顎の横ずれ患者にとっては
「カムフラージュ治療」は、
「要注意」です。
いろいろな条件がぴったりと合い、
インフォームド・コンセントの手続きも
妥当に行われた時にだけ
患者自身が満足できる結果が得られるのだと
思います。(例→「カムフラージュ治療 -1-」)
ただ、この患者さんが、
「10年後、20年後も満足しているかなあ」
という心配もあることを
で書きました。
この心配が杞憂であることを願っています。
そして、
→ 「カムフラージュ治療 -5-」 では、
カムフラージュ治療の結果に
満足できなかった別の患者さんが、
2回目の矯正治療を希望した例を
ご紹介しました。
顎横ずれ患者にとって
こんなに不安要素の大きい治療法なのに、
例えば、厚生労働省の e-ヘルスネットでは、
カモフラージュ治療について
「わずかな骨格性不正ならば歯の移動によって
カモフラージュして治療することが可能です。」
としか書かれていません。
この書き方では、カムフラージュ治療とは、
「骨格的不正、つまり顎骨の正中ずれそのもの」が
ある程度改善されて、
顔の左右差が目立たなくなる歯列矯正治療である、
と誤解されかねません。
でも、実際には、
顎の横ずれは一ミリも改善されず、
正面写真での顔の左右差は
治療後もそのまま残る治療法ですよね。
その上「きちんと咬める状態」に
仕上げてくれるかは、
お願いした先生の
担当医としてのプライドと技術力に
かかっているんですよね。
カムフラージュ治療とは、そもそも
↑こういう治療法であると
知ることは、
患者自身が治療先を選んだり、
納得して治療を受けたりするためには
不可欠です。
それなのに、
このことをきちんと教えてくれる情報源が
ほとんどないんです。
それこそ年単位で
探しても探しても見つからなくて、
私の場合は仕方なく論文まで
読みました。
論文を読むことによってようやく、
カムフラージュ治療は
顎の横ずれ患者には
あまりお勧めできない治療法なのだろう、
ということが、
わかってきました。
他方で、
顔の左右非対称がない症状、例えば
「下顎前突症」の患者さんにとっては、
外科手術を避けるための次善策と考えても
大丈夫そうなこともわかってきました。
(あくまでも骨格的不正が一定の
範囲内の場合に限りますが。)
そんな矢先に、
遂に、やっと、見つけました!
とある矯正歯科の先生(※1)が
→ ブログで、
こう書いていらっしゃいます。
「ノースキャロライナ大学のプロフィット教授は、
その著書の中でカムフラージュ治療の
不適応症例の最たるものとして
垂直的な問題と左右な問題を挙げています。」
「顎が曲がっていて顔の非対称がある、
口角が左右どちらかに上がっている、
などの症状が正貌(正面から見た顔)に
あった場合には、歯を動かしても
顔の非対称は完全には治りませんので
顎外科手術を適応することをお勧めしています。」
顎の横ずれ患者の絶対数は、
例えば「下顎前突症」の患者さんよりは
少ないのかもしれません。
でも、
「カモフラージュ治療は横ずれには不適応」
という情報を必要とする患者が
いないわけではないのですから、
正しい情報が
それを必要とする人に
もっと届きやすくなってほしいと
思います。
素人である患者が
論文まで読まないと
正確な情報を得られない、
というのは何かがまちがっていると思います。
(※1)とある矯正歯科の先生
今回、リンクを貼らせていただいた先生ですが、
リンク先へ行けば、もちろん医院名などが、
特定されます。
私個人としましては
歯列矯正を今検討されている方々に
こちらの先生を個人的に
「お勧めしている」わけでも、
「お勧めしていない」わけでもありません。
そこのところは、どうか、
誤解のないようにお願い申し上げます。