チェルノブイリやスリーマイル島の事故では、事故後速やかに専門家による調査委員会が設置され、精緻な調査が行われました。今回の福島のケースでは、事故発生から2ヶ月半を経過してなお、事故調による検証作業がなされていないのは大問題です。

当PTでは、今週からは「工程表」の妥当性の検証や、汚染実態、モニタリング状況の把握をテーマに活発な議論を展開していきたいと考えています。

福島原発事故の問題点や課題を検証する上で、チェルノブイリ事故の教訓を避けて通ることはできません。
本日のPT総会には、欧州復興開発銀行国際チェルノブイリ・プロジェクト技術顧問である武田充司氏をお招きし、谷岡郁子参議員による「教科書としてのチェルノブイリ」をテーマとするプレゼンを聞きました。

武田氏は、1986年より政府派遣によりチェルノブイリの修復作業に尽力してきたプラント専門家です。
東電の工程表をどう評価するかと質問に対しては、「核暴走により炉心本体が吹っ飛んでバラバラになって空中に飛び散ったチェルノブイリと、シャットダウン後冷却が思うようにいかなくて徐々にメルトダウンを起こした福島のケースは根本的に異なる。シャットダウンして随分たっているので崩壊熱も落ちており、余程大きな余震などによる思いがけない展開がない限りは、冷却して安定化させる工程や要する時間について、各号機にあまり違いはない。しかし、汚染水等を押さえ込んでみるまでは、事態収拾とはいえないので、今後の状況次第。現場調査により中の状態を正確に把握することが重要になる」というコメントがありました。

谷岡議員のプレゼンでは、OECDなど国際機関による調査レポート等膨大な資料をもとに、
・事故処理
・放射性物質の拡散、移動、浸透
・農業、食物への影響
・森林、その他の生態系への影響
・人体・精神への影響と関連科学
・被災者、避難した人々の生活
・社会・経済への影響
・広報・社会心理としてのチェルノブイリ
・モニタリング、気象学、地理学関連問題
・マネジメントとロジスティクス
といったチェルノブイリ事故の包括的な分析が示されました。

事故後の経過や環境・社会への影響を網羅した秀逸なレポートであり、福島で起こっていること、今後起こりうる事象と対策を議論する上で貴重な機会となりました。