そこそこの女優がそこそこのタレントと熱愛発覚ってのは
そこそこ話題になってた。

テレビがその話題になるとニノはさらりとチャンネルを変える。

「『きょうの苔』、これ観なきゃ」
「嘘でしょ何それ」

その時のニノの番組セレクトは無茶苦茶で、
分刻みで準備してる俺は何度もそれに目を奪われて邪魔をされた。

「やっべじゃ俺行くわ。今日ニノ遅いんだっけ?」
「うん、ちょっと飲んでくる」

毎日俺が帰る時間にニノはいてくれて、ゲームしながら俺を迎えてくれてる。

でも今日はきっと帰る頃ニノはいないわけで・・・と言って俺も誰かと食事して
あんまり遅くなっても起きて待っててもらうのは気が引けるわけで・・・

なんていうか・・・その・・・合鍵とか俺が言うのも変だし
居候の分際で図々しいというか、恋人でもないのにおかしいというか。

「翔ちゃん今日も帰ってくる?」
「え?」

なんか妙に引っかかる言い方。

「今日も、明日も帰ってくる?」
「え・・・うん。あ、そっかゴメン迷惑―――」
「じゃあこれ」

至近距離で何かを突きつけられて、焦点が合わない俺は後ずさりした。

「え?これ」
「俺んちの合鍵。ないと不便でしょ」

ニノは笑うでもなくほらって俺の手に鍵を握らせた。

「あ、あぁありがと助かる」
「じゃ・・・仕事頑張って」
「おぉ」


なんだろこれ。
・・・なにこの胸のくすぐったい感じ。