カムフラージュ治療シリーズが

5回目になってしまいました。

いつまでも終わらなくて

すみません。

今回が一応最終回のつもりです。

 

 

顎の横ずれが気になって

歯列矯正したいなと思った時は、

「下顎の骨が左右非対称」なのか、

「下顎の噛むときの動きが左右非対称」なのかを

きちんと検査して調べてくれる先生を

見つけられるかどうか、

そこが肝心な気がしています。

 

そんなお話を前回までの

「カムフラージュ治療 1~4」で

させて頂きました。

 

 

今回のお話は、

CTを含めた検査の結果、

「下顎の骨が左右非対称」であることが

確認できた時に、

参考にしていただければ幸いです。

 

 

 

骨自体に左右差がある場合、

 

1.「外科手術併用の矯正」

2. 「カモフラージュ治療」

3. 「何もしない」

 

の三つのうちのどれかを

先生からお勧めされると思います。

 

骨の左右差が大きいと

先生が判断した場合、

1.「外科手術併用の矯正」か、

2. 「カモフラージュ治療」

が選択肢となり、

「どちらかと言えば1がお勧め」と

言われるみたいです。

 

 

余談ですが、

外科手術併用の矯正を

保険適用では行えない先生の場合、

もしかすると

他院を紹介するなどの

選択肢を患者に示すことなく、

「当院でカムフラージュ治療をしましょう」

とだけ言って、

患者を誘導してしまうようなことも

あるのでしょうか?

 

或いは、

カムフラージュ治療であることを

言わずに、

勝手に治療方針を決定して

治療開始してしまったりすることが

あるのでしょうか?

 

患者の利益を無視するこのような先生は

どこにもいないことを願っております。

 

そして、どこにもいないものと仮定して

以下は記述します。

 

 

骨の左右差が大きくて

先生に、

1.「外科手術併用の矯正」か、

2. 「カモフラージュ治療」

のうち、どちらにしますか、

と言われた場合、

きっと誰でも

それぞれのやり方のメリットとデメリットを

慎重に検討した上で、

治療法を選びたいと考えると思います。

 

 

そんなときの情報のひとつとなるのが

こちら(↓)の論文でしょう。

 

川崎 et al. 2010『カムフラージュ治療を行った下顎骨左方偏位症例』岐阜歯科学会雑誌  37 (1), 67-73.

 

 カムフラージュ治療 -1-

ご紹介させて頂いたように、

こちらの論文の患者さんは、

「手術は受けたくなかった」ため、

カムフラージュ治療を選択されて、

その治療結果に満足されていました。

 

 

そしてもうひとつ、

ここでぜひご紹介させて頂きたい論文が、

こちら(↓)です。

 

宮野 et al. 2019 『カムフラージュ治療後の再治療として外科的矯正治療を施工した顔面非対称の1例』昭和学士会誌 79-2, 186-193.

 

こちらの論文の患者さんは、

カムフラージュ治療の結果に満足できず、

結局、2度、歯列矯正をしています。

 

簡単に時系列で示すと以下のようになります。

 

15歳~16歳

・骨格的な左右非対称

(および、多分、下顎前突症)に対して、

カムフラージュ治療(歯列矯正のみの治療)(※1)

をする。

 

22歳

骨格的な左右非対称(下顎が

左にずれていること)と、

奥歯の噛みづらさを

主訴として、論文筆者のところへ初診相談。

 

・検査の結果、骨格性下顎前突症と診断。

さらに、CT画像で下顎骨の変形による

左右差を認める。

 

患者の希望により、

「外科手術併用の矯正治療」を選択、治療開始。

 

23歳

上下顎手術

 

24歳

動的治療終了。

機能的咬合が得られ、また、

下顎の左ずれは改善され、左右対称となった。

 

 

こちらの患者さんの

正面写真を拝見すると、

22歳で2度目の矯正治療を

希望されたお気持ちが

痛いほどわかる気がします。

 

外科手術併用の治療がうまくいって

満足のいく結果が得られて

本当によかったです。

 

「終わりよければすべてよし」

という考え方もありますが、

できれば最初から、

外科手術併用の治療の方を

選んでいただきたかったなあ、

と思います。

 

15歳のとき、

どういう経過で、

誰の意思が主に考慮されて、

カムフラージュ治療が選択されたのか、

そこのところは当事者にしか

わかりませんけれど。

 

 

もし、

このブログを読んでくださる方の中に

1.「外科手術併用の矯正」と

2. 「カモフラージュ治療」

のどちらにしたらよいのか悩んでいる方が

いらっしゃったら、

ご紹介した論文をぜひ、

ひと目でもご覧になってみてください。

 

 

追記(2022-08-21)

※1 カムフラージュ治療(歯列矯正のみの治療)

こちらの患者さんが

15歳~16歳で受けた矯正治療ですが、

「カムフラージュ治療」と呼べるほどの

きちんとしたものだったのか、

疑念は残ります。

 

何故なら、22歳のときの検査で、

左2番から5番あたりが反対咬合だったり、

下の歯列の正中が

上の歯列正中(=顔の正中)から

左に6ミリずれたりしていることが

確認されているからです。

(上下の歯列アーチは連続したU字型)

 

ただ、論文筆者が「カモフラージュ治療」と

呼んでいるので、

ここではその呼び方をそのまま使いました。

 

 

出典

川崎 et al. 2010『カムフラージュ治療を行った下顎骨左方偏位症例』岐阜歯科学会雑誌  37 (1), 67-73.

 

宮野 et al. 2019 『カムフラージュ治療後の再治療として外科的矯正治療を施工した顔面非対称の1例』昭和学士会誌 79-2, 186-193.