「なんで今日帰ってきたの?」
「何それ泊まってくればよかったの?てかさっき電話で話したじゃん」
「そうだっけ」

ビールの空き缶を片付けて、お酒とグラスをローテーブルに持っていく。

「あ、そっちで飲む?」

翔さんはなれない手付きで適当につまみを盛り付けてこっちに持ってきた。

「食わないで飲むと明日に残るよ」
「うん」

今日は翔さんは何も聞いてこない。

松潤と何話したの?
なんで急に家飲みしてんの?
なんか目ぇ腫れてない?

きっといっぱい聞くことはあるはずなのに。


「翔さん」
数秒見つめあった後、俺はゆっくり翔さんにキスをした。

最初びっくりしたみたいだけど・・・睫毛が頬に触れて、目を閉じたのがわかった。

『好きだったよ』
そんなことを翔さんに言われたら俺はどうするんだろう。

胸がざわざわして、急に不安になる。

「カズ・・・?」
そのまま翔さんを押し倒してゆっくりその目を見つめた。

「何、どしたの」

翔さんにはそんなこと言われたくない。
『好きだった』なんて、もう俺を好きじゃないなんて。

手を離さないでほしい。
俺に背中を向けないでほしい。
この家から、部屋から、俺のそばからいなくならないでほしい。

翔さん・・・には。

「翔さん俺」

翔さんの唇が何か言おうと動いたから、そしてそれはこの場を丸く治めようと
ふざけたことを言うときの表情だったから。

「俺翔さんが好きだよ」
話をそらされる前にそう言った。

「・・・俺のこと嫌いにならないで」

初めて、自分の本当の気持ちを伝えた。