「…で、満足した?」

キョロキョロといつまでも落ち着かない俺に帰れと言わんばかりの台詞。
これで帰るわけには行かないっしょ。

「暑い中歩いて来たしさ、麦茶とか出してよ」
「その隙に」
「写メしてSNSなんかに上げないですよ」

はははって笑ったら。

……あれ?一瞬気のせいかもだけど…
ちょっと柔らかい顔。

「あんま見んな」
でもすぐ立ち上がってキッチンに行ってしまった。

前も思ったけどこの人無口かと思えば意外と会話が弾むんだよな。
うまく誘導してくれるみたいな…

……話しやすい。




「先生はさ」
グラスに口をつけるとたっぷりの氷が唇に触れて一気に体温を下げる。

「なんで教師になったの」

先生は片膝立てて座ってて。
こんなくだけた先生誰も見たことないんじゃない?ってちょっと嬉しくなった。

「コネと資格があったから」
…あら。コネだなんて意外。

「そうなの?それで教師?サラリーマンでもいいわけじゃん」
「俺がサラリーマンできると思うか?」
「教師も向いてると思えないけど」

俺的にも快心の突っこみだと思ったけど。


先生は
「そうだよな」
って笑った。



初めて……笑った。