場面は良か
ったのですがね
アタリのみならず、人間全般が少し弱かったような気がします 唯一 アメリカからの
留学生トレイシー というキャラクターには魅力がありましたが 人間のキャラ
クターに魅力がない大きな理由としては、やはりそれぞれのバックボーンが描かれて
いない事ではないでしょうか? ピクサー作品が良く出来ているのは、見た目のヴィ
ジュアル以上にキャラクターが描けているから、皆が感情移入しやすくなっているの
だと思います 本作は あえて 人間達をそうしたのかも知れませんが、せめてアタリ
は生き生きとさせてほしかったように思います (日本人のキャラだから感情表現が下
手なのか、、、 )それと小林市長のいきなりの心変わりはもうサスペンスでござい
ます
と、まぁ 勝手な事を言ってしまいましたが、そんな事を差っ引いてもこの映像は十二
分に楽しめる映画でございます 4年という歳月と、この呆れる程の手間 この ザ・
アナログな作品をご自分の目でお確かめ下さいませです
では、また次回ですよ~!
余程 綿密に書かれた脚本あっての作業 途中で書き換えなんて出来ませんな、、