手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


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戸板 康二
グリーン車の子供

2箇月ごとのお楽しみ、中村雅楽探偵全集。第2巻もつつがなく刊行です!
今回の表題作になっているのは、直木賞と日本推理作家協会賞のダブル受賞に輝く「グリーン車の子供」。帯には「元祖“日常の謎”」とありますが、言われてみれば確かにそんな感じですねえ。この作品に限らず、本書収録の作品辺りから、このシリーズはこちらの傾向にシフトしてきつつあります。
ただし日常は日常でも、その舞台は歌舞伎役者の世界。巽昌章氏の解説にもありますが、他の作家が同じ舞台に同じ題材を乗せて書こうとするならば、決して「日常の謎」にはならないでしょうね。作者の目線も読者の目線も、芝居の世界は特殊なもの、という前提に立っています。
しかし。


芝居の魔力、芸に生きるものの執念、嫉妬、矜持は、戸板の視点からは、平凡な日常以外の何ものでもないのです。


これは凄いよ。
淡々とごく普通の調子で書かれているから何の気なしに読んでしまいますが、描かれているのは、過去の因縁だったり、役者同士の足の引っ張り合いだったり。それがドロドロと生臭い世界としてではなく、「日常の謎」として読めてしまうのが何しろ凄い。
歌舞伎界のことでなくても、映画のロケ地で殺人が起こるとか、能役者の少年が殺されるとか、芸能の世界での事件が殆どですが、1つだけ、芸能界に全く関係のない設定のものがありました。「臨時停留所」、これは雅楽シリーズ番外編とでもいう感じですね。
ところで、どうでもいいことなんですがちょっと気になることが1つ。雅楽翁という人は、ワトスン役の竹野記者に対して“本家”のシャーロック・ホームズばりに、考えている事を言い当ててみせて驚かせたりしてるんですが。
「ラスト・シーン」と「西の桟敷」に出てくる、事件の起こった時に犬が吠えなかったかどうかと尋ねる場面。
これって偶然そうなった記述じゃなくて、「銀星号事件」を踏まえてのものですよね?

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岩本 勉
ガンちゃんの人に話したくなるプロ野球の面白ネタ本
岩本勉プロ野球本第3弾。面白いんで歓迎ですが、しかしちょっとびっくりしました。だって第2弾から何箇月も経ってませんよ。どうやら需要があるんですねえ。ガンちゃん自身の体験と見聞に基く話がやはり多いから、どうしてもファイターズ近辺に偏った内容になりがちだっていうのに。
今、この手の本を出すのが彼くらいしか見当たらない、というのもきっとあるんでしょうね。昔は江本さんとか坂東さんとかいましたが。
ただ、ガンちゃんの本は、そういうかつてのベストセラーとはちょっと違っているような気がします。
江本さんや坂東さんの本が出ていた頃は、プロ野球選手は大スター。スターの、スターではない顔を知りたい、という欲求に応えるためのものだった、という印象があるんです。自分の飲食の勘定を他の選手に押し付けちゃう人がいた、なんていう話に実名を出しちゃったりしてて。何となく暴露本っぽい、そして少々おっさんくさいニュアンスがありました。
一方、ガンちゃんの本は「PR本」ですね。プロ野球のことをもっと知って下さい、見て下さい、好きになって下さい、と広く訴えるためのもの。語り口はソフトで、老若男女、全てを念頭に置いた文章です。
選ばれているエピソードも、基本的に楽しいもの中心。選手の失敗談も多々ありますが、その選手を笑いものにするためではなく、親しみを持って貰うための紹介ですね。
ユニフォームの裏技とか用具の選び方とか、真面目な話もたくさんありますが、そこにもネタというか落ちというか、を仕込んじゃう辺りはさすが大阪人(笑)。取り敢えずファイターズファンの皆様には、金子誠の“酢漬けのグラブ”エピソードは必読だと申し上げておきます! 選手会長、まさかこんな奴だったとは(汗)。
笑ったりへーえと感心したりしながら読み進んできたら、最後の章は「涙なしでは語れない選手の苦労話」。お金の苦労の話でした。給料の低い新人や二軍選手だけの話ではありません。
野球選手は、ローンが組めない。
これには本当にびっくりしました。僅か数年の電化製品のローンですら駄目なんだそうです。何を買うにも現金払い。車もです。しかし家はよっぽどのベテラン一流選手でない限りキャッシュで買うなど到底不可能、殆どが賃貸住まい。しかも野球の用具は全部自前、バットはどんなに安く見積もっても1本1万円以上……。
ファイターズは東京より物価の安い北海道に移転してきたおかげで、選手達の生活にちょっぴり余裕が出てきたんだそうです(涙)。
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「週刊文春」が出鱈目を書いているのではないとすれば。

長野久義選手は、本当はファイターズに来るつもりだったらしいです。


ドラフト直後のアジア大会の合宿でも、ファンにサインを求められ、『日ハム・長野ってサインしちゃってもいいかなあ』と嬉しそうに言っていたのは、日大の関係者なら知っていること。


おやおや、これはまた……。


銀行の待ち時間に、暇つぶしに開いた「週刊文春」。政界ネタには関心がないので、横浜ベイスターズの那須野投手巨額契約金問題の記事へ。タイトルは「スカウトにキックバック」となっていましたが、槍玉にあげられていたのはむしろスカウトよりも、日本大学野球部鈴木監督のほうでした。見出しも入れて3ページのうち、正味丸々2ページ分を鈴木監督追及に割いてます。他球団の名前を出して謝礼金の額を吊り上げようとしてたとか、色んなことが書いてありますが、その真偽は判らないし、確かめようもありません。

こういう「疑惑」って、「事実であること」の証明も、「事実無根であること」の証明も、どっちもしにくいもんなんだよなあ……結局は灰色のまま「藪の中」?

などと一般論な感想を抱きつつページをめくったら、個人的関心がちらっと動く名前が出てきたんですね。

日大の外野手だった長野くん。去年のドラフトでファイターズが4位指名しましたが、ことわって社会人入りした選手。

と、簡単に言うような経緯じゃなかったのはまだ記憶に新しいところですが一応蒸し返しておさらいしておきますと、彼はジャイアンツ希望、他球団なら社会人と宣言していて、これじゃ事実上ジャイアンツの希望枠がもう1つ増えちゃってるも同然な訳でしたが(汗)、そういう空気を一切読まない我がファイターズがあっさり指名(「強行」とか言われたなー)。すると本人をさしおいて鈴木監督が大激怒、ファイターズは長野の一番嫌いな球団だとか(後に監督の口から出任せと判明)、事前に接触もなかったとか(後に監督の勘違いと判明)、まあ色んなことを言われまくりまして。

で、ひとりのファイターズファンである私は、最初のうちは「まあそう言わずに、前向きに考えてみてよー」なんて思いながらニュースを観ていたんですけれども。プロに行きたいのかジャイアンツに入りたいのかと問われた長野くん、ジャイアンツですと答えたなんていう話も伝わってきたりして、「来てくれなくていい!」に変貌(苦笑)。

その後ファイターズ外野陣ではリストラの星(笑)坪井が好調だったりなどしていて、長野くんのことは忘れていたのですが。

ライオンズに始まった「お金」の問題がベイスターズにも引火して、更に日大鈴木監督の名前が出てきて……そして。


実は長野は、プロに行ければ日ハムでもどこでもいいというのが本音でした。


冒頭に引いた言葉と合わせて、日大関係者の証言だそうです。繰り返しますが、どこまで本当なのかは判りませんし、本当だったとしても今更それでどうなるというものでもありません。

ただ、あの時ファイターズに向かって投げつけられた、「強行」「強奪」という言葉。

ファイターズが強引なことをしなければ彼はすぐにプロ入りできていたのに、という非難。

でも。

「強行」したのは、本当は誰だったんでしょう。そして、何のために? 彼に遠回りを強いたのは、本当にファイターズだったんでしょうか。

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京極 夏彦
前巷説百物語

新刊広告を見た覚えがないんですが、最寄の書店を覗いたらどーんと平積みになっておりました。おおっと珍しく仕事が速い!
「巷説百物語」シリーズ、多分これがファイナルでしょうね。(追記:どうやらまだ続くみたい。やった!)タイトル通り、後日談ならぬ前日談。シリーズ始まって以来初めて、小股潜りの又市が正真正銘主役を張ります。
このシリーズ、今まで又市は中心人物ではあっても主人公とはいえない立ち位置でした。彼の主観で物事が語られることは決してない。初登場作品である『嗤う伊右衛門』では、彼の目線の章もあったし、身の上もある程度語られていたし、動揺したり叫んだりと普通の人間らしい(笑)姿も見せていましたが、このシリーズではもうひたすらクール。経歴不明、年齢不詳、容貌風采も詳述はされないままです。世に不思議なし、が大前提としてある作品ですが、又市のたたずまいには常に不思議がつきまとっていました。
が、本書での彼はちょっと違う。何しろまだほんの若造です。作中で明言はされてませんが、どうやら二十歳そこそこくらいらしい。稼業は双六売り。人別帳に載ってない無宿人、小悪党ではあるものの、裏の世界の住人ではない。まだ。
月代も剃らない不精者だけれどちゃんと髷を結っていて、着物は結構派手らしい。割と血の気が多くて、何かというと「青臭い」と周りから言われてます。白装束に身を固めたクールな御行のイメージはまだ全然ありません。
そんな彼がひょんなことから手伝うことになった「損料屋」の仕事。のちに彼が始めることになるからくり仕事の原形ですね。かなり突飛な形ではありますが、青年が仕事の中で成長していく物語、としても読めます。若き又市、熱血で、一生懸命で、未熟で、可愛いんですよ(笑)。
シリーズ物の楽しさはお馴染みのキャラクターが登場すること。今回は時間がさかのぼっているという設定上あまり期待していませんでしたが、途中から先行作品につながる話になってきて、重要人物の若き日の姿に出会えます。で、ストーリー上全然関係ないんだけどついでみたいにちらっと顔を出してるのが若き日の百介さん。いかにも、らしい(笑)。
京極作品を読むと、いつも、作者の「真っ当さ」「ぶれなさ」に感心させられます。ミステリや時代小説というものは、作中で犯罪や殺人や悪党を扱うものですが、だからこそ、その書き手が「殺すな」という姿勢を断固として持っているかどうかが大事だという気がします。「被害者感情に寄り添う」という名目で、復讐という名の殺人を正当化、いやそれどころか賞賛してしまってさえいる作品もしばしばありますが、少なくとも私には、そういう作品が上質のものだとは思えない。
京極夏彦という作家は、実に明快に、「殺すな」「死ぬな」という姿勢を貫き続けています。それは、作品に「安易な感動」が入り込む余地を与えないということでもあるんですよね。


 どんな時だってな、死んで良いなんて話ァねェんだよ。狡かろうが悪かろうが、汚かろうが惨めたらしかろうがよ、辛かろうが悲しかろうが、人は生きててこそじゃねェのかい。違うかよ。

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山前 譲
文豪の探偵小説

この前話題にした『文豪の探偵小説』の中の1篇、「途上」はこんな話です。
愛妻がありながら、先方の実家に反対されているので未だ内縁関係のままという男。会社帰りの路上で、私立探偵に呼び止められます。結婚問題であなたの身元調査を依頼されたのですと言われて、実家が折れてくれたと思ったか、喜んで応じるのですが──話の主眼は、彼の先妻の死についてでした。
インフルエンザから肺炎になり、治ったと思ったらチブスにかかって他界。その間にも、病室でガス漏れがあったり、乗ったバスが事故にあって怪我をしたり……それらの事実をおさらいした探偵は、こんな話を始めます。
妻を殺そうと決意したある男。しかし直接手を下しはしない。病気が流行れば、病人の見舞いに行かせたり菌のいそうなものを食べさせたりして、伝染するように仕向ける。車に乗る時は、事故にあった場合危険の大きい前の席に坐らせる。心臓が弱いのに冷水浴をさせ、煙草を吸わせる。飲み水の良くない土地へ転居する。そしてとうとう、妻はチブスにかかって──どうですか、これはあなたの場合に、外形だけはそっくり当てはまりはしませんかね?


「ええ、──そ、そりゃ外形だけは──」
「あはははは、そうです、今までのところでは外形だけはです。あなたは先の奥さんを愛していらしった。ともかく外形だけは愛していらしった。しかしそれと同時に、あなたはもう二、三年も前から先の奥様には内証で今の奥様を愛していらしった。外形以上に愛していらしった。すると、今までの事実にこの事実が加わって来ると、先の場合があなたに当てはまる程度は単に外形だけではなくなってきますな。──」


会社から家への帰り道の筈が、いつの間にか、話しながら歩くうちに辿り着いていたのは探偵の事務所。そこには、先妻の父が彼を待ち受けています……。
下手くそな紹介でどこまで伝え得たか心もとないですが、何とも見事な切れ味です。
これはプロバビリティーの犯罪、というものですね。『文豪の探偵小説』の解説に、江戸川乱歩の賛辞が紹介してあります。北村薫さんは『謎物語あるいは物語の謎』の中で、「あわよくば型殺人」とも言っていますが、このほうが判り易いかな。
ところが北村さんがこの自著の中で紹介しているのですが、有吉玉青さんは、この短編をこんな風に読んだらしい。


 ある事件を巡って、探偵とある男が話をしていくんです。男の妻が死んだ事件なのですが、探偵に誘導尋問をされて、男は自分の心の中で妻の死を願っていたことを知ってしまうの。


うわあ……こう言うと、死や罪を扱ってはいてもミステリではなく、普通小説の範疇ですね。こういう小説を実際に読んだら、有吉さんの言うように怖く、そしてまた非常に面白いだろうなと思いますが、でも「途上」に描かれているのは、紛れもなく意図的な殺人です。
有吉さんは多分、普段ミステリを読まない人なんでしょうね。或いは、「谷崎潤一郎」という名前が先入観になったというのもあるかなあ。

北村 薫
謎物語―あるいは物語の謎
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北海道日本ハムファイターズオフィシャルガイドブック 2007 (2007)
ファイターズ、ただいま絶不調な訳ですが。
ファンブログをざざっと回ってみた印象なんですけれども、こういう時、女性ファンのほうが落ち込みを回避し易いみたいですね。
今がどん底なんだから、ファンがじたばたしてみたって始まらない。言ってもしょうがないことはわざわざ言わない。取り敢えずどうやって平常心を保つかというと。
選手(だけ)を見る、という手がある訳です。
「ダルビッシュ格好いい!」「稲葉セクシー!」とうっとりするもよし、「洋平しっかり!」「アッシュがんばれ!」と期待の若手にエールを送るもよし。賢介が復調してきたねとか、選手会長が打撃好調でまるで別人みたい(笑)とか……とにかく個人に限定してピンポイントで見る、勝敗は棚上げ。
こうやって「明日も試合を観る理由」を設定できているという訳なのですが。
生真面目に熱く試合を注視し野球を語っている男性ファンに、これをおすすめする訳にもねえ(苦笑)。
しきりと思い出されるのが、キャンプ中に金子選手会長がテレビ番組で言っていたことです。
「打順が固まるまで、4月5月は辛抱」
「移転4年目で、今は定着するための過渡期の時期だと思う」
うん、そうなんだな、きっと。
短期的にも、長期的にも、今は産みの苦しみの時期。
ファイターズはファイターズ。ホークスでもジャイアンツでもないんだから、誰も「優勝は義務だ」なんて言いません。確かに去年のチャンピオンチームだけど、それを考えたら情けない!と思うかもしれないけれど、でも、焦るな、とらわれるな、落ち込むな。チームも、そしてファンも。
コンサドーレ札幌を10年間応援してきて、今年は何だか今のところ出足快調ですが、通してみればいい時よりも悪い時のほうが圧倒的に長い日々でした。毎年毎年毎年「またか」と思いながらそれでもやっぱりスタジアムに足を運び続ける中、自分の中で固まったことがひとつ。
望んでいるのは、結局のところ、昇格や優勝じゃなくて。いや勿論、それは最終的な目標ではあるんだけれど。
目先の1試合に勝つこと。たとえ結果的に負けたとしても、試合終了のその瞬間まで、応援する気持ちが途切れないような一生懸命な姿を見せてくれること。
ただそれだけが望みです。春から冬まで、シーズンを通してずっと。その時の順位がどうあろうとも。
で、これはファイターズに関しても、同じなんですね。
こんな調子じゃ優勝は無理だとか、勝率5割復帰はいつになるとか、そんなことはどうだっていい。
次の試合に、勝てるように。札幌ドームで、皆がいいところ見せられるように。
それから、もうひとつ。
オフィシャルガイドブックの「今季の目標」のところを見てみました。去年のレギュラー陣は「連覇」とか「V2」とか肩肘張ったことを言ってる人が多いんですが(苦笑)、新人や若手組は、ほぼ全員が「一軍」。まずそれこそが切実な目標。
開幕して1箇月近く、既に何人か、その目標を掴みかけている選手がいます。今はまだ三振したり、落球したり……でも、半年後にはどうだろう。来年の開幕時にはどうなってるだろう。
来年のガイドブックには、この中の何人かが、今より大きな写真で載ってるかもしれない。
明日、勝つこと。それから、1年後に若手が成長していること。それが望みの全てです。今シーズン終了時の成績? そんなの、今はどうでもいいよ。
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山前 譲
文豪の探偵小説
前にも確か書いたことがありますが、ミステリ好きの悪癖で、何でもかんでもミステリを見る目で読んでしまうことがあります。また太宰治とか幸田文とかね、ミステリとしても読めちゃう短編や掌編がいくつもあるんですよー(久世番子のマンガ『番線』を読んでたら、教科書に載ってる児童文学の古典も、オタクの目で今読んだら萌え要素満点だとかいう話をしてました……同類だな/笑)。
で、これもそういうアンソロジーなのかと思ったのです。顔ぶれは谷崎潤一郎、川端康成、芥川龍之介……昔の文豪達の、「罪や悪を扱っているので、ミステリとして読もうと思えば思える作品」を集めた、いわば牽強付会(笑)に近いものなのかと。
ところが実際に読んでみたら、そんな「無理やり感」のあるものでは全然ありませんでした。まず最初が谷崎の「途上」、これはもうはっきりミステリです。実に見事な「プロバビリティーの犯罪」。もっとも作者自身は「探偵小説臭くもあり、論理的遊戯分子もあるが、それはあの作品の仮面であって」なんて言っていて、夫に命を狙われていることを自分では全く気付いていない妻の運命を描きたかったということなんですが、しかし現代では探偵小説、もといミステリの定義も広くなってますからね。この作者もともとの意図もまた、充分にミステリの範疇に含まれます。
佐藤春夫「オカアサン」、これは殺人も何も起きませんが、ハリイ・ケメルマン『九マイルは遠過ぎる』を思わせるような純粋論理・推理の世界です。本格原理主義「日常の謎」派。
三島由紀夫「復讐」は、心理ホラーの世界ですね。
太宰治「犯人」は、これは前に太宰の短編集で読んでいました。柄に合わない犯罪をしでかしてしまった青年の、哀れきわまる自滅の話。巧い!としか言いようがありません。
……ただ、川端康成「死体紹介人」は……ええと、猟奇耽美趣味というか、もっとはっきりグロというか(汗)なんですが、これは、「ミステリ」という感じはしませんね。どこからどう見ても「文学」です。ということはどういうことかというと……作中に死体が出てくるのは単にそういう設定だからじゃなくて、作者自身がほんとに死体趣味があったんじゃないのかひょっとして、という気がしてきてしまうということであります……(冷汗)。
うちの母親がこれを読んで、「そういえば昔から何か川端は好きになれなかったんだけど」と言ってました。この中編の不気味さに通じるものが他の作品にもあった気がする、というんですね。私がまともに読んだのは『掌の小説』だけなんでそこら辺はよく判らないんですけれども、でもそう言われてみれば、確かにあの掌編集も何かちょっと怖い感じの話が多かったかも。
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牧 秀彦, 高橋 良輔
幕末機関説 いろはにほへと
幕末ファンブログのあちこちで、話題になっていたアニメ「幕末機関説いろはにほへと」。タイトル通り時代設定は幕末の、荒唐無稽痛快伝奇アクションらしい。実在の人物も色々出てくるらしい……うわー、おっもしろそう!とは思ったものの。
インターネットTVで配信の作品。視聴できる環境にないもので(え、インターネットやってるじゃない、とは言い給うな。我が家のネット環境の原始的なことといったら)、皆様の盛り上がりぶりを指をくわえて眺めているだけだったのでした。
そこへノベライゼーション発売の広告。え、光文社時代小説文庫!? これはまたえらく本格的なところから出るじゃありませんか。
という訳で早速手にとってみましたよ。「新たなる視点で完全小説化」ということは、たぶん、アニメのストーリー展開をただ単にそのまま文字に直した訳ではない、ということなんでしょうね。
慶応3年。世に戦火と災厄をもたらす怨念の集合体「覇者の首」が、封印を破って世にあらわれた。「首」に立ち向かう「永遠の刺客」として育てられた青年・秋月燿次郎は、「首」を追って動乱の京都へ──このオープニングにしびれました! うわー、まるで『産霊山秘録』みたい、おおっと坂本龍馬だー新選組だー勝海舟だー! これは面白そうだぞ、と勢い込んで読み進んでいったのですが。
本筋に突入してからは、予想したのとはちょっと違ってましたね(苦笑)。
いや、面白くなかったというのじゃないんです。ただやっぱり、全26回のストーリーを、厚めとはいえ文庫本1冊に押し込むのは少々無理があったような……著者は独立した小説として読んで貰いたいようですが、アニメ観てない読者にはちょっときついですよ。坂本龍馬と土方歳三が親しげにしていたいきさつも結局判らずじまいだし、茨木蒼鉄の「五百年の血の宿命」というのも全然判らないし、終盤思いっきり駆け足になっちゃって、見せ場になりそうなところがいくつも、ただ説明されるだけで終わっちゃってるし。
長さがせめてこの2倍あれば、そして……文章担当が夢枕獏だったらどんなによかったか(小声)。
DVDが出るようなので、やっぱりアニメを観たほうがいいかなあ。
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プロ野球 ai (アイ) 2007年 05月号 [雑誌]
2試合連続完封負けを食らったりなどして最下位に沈んでいた我がファイターズでありますが。
昨日、一体いつ以来だという感じの6得点でダルビッシュ有が2勝目を挙げました。5安打1失点1四球9奪三振で完投勝ちしておきながら「調子が悪かった」とか言われた日には、しかも調子は悪いけど「点を取られる気はしなかった」などとのたまわれては、敵に回したらこれほど小憎らしいピッチャーもそうはいないのではなかろうかと思います(苦笑)。
で、前日までおよそパッとしない試合運びが延々続いていたことなど無視するかのように、「この調子でいけば、去年みたいに優勝できる」と彼は平然として言い切った訳ですが。
ただの連敗ストップではなく、何かチームにとりついていたものを彼がおはらいでもしてくれたかのような、そんな1勝でありひとことであったような気がします。本日の試合結果は何と18-3! ありえねーっ、というぐらいにまあ全員がよく打ちまくってくれました(ノーヒットの坪井にも打点はついたし)。
連勝&最下位脱出したので、これで安心して呑気な話題に入れます(笑)。
アイドル系プロ野球選手雑誌「プロ野球ai」巻末の、「いま、光っているヒーローたち」。読者の人気投票ですね。前回はファイターズから7人ランクインしてましたが、果たして今回はどうだったか。きっと減ってるんじゃないかなと思いながら見てみたのですが。
何とランク外に落ちてたのは鶴岡選手ひとりだけでした。ダルビッシュ・稲葉・森本・田中賢・金子誠・八木、6人引き続いてランクインです。
しかも今回びっくりさせられたのが、稲葉篤紀34歳前回16位から8位に大幅アップしていたことでした……同じページに載ってる他の上位ランク者は、ダル君20歳とかライオンズ片岡23歳とかな訳ですよ。そこにひとりだけ34歳! うわあ……「エロ爽やか」おそるべし。
しかもそれだけじゃなかったんですね。「2007年期待の選手」というアンケートがもうひとつあったんです。いつもの人気投票とそれほど極端に違った結果にはなってないんですが、「期待する選手は」という訊き方をすると、やはりルーキーに票が多く集まる訳です。イーグルス田中マー君、スワロー増渕、マリーンズ大嶺なんていう辺りが上位15人の中に入ってました。
という若者揃いの中に。またしてもいました稲葉さん、スワローズの川島25歳と10位タイで!
一体どんな層の票を集めてるのかと思ったら、さすがに「51歳」とか「43歳」とか他の選手よりファン年齢ちょい高めでしたが(笑)、「昨年よりパワーアップしたエロさわやかを見たいです」と書いてたのは何と中学生15歳!
そりゃあ稲葉さんは確かに魅力的です。「爽やか」「朗らか」「いい人」が「色気」と両立してるという稀有ないい男。
でも15歳では……悪いこと言わないから若いうちはダル君辺りにしといたほうが、絶対今後の人生のためだと(爆)。
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アガサ・クリスティー, 恩地 三保子
満潮に乗って
この前Yuseumさん から情報を頂きました。アガサ・クリスティーのポアロもの、ゴールデンウィークにドラマ放送です。
おお、デビッド・スーシェ演ずるポアロにまたお目にかかれるとは! 卵形の頭のお洒落な小男、猫のように光る眼と気取った口髭、まさに小説から抜け出してきたかのようなポアロです。楽しみー♪
と、盛り上がったところで、はたと疑問が生じまして。で、これってどんな話だったっけ?
クリスティー作品であるからには確実に読んでいるのですが(それも間違いなく複数回)……タイトルを聞いても何のイメージも浮かばなかったため、本を引っ張り出してきました。冒頭を開いてみましたが……やっぱり何も思い出せず。
ここで、思い出せないならいっそのことそのままドラマを観たほうが、スリルとサスペンスを楽しめていいんじゃないかという考え方もある訳ですが。古典ミステリのドラマ化については、あくまでも、「知ってる話がどう料理されているかを楽しむ」というのを基本姿勢としたいため、再読することと致しましたです。……全部読んだら、さすがに思い出せました(苦笑)。
時は第2次世界大戦直後。とある裕福な男が空襲で亡くなり、残されたのは結婚したばかりの若く美しい未亡人と──そして、彼の財力を当てにして暮らしていた大勢の親族たち。といっても働かずにぶら下がってた訳では決してないんですが、「困った時にはおじさんが何とかしてくれる」「いつかは遺産が貰える」と思い込んで、戦時下でも皆何となく緊張感を欠いていたのは否めないところ。それが一転、遺産は全て新婚の未亡人のもの。親族たちにとってはまだとても「身内」とは思えない彼女です。しかも彼女の兄は何だか感じのよくない男だし……。
そこへ突然、持ち上がった「疑惑」。実は彼女は再婚でした。前夫は外国で病死したとされていますが、彼はカトリックであるために離婚をよしとせず、死んだことにして妻のもとを去ろうかなどと言っていたという……もしも彼がその通りにしたのなら、そしてまだ生きているのなら、2度目の結婚は無効になり、ひいては遺産相続も無効になる……!
という思いっきりベタというか下世話というか陳腐というかメロドラマというか、な設定であるにもかかわらず、「人間、この愚かしく滑稽なもの」が容赦なく描かれているにもかかわらず、そして現代のピーター・ラヴゼイとかだったらこういう設定でも絶対に盛り込む「ここは笑うところ」は殆どないにもかかわらず、読んでいてヤな気持ちになることがないのがクリスティーはいいですねえ。彼女の描く人間たちは愚かしくて滑稽で、でも作者がそれを嗤ってはいないのがいいんだなあ。
さて、この「美貌の若妻によって引き起こされる軋轢」という設定、クリスティー作品では割とよくあります。しかもこの表面の設定だけじゃなくて、「○○が実は××」という裏の仕掛けまでも含めてパターン化してるといってもいい、ということに今回初めて気がつきました。だからもしも、読んでる途中で「あ、この話って『○○○○』に似てるかも」と発見できたら、その時点で仕掛けが全部読めてしまう可能性もあり……なんですけれども、やっぱり難しいかなあ?
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