隆俊はしばらく考えていたが
「この前の大会まではずっと妹のつもりでした。」
「でもこの前、千尋の奴俺の前で泣いたんです。」
「今まで殴られても蹴られても泣いたことなかったのに。」
「ヤキモチ妬いてる自分に腹を立てて。」
「それ見たら俺、いたたまれなくなって千尋のこと抱きしめました。」
「千尋、俺の胸の中で小さくなって震えながら泣いてるんです。」
「俺、ゆるせなかったんです。」
「千尋のことこんなにも悲しませてる悟と瞳さんが。」
「もちろん俺の思い込みなんですけど、そのときはそんな風にしか考えられなかったから。」
「すいません。」
隆俊は頭を下げかけ
「あっ、もう話題に出さないって約束でしたね。」
瞳はゆっくり首を振ると
「それだけ千尋ちゃんのことが大事なんですね。」
隆俊を見た。
「はい。」
隆俊もしっかり瞳を見つめ返した。
「それでも悟くんとの恋、応援するの?」
瞳の質問にやや困った顔を見せる隆俊であったが
「おかしいかも知れませんけど、千尋がそれで幸せやったら。」
「それに千尋も俺の気持ちに気づいてくれてると思うから。」
「今はじっくり待ってみます。」
そう答えた。
「そっか。」
瞳はそれ以上は言いようがなかった。
瞳も少なからず隆俊の恋の行方に関係しているのだから。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その後、4人は合流し中華街で昼ごはんを食べ、神戸の町をぶらぶらと散策した。
そして夕方、再び最初の公園に戻ってきた。
今度は千尋と隆俊がカップルとなり先に消えていった。
「最初からこういうプランで、私にだけ知らされてなかったんよね。」
悟に向かいちょっとふくれて見せた。
「俺も聞かされてなかったんですよ。」
「朝、いきなり千尋に拉致されてどなるかと思ってたんですから。」
悟は大あわてで自分の潔白を証明しようとした。
瞳は笑いながら
「ウソ、ウソ、ちゃんとわかってるから。」
「朝、千尋ちゃんに引っ張られて本気で焦ってたもんね。」
悟はほっとしながらも
「ひどいな~また俺のことからかって。」
「ゴメン、ゴメン。」
瞳はそう言うと悟の手を取って歩き出した。