隆一は今日、食堂で美由紀に声をかけられたこと。


留守電にメッセージが入っていたこと。


そして今さっき、連絡したことを洗いざらい話した。


話している最中、ユリの顔がどんどん険しくなっていく。


隆一は何かお仕置きされるんじゃないかとドキドキしていた。


ユリはそんな隆一の気持ちを察したのか


「別にリュウに怒ってるわけじゃないわ。」


「ホント!」


隆一はホッと胸をなでおろして


「じゃあ、何でそんな怖い顔してるの?」


あらためて訊いてみた。


「おかしいと思わない?」


「何が?」


隆一はさっぱりわかっていない。


「だってリュウ自分で言ってたじゃない、ぜんぜんもてなかったって。」


「うん、言ったよ。」


「そのぜんぜんもてない人が、いきなりミスキャンパスから声をかけられると思う?」


「まぁ~そう言われれば・・・・・・・・・」


「それに初対面の人が、用事で席を外しただけで心配して連絡するなんて絶対におかしい!」


「確かにそうだよなぁ~」


ここに至ってやっと美由紀の行動に不信感を持ち始める隆一であった。


「でもなんで俺なんかに近づいてきたわけ・・・・・・・・」


隆一は自分で言いかけてやっと気づいた。


「ひょっとして瞬間移動を見られた?」


隆一の言葉にユリはゆっくりうなずいた。


「それしか考えられない。」


「多分、さっきリュウが連絡したから余計に怪しんでいると思う。」


隆一は自分の迂闊さに呆れかえってしまった。


「ゴメン、朝、ユリにさんざん注意されてたのに。」


隆一は頭を下げて謝った。


「ううん、私がもっと強く止めるべきだったのよ。」


「ごめんなさい。」


ユリも頭を下げた。


「ユリが謝ることじゃない、俺のミスなんだから。」


「それよりどうしよう?」


「もうあの娘のこと無視したほうがいいかな?」


隆一はこれからの対策を相談し始めた。


「だめだよ、そんなことすればもっと怪しまれるわよ。」


「じゃあどうする?」


隆一の問いに


「明日、私、学校に行く。」


「それで私が彼女のことを探ってみる。」


ユリは強い調子で答えた。


「だいじょうぶ?」


不安げなようすの隆一に


「だいじょうぶよ、それにリュウが鼻の下伸ばした相手も見たいし。」


(うっ!)


それを言われると何も言い返せない隆一であった。