「お前ら、痴話喧嘩やめとけ。」


勇が仲裁に入ったが


「誰が痴話喧嘩ですか!」


千尋に睨みつけられた。


「大体、松本さんがいらんこと言うから悪いんですよ。」


悟も勇に噛み付いた。


「ええー!俺が悪いの?」


「そうです!」


悟と千尋がハモりながらツッコンだ。


そのやり取りを見て、瞳とゆかりは吹き出した。


「みんな仲良いのね。」


瞳はちょっとうらやましそうだった。


「まあそうですね、何年も同じ釜の飯喰った兄弟みたいなもんですから。」


隆俊も笑いながら答え


「ほら遊んでんとそろそろ行くぞ。」


悟たちに声をかけた。


それを合図に3人のもめごとは一応おさまった。


差し詰め隆俊はまとめ役の長男といったところか。


「じゃあ瞳さん、また後で。」


悟が去り際、瞳に手を振っていると


「邪魔!さっさと歩け!」


再び、千尋のローキックが悟のお尻を捕らえた。


「いちいち蹴るな!ボケ!」


悟は怒りの声をあげたが、千尋は聞こえないふりをしてさっさと行ってしまった。


その様子を見ていたゆかりは


「強力なライバルがいてるのね~」


ニヤニヤしながら瞳を見た。


「はぁ?そういう関係と違うって何べん言わすの。」


瞳はムスっとしたが


「はいはい、そういうことにしときましょうね。」


ゆかりはまったく気にしていなかった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


その後、開会式が行なわれ試合が始まった。


瞳とゆかりは初めて見る空手の試合に度肝を抜かれた。


実際に目の前で人が倒されていくのだ。


瞳はそれだけに悟のことが心配になった。


しかし瞳の心配をよそに悟は逆に相手をKOし勝利を収めた。


悟はリングの上でうれしそうに瞳の方を向いて片手をあげた。


瞳はその姿を見てほっと胸を撫で下ろした。


悟に続き隆俊、勇もKOで勝利を収めていた。


普段はおちゃらけていても3人とも相当な猛者である。


「へぇ~3人ともやるわね~」


ゆかりは感心したように言い


「私はどっちにしようかな?」


すっかり隆俊か勇をお持ち帰りする算段だ。


瞳は呆れながら


「2人とも多分年下よ。」


「そんなんぜんぜん関係ないよ。」


ゆかりは笑い飛ばしていた。