今回は映像・絵本作家の西坂来人(にしざからいと)さんを紹介する

実は西坂さんは、
昨年12月14日(日)に坂本博之さんらのボクシングセッションの時に
一緒に福島に同行した方である
(関連リンク)
♪坂本博之ボクシングセッション in 福島!(1)
♪坂本博之ボクシングセッション in 福島!(5) 加藤さん、西坂さん

この時の西坂さんは、裏方に徹した形であまり目立った活動はしていなかったが、
実は、昨年から福島の児童養護施設にて定期的に「絵本づくりワークショップ」を開催している

福島ではあまりお話が出来なかったので、後日改めてお話を伺った次第

■西坂さんの経歴
1985年生まれ 福島出身
小学生時代、父親の暴力が元で、一時期福島の児童養護施設で過ごす
日活芸術学院演出コース出身
在学中、西東京映画祭において優秀賞を受賞
日本映画の特撮美術、TVシリーズの特撮スタップを経てフリーの絵本作家、映像作家に

現在は映画監督を目指して、映像関係の仕事を精力的にこなしている
その中でも、
j:com武蔵野三鷹ラグビーチーム応援番組“Aggressive Atlastars”は、
水曜日更新で、毎日19:25~19:30の5分間放送している
(Youtube)
“Aggressive Atlastars”

番組構成、撮影、編集、挿入イラストおよびアニメーション制作全てを
一人で行っているものだ


また絵本作家としても活躍中で、現在西坂さんのHPにて無料で絵本を公開している
(西坂さんHP)
映像・絵本作家 西坂来人HP

(作品の一部)



ここで素朴な疑問を投げかけてみた

■「絵本づくりワークショップ」を始めたきっかけは?
私の知る児童養護施設のお話しをさせていただきます。


児童養護施設は、

様々な理由で親や保護者と暮らせない状態の子供たちが預けられる訳ですが、

法律により18歳になると施設を出なければいけません。


それ以降は就職するケースがほとんどです。


これは私が問題だと思うことのひとつなのですが、

中学を出て就職するケースが非常に多いという事です。

(高校へ進学し、さらに大学進学を選ぶ子どもはその中でもほんの一握りです。)


そして、中学を出て就職をした子ども達の多くは頑張って働いていますが、

悲しいことに離職率が非常に高いという現実があります。

仕事が長続せず、転職をくり返し、

だんだんと自信を失って自暴自棄になってしまう方も多いです。


その理由はいくつかあるのですが・・・


一番大きな理由としては・・・

虐待やネグレクト、劣悪な家庭環境の中で育った経験のある子どもたちは、

「自分を肯定する力が弱い」ということ。


例えば親から「あんたなんか産まなきゃよかった」と言われた子どもが、

自分を好きになれるでしょうか?


邪魔者扱いされたり、理不尽な暴力を受けた子どもが、

自信を持って自分の考えを誰かに話せるでしょうか?


まずは「自分を好きになる」ということが出来なければ、

何かに挑戦したり、障害を乗り越える力が身につかないのです。



もうひとつの理由は、

子ども達自身が卒業後の未来を想像する事が難しいということ。


児童養護施設に入れば最低限の生活は保障され、

3食の食事を始めとして、衣食住や教育は全て保障されています。


ただ児童養護施設の中での生活が大半なので、

ある意味世の中にある色々な仕組みや仕事を知らないんですね。


人との接点や社会との接点が乏しい為、

見えている未来の景色が非常に限定的なものになってしまっているのです。


中卒で社会に出て仕事が続かず、

大人達からは「根性がない」とか「意思が弱い」と言われ「本人の問題」と切り捨てられてしまう。

その上、頼れる大人も周りにいない、身寄りがない子ども達の未来は明るくありません。


独り立ちできず、貧困でホームレスになるケースもあります。

女性の場合は、安易に売春に走ってしまうことも多いです。

それが現実にある深刻な問題のひとつです。


児童養護施設から見える社会課題は他にも沢山あるのですが、

その社会課題に対して自分が関わる事で解決できることは何か?を考えました。

その結論が「絵本づくりワークショップ」だったんです。




■「絵本づくりワークショップ」の狙いは何でしょうか?
私が「絵本づくりワークショップ」をやっている理由は3つあります。

1.褒める
⇒普通の子どもであれば、親に可愛がられ、褒められますよね。
褒められる中で自信をだんだんとつけていく。

でも児童養護施設の子供らはそういう褒められる経験が少ないんです。
なので、「絵本づくりワークショップ」を通して、子どもらとコミュニケーションを通して
褒めるといことをやっています。

誰でも褒められると嬉しいですよね?
本人が創った作品を褒めることで、
やればできる!という自信を少しでも付けてもらえればなと思っています。




2.お互いに発表し合う

お互いの作品を発表し合うことで、相手を理解することを覚えるということです。

これは自分のことだけでなく、相手を理解しお互いに認め合うことで
集団での中での自分というものを理解するということですね。



3.課題を出す


「絵本づくりワークショップ」の内容なのですが、
講師役の私が示した通りにみんなが同じものを創るという形には敢えてしていません。

初めの1~2枚まではみんなが同じストーリーでスタートするのです。
例えば仲の良い二人組がいたとします。(例えば「カメと毛虫」)
但し、そのうちの一人が風で飛ばされてしまったとします。

その続きはどうする?という形で課題を与えるんですね。

それぞれが考えて絵本を創り、それを発表してお互いに褒める。
ということです。

つまり
「絵本づくりワークショップ」では・・・
「つくる楽しさ」、
「表現することへポジティブになってもらうこと」、
「自己肯定感を育むこと」、
「他者の内面を知る こと」、
「課題を解決する力」
を、キーワードに毎回試行錯誤を重ね、
幅広い年齢層の子ども達が楽しめるワークショップにしたい気持ちでやっています。

正直、私がやっていることはホントに小さな力なのかも知れません・・・
・・・でも私が携わることで、一人でも二人でも将来に希望が持てて
頑張れる子どもがでれば、これほど嬉しい事はありませんね。


■西坂さんの将来の夢はなんですか?
やはり映画監督になることですね。
私は黒澤明監督の『生きる』の作品が好きなんです。

あとゆくゆくは、児童養護施設を絡めた映画も創りたいですね。
児童養護施設の出身ということで、表も裏も知っているので
映画というものを通して児童養護施設を理解していただけるようにして行きたいです。

もちろん現在行っている「絵本づくりワークショップ」も続けていきます。



 ■ □ ■ □ ■

昨年福島に同行した時に、
「絵本づくりワークショップ」をやっているということは聞いてはいたが
今回その背景、目的をお聞きして、全てが納得できた

また、坂本博之さんの当日の熱い話の話題にもなったが、
あそこまでストレートにまた熱く語ってくれる人はいなかった、
子どもたちにとって親のような存在ですと語っていたのが印的だった
(関連リンク)
♪坂本博之ボクシングセッション in 福島!(4) 坂本さんのメッセージ


児童養護施設に対して自分ができることを冷静に、また真剣に考え、
地道であっても信念にしたがって行動している西坂さんと接してみて、
非常に考え方がしっかりしている方だなという印象を受けた

この3月も前回の児童養護施設を訪れる予定とのことで、
これからも西坂さんの活躍を期待したい

今回はお忙しい中ありがとうございました!