前回の続きです。


ちなみに労働者や自営業者等からは遙かに恵まれている大手企業の役員を見ても楽観できる環境ではないようです。

韓国10グループ(上場企業96社)の役員のうち、

14年末から年初にかけての定期人事異動で退職した271人を調査した結果、

退職した役員の平均年齢は54.5歳で役員在任期間は5.2年であるようです。

雇用労働部によると会社員の退職時の年齢は平均53歳のようです。

日本も年々短くなっていますが

年金制度が整っていない韓国人にとりこの年での退職はかなり厳しいようです。


大手ですらこれですから中堅中小は創業社長以外は

もっと早期退職を余儀なくされていることは想像がつきます。

そういった若年退職者が結果として自営業を始め多くが失敗し財産を失っている構図が伺えます。


特に韓国で労働条件が劣悪なのはかなりの数に及ぶ自営業者です。

最近景気低迷の為、韓国労働市場で自営業者の占める割合が過去最低水準となったようです。

しかし韓国は日本以上に中小企業が多い国家で企業体の99%、雇用規模では88%(最近の調査では76%)が中小企業です。更に自営業者のシェアは中小企業体が主流の日本やドイツ以上です。

統計庁等によれば労働者全体に自営業者シェアは14年で22.1%です。

14年の自営業者数は565万2千人で賃金労働者数が1874万人。

自営業者割合は97年のアジア通貨危機で失業した人たちが店を出す等して上昇傾向ですが08年の世界金融危機以降景気低迷のあおりで下落してます。


13年の自営業者は、業種別では卸小売、飲食、宿泊業、年齢別では50代、学歴別では大卒以上がそれぞれ全体の30%程度を占めてます。

自営業者の平均年間所得は12年に3472万ウォン(約377万円)と集計。

労働者全体の平均所得2897万ウォンよりは高いですが賃金労働者の平均所得3563万ウォンよりは低い水準です。


男女別の所得水準は男性が4000万ウォンで、女性2300万ウォンの約1.7倍です。

年齢別では40代が4200万ウォンで最多、60代の2000万ウォンの2倍以上です。

30歳未満は1800万ウォンで、全体平均2900万ウォン以下です。

自営業者の廃業率は10年から増加しており12年には14.3%でした。


廃業率が高く所得もかなり低い。

ますます劣悪な環境になる中で565万世帯が就業(人口の3割以上)していることは深刻な社会問題化しているといえます。


労働分配率が低く影響として熟練の職人が育たず、労働生産性の低迷を招いていることが伺えます。

更に早期退職により中産層が育つどころか生活維持のための創業で悉く失敗し貧困層に転落していることも理解できました。


加工貿易国家は輸入依存度が高く国家の安定維持のためには内需拡大が必須であり、

分厚い中産層の育成が不可欠です。

日本も高度成長期前までは財閥系大手育成を進め高度成長期に中産階級を育成に注力しました。

韓国も漢江の奇跡と呼ばれる高度成長で財閥系を育成し

ソウルオリンピックから中産階級育成を開始しましたが外資中心の企業投資形態と財閥系の経営陣の強力な政治への圧力に屈し労働者配分を強化させる労働規制も累進課税強化による富の再配分の強化も進めるタイミングを逸しました。

暴走した財閥企業により通貨危機を発生させ多くの労働者が解雇され中産階級は壊滅しました。

そして今また経済危機を迎えつつありますが今度は中産階級の負債拡大と高齢化で以前より壊滅リスクが深く重くなっています。

高齢者の生活維持にも輸入が不可欠であるため安定した内需市場と担い手である中産層が中核にいなければ国家衰退が避けれません。


現在も格差が拡大しつつありごく一部にしか富が配分されないこの構造は韓国は安定経済基盤構築に結局失敗したことを示していると考えます。