『…翔くん?今大丈夫?』

電話の向こうの声は少し怯えてるようだった。

「おぉ…どした?」

寝てる智くんを起こさないようにベッドから出て…ひやりとする廊下に座り込んだ。

『あの…昼間はごめんね?』

潤はさっきのことを相当気にしてるようで、きっと何時間も悩んで俺に電話してきたんだろうなってことが容易に想像できた。


そう、何時間も。

―――俺が智くんに愛されてる時間もずっと。


『俺浮かれてて…ほんとごめん。こんなの翔くんしか話せる人いないし…でももう言わないから』
「…いいよ」
『え?』

俺の言葉が意外だったのかしばらく無言が続いた。
だから心から穏やかな声で言ってあげる。

「いいよ。俺でよければ相談とかも乗るし。何でも話して」
『え……いい、の?』


うん。
何でも話してよ。
お前といる智くんはどんな顔をしてるのか。
お前といる智くんは何をするのか。

お前をどうやって愛するのか。
お前にどうやって愛されるのか。


……全部俺が上書きするから。

智くんがここに来たら全部綺麗にお前を消してあげるから。


そう。

俺はお前に智くんを「貸して」いるんだ。