だいたいいつもこのくらいの時季になると、エオラさんは虫に姿を変えて私のそばに来てくれる。

先日、お出かけした帰り道で私の目の前をふらふらと横切る小さな黒い虫がいた。

翅は傷んでいるように見えて羽ばたきは弱弱しい。

そっと手を差し出すと、その虫は躊躇なく私の指先にとまった。

小さくやせ細っている。

黒い羽根に赤い頭。

もしかして蛍?

お尻の辺りをのぞき込んでみたが、昼間見ても光るわけではないので蛍なのかどうかはわからない。

でも、何となくそんな気がした。

写真に撮って後で調べてみようと思い、慌てて携帯を取り出そうとするも片手は動かせないから手間取ってしまう。

ようやく携帯を取り出してカメラを起動したまではいいが、なかなかピントが合わない。

どうにかこうにか撮影できたかと思ったら、その虫は飛び立ってどこかへ行ってしまった。

出来上がった写真はやっぱりピンボケで蛍なのかどうかの判別は無理だった。

蛍

そもそも蛍なんて、もうこの辺りにはいるはずもなかった。

私がこの地へ来て十数年、一度もこの辺りで蛍を見たことがないのだ。

子供のころはたくさんいたのに……

私が最後に蛍を見たのは、もう 20 年くらい前になるだろうか。

エオラさんと一緒に蛍の名所の辰野へ行って、辺り一面を光りながら舞い飛ぶ蛍を鑑賞した。

そうか。

あの時の思い出と一緒に、蛍になって私の目の前に戻ってきてくれたんだね。

それから私は急にあるアイディアを得た。

まるで、彼女が私にそうしなさいとアドバイスをくれたかのように思えた。

そのアイディアがこれ…

徹夜で作業して一気に記事を書きあげた。

人を助け、自分も助ける。

みんなが幸せになれる、彼女らしい愛のあるアイディア。

蛍になって運んできてくれたんだね。

ありがとう。

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