置き忘れの傘がカナシミを生み出す

(紫陽花は川の底で心中しました)


忘備録が書き足されます

(勝手口から侵入する百鬼夜行)


青空に青い鳥の羽根が鏤められる

(脆弱な酸素を構築し直す)


赤い糸が織り包まれて秘匿された

(切開された腹部から囀る嘴)


細く照らされる道筋の中央線

(点線が走り直線は後方へ消え去る)


日常に侵食する憧れと防腐剤

(手首は不自由を求めて伸ばされた)


死体袋に詰めた悪夢が凭れかかる

(喉の奥に吐き出された愛着が溶ける)


何重にも鍵をかけて閉じ込めた

(身の内で歌う声が耳を塞ぐ)


予告なく変更される手続き

(霧の森で湿気てゆく手紙)


本棚で背表紙が軋む

(現に滲んでゆく慈雨の祈り)


「天気予報図から(指摘)される(詩的)なエレジーを掻き鳴らす(私的)嗜好性の目論見を(至適)に配列せよ」