ミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」観てきました。
最初にこの舞台化情報を聞いた時、「え?ジョジョって…スタンド(私の印象は第3部あたりが強い)?それって2.5次元向きでは?なぜ帝劇で?」と思いました。息子に「ファントムブラッド」って、どの話?と訊くと、第1部だと?あー、だったら納得かも?時代的には「オペラ座の怪人」と同じくらい(どちらも1880年頃〜)だし、アクションというよりホラーっぽい話で、グランドミュージカルの雰囲気あるかも?とりあえず一度は観てみようとチケットをとりました。
初日が遅れるというアクシデントもありましたが、それだけ複雑な舞台装置や映像、照明、ワイヤーアクション…さまざまに駆使した舞台に東宝さんの世界を目指す(海外での上演権ビジネス狙い?)本気を感じます。
登場人物は、脚本、音楽、役者の力が合わせられて深みも奥行きも出て、立体的に立ち上がっていると感じました。
ジョナサン・ジョースター:松下優也くん
ジョジョ&ディオの出会い〜は子役も使うかと思っていたら最初から優也くん&マモちゃんで意外でした(実際、年齢は中学生くらいからで、それほど子どもじゃなかった)。優也くんは高めで甘めの声質が、役によっては違和感のことあるけれど、今回は合っていたと思います。ひ弱な少年時代から逞しく成長し、父親譲りの高潔さを備えていくところが声、歌からも、立ち姿、アクションからも見事に現れていました。
ディオ・ブランドー:宮野守くん
ブラボー👏シングルキャストで大変だろうと思うけど、唯一無二のディオでした。長身、体型や見た目の雰囲気も、動きもピッタリ、歌も良いし…何より声!特にディオが人間でなくなった後、あんな声を出せるのはマモちゃんだけでしょう。声優として長年、超常現象も異質な戦いも表現してきた声を持って、この話の世界観に説得力を持たせていると思います。また、母を想う歌から始まり、父の呪縛や執念、単なる悪ではない、内面に踏み込んだ人物造形が素晴らしかったです。
そして、ミュージカル版は2人の父親の存在が大きい!
ダリオ・ブランドー:コング桑田さん
死体の持ち物を漁る場面から登場って丸っきりテナルディエ(「レ・ミゼラブル」)。初っ端に亡くなって出番終わりかと思ったら、その後も出てくる出てくる…亡霊なのか幻なのか…観ていてだんだん楽しくなってきてしまった。ディオにかけられた呪縛を表しているのだと思うけれど、ミュージカルの登場人物って、死(「エリザベート」、「ロミオ&ジュリエット」)とか、才能(「モーツァルト!」)とか、母と首切り役人(「レディベス」)とか、訳わからないものにつきまとわれがち…ですね。
ジョースター卿:別所哲也さん
別所さん、最近拝見したのは「チェーザレ」のお父様でしたが、帝劇に立つ姿を観るのはバルジャン(「レ・ミゼラブル」)以来?際立つ高潔さ、品格ある佇まいがさらに貫禄を増しています。今回、初見では主役のナンバー含め、ほとんどの歌、ぼんやりとしか覚えてないけれど、ジョースター卿のソロナンバー2曲(ダリオに指輪を渡した時の歌と、2人の騎士たちを物語る歌)はクッキリと記憶に残っています。これぞミュージカルの力、歌の力…を実感させてくれました。
ツェペリ男爵:東山義久くん
波紋使いという非凡な存在を、キレッキレかつ美しい動きで表して、ユーモアもエレガンスもあり。そこそこ年齢重ねてるのもグッド👍軽快な歌はエンジニア(「ミス・サイゴン」)っぽい? 波紋の表現はアナログだった(「歌舞伎ワンピース」や「ミュージカルアナ雪」でも観た手法)のはちょっとビックリでした。
スピードワゴン:YOUNG DAISさん
年を取ったスピードワゴンが語り始める…という構成が良いですねー。狂言回しにうってつけの存在で、舞台をわかりやすくしてくれます。ラップも今どきのミュージカルっぽくて良いのだけど、私には歌詞聞き取りづらく、字幕欲しいとか思ってしまった。これは若い人ならわかるのかな?
エリナ・ペンドルトン:清水美依紗ちゃん
この舞台、女性のメインキャラは1人で寂しいですねー。量より質?で、一番美しい歌声を持つ美依紗ちゃんを連れてきたのはベストと思うけど、感情移入できるほどの出番ないのが残念。歌声は美しいだけでなく、彼女の秘めた強さ(この後、孫を強く育てていく片鱗)も感じさせます。あと、彼女の衣装にはもう少しお金かけてほしかったな。一枚だけにしても、あのピンクでひらひらのセンスはどうなの?と思う。
音楽はまた!ドーヴ・アチアさん。
最近、一時期のワイルドホーンに取って代わったようなご活躍ですね(日本人作曲家に取って代わられる時代が来てほしい)。
1曲(序盤とラスト、コーラスとエリナが歌う曲)、「キングアーサー」の使い回し?としか思えないメロディーがあって、頭の中で健ちゃんの声が聞こえてきたけど💦概ね曲は良い。
さらに、フレンチミュージカルはフレンチらしく(キャラソンっぽく?)、日本のミュージカルはその作法にのっとった感じ(独白や回想、状況説明)でハマる曲なのが、プロの仕事だなーと思いました。
脚本も良くできてる。特に一幕は全てのエピソードを取りこぼしなく、さらにディオの想いを深掘り。2人の少年が、"相手がいたからこそ"、より高みを目指して成長する物語とも捉えられますし、演出表現も凄まじく、よくぞあの動きを3次元で表現した…と称えます。1幕だけなら、ロマンあるゴシックホラーとして、本当に良かったし、まあ気に入ったとも言えました。
ただ、原作通りとは言え、2幕はいかにも少年漫画で、
後半は戦いばかりで、ちょっと飽きてしまった(ごめんなさい)💦きっと原作ファン、新しい客層は2幕も楽しまれたことと思いますので、あくまで個人の感想です。
エリナの出番少なく、従来のミュージカル観客女性好みのロマンチックな恋愛要素が極少。
同様にホラーっぽいミュージカルと比べて
「オペラ座の怪人」の悲しい愛とか
「フランケンシュタイン」の友情とか、
「ジキル&ハイド」の葛藤とか、
「ジャック・ザ・リッパー」の謎解き(正体サプライズ)とか、
そういう惹かれる要素がなかったかな。
でも、それは原作要因だし、漫画原作(この原作は連載中、弟のジャンプで読んでいました)をミュージカル舞台に移し替えた脚本としては成功で、あの原作の舞台化としては最大限だと思います。客席には男性や若いカップルも多く、新しい客層も引き込んでるし、これはさらに海外でもウケると良いなー。
東宝さんが海外に上手く売り込んで、版権ビジネスを成功させ、その利益を観客に還元(他作品のチケット値下げ)してくれると良いなーと(身も蓋もない願望💦)
願ってます。