1940年代のスペイン・カタルーニャ ある日、少年アンドレウは、鬱蒼とした森の中で、馬車ごと崖から転落して息絶える親子の姿を目撃する やがて警察は殺人事件と断定、左翼運動に関わって村のつまはじき者となっていたアンドレウの父親ファリオルに疑いの目を向ける。身の危険を悟ったファリオルは捕まる前に姿を消し、アンドレウは祖母の家に身を寄せることに。その家には、事故で左手首から先を失った従妹のヌリアもいた。そしてアンドレウは、彼女と一緒に新しい小学校に通うのだったが…。
こちらは2010年制作の スペイン フランス 合作映画です(108分)
この年の アカデミー外国語映画 にスペイン代表作として出品された作品です(受賞し
たのは、以前ご紹介した 「別離」 でありました)
原作は スペインの エミリ テシドール という作家の 同名小説を基に、同じ作家の
別小説2つの要素を合わせ、脚本化した作品です よって、かなりの要素が詰め込ま
れていて中々要点をまとめにくい と言うのが正直な感想なのですが、予告にあるよう
な サスペンス映画というよりは、大変深い 人間ドラマ の映画になっておりました
オープニング 森の中 馬車を引く男 車輪がはまり馬車を押す男 その背後から人
が現われ、首を絞める 争うが、男は石で殴り殺され馬車の中へ、しかし馬車の中に
は殺された男の子供が乗っていた が、馬車はそのまま崖から落とされる (この落
下シーンは見物です) 近くに居た少年 アンドレウ は音に気付き、その落下現場を目
撃する そこには 幼なじみの クレット が瀕死の状態で横たわっていた、息も絶え絶
えのクレットがアンドレウに遺した最期の言葉は 「ピトルリウア」 だった
警察の捜査で殺人事件と断定、左翼の政治活動に関わっていたために村人から疎まれ
ていたアンドレウの父 ファリオル が容疑者として目を付けられる。この事態にファリ
オルは妻子を残して姿を消し、アンドレウは父の実家に預けられることになる この
出来事をきっかけに 11歳の少年 アンドレウ と、その家族の 過去、現在、未来 が大
きく変化 露呈 していく事になります
主人公 アンドレウ の目線から見た、スペイン内戦後の間もない田舎のコミュニティの
暗部、両親の過去、思春期の子供が持つ おとぎ話と神秘性、大人の汚さと性、選択肢
の無い未来、等のお話が様々に交じり合い、時にサスペンスフルにストーリーが進ん
で行く事になっています
映画の軸となるのは 「親子の愛」 についての物語になっていまして、親が子供と、家
族を思うゆえにしなければならなかった事、してしまった事によって、逆に子供、家
族が苦しむ事になるという悲劇でもあります その根底にあるのは、当時の貧困
が生み出した部分が大きく、原題でもある 「黒パン」 は貧困層が食べていた小麦粉以
外に混じり物があり、固いパンを指し 富裕層は 白く柔らかいパンを食べていて、劇中
でも出て来ますが貧困を象徴するものがタイトルとなっています
ラスト、アンドレウ が自分の未来を選択出来る場面があります 彼は初めて自らの将
来を選択するのですが、その後の母親との会話場面は切ないものがあります 何故
アンドレウ が 選択 という権利を得る事が出来たのか、そしてガラス越しの アンドレ
ウの瞳と、息で曇ったガラスの向こうの後ろ姿、、、ドアを閉めてからのエンドクレ
ジット ドス~ンと重い気分に落とされる私でありました
ストーリーとは裏腹に、映像は大変に美しい陰影の効いた奥行のある撮影で、時代感
を巧みに表現されています アンドレウ少年の存在感ある 顔 も素敵で、出演者達も良
い顔が揃っております 重いテーマの作品ですが、その中を必死に生きる人々達
を ご覧頂ければとおもいますので機会があれば手に取ってみて下さいませです
では、また次回ですよ~!