負傷兵として本国に送還され、一ヵ月の疾病休暇を与えられたわたし:ヘイスティングズは、何年かぶりでジョン・カヴェンディッシュに出会い、旧知のよしみで彼が継母:エミリー・イングルソープと住むスタイルズ荘で過ごすことになった。今はスタイルズ荘の女主人となったエミリーは、もう七十はこえているはずだが、二十歳以上も年下の男:アルフレッドと再婚していた。彼はエミリーの雑用係兼話し相手兼友人のエヴリン・ハワードのまたいとこと称していたが、彼女とは犬猿の仲のようだった。わたしが到着してまもなく、「あの悪魔に気をつけて!」という言葉を残しミス・ハワードはスタイルズ荘を出て行った。その後、エミリーは毒殺され、わたしは偶然再会したベルギーから亡命してきていた元刑事の友人:エルキュール・ポアロに、その殺人事件の調査を依頼した。
灰色の脳細胞を持つエルキュール・ポワロが初登場したこの作品が、デビュー作だったとは知りませんでした。
スタイルズ荘には、お金が欲しそうな人たちが、わんさか同居しています。
でもって、ちょっとずつ、みんなアヤシく見えます。
まず、エミリーの再婚相手であるアルフレッド・イングルソープ。
エミリーより二十歳も年下で、彼女が亡くなれば、当然その遺産は夫であるアルフレッドに。
そして、義理の息子:ジョン・カヴェンディッシュは、お金に困っているようで、それ以前に父の遺産の分配に不満を持っています。
その妻:メアリとの仲は、あまりよろしくないようだし、ご近所に住む美人:ミセス・レイクスに惹かれてる?
また、ジョンの弟:ローレンス・カヴェンディッシュは、文学好きが高じて凝った装丁の詩集の出版で、有り金残らず使い果たしているようです。
エミリーの旧友の娘:シンシア・マードックは薬剤師で調剤室で働いています。
毒の調達が可能ですね。
同居はしてないけど、村に静養にきているロンドンの専門医:バウアスタイン博士は毒物学の世界的権威で、メアリと仲良しなのも気にかかるでしょ。
そんな彼らに交じったヘイスティングズは、たびたび怪しげな行動を目にしたり、噂を耳にしたり。
彼、ホームズで例えるとワトソン役なんだけど、イマイチ有能とはいいがたく……。
どっちかというとポンコツ?
まぁ、この役どころは定石なんでしょうが、やはりデビュー作、若いというか、まだ手馴れてないというか、うーん、もうちょっと驚かせてほしかったかなぁ。
とは言え、ポアロの解説後、ちょこっと再読してみたのですが、冒頭から伏線がこれでもかというほど、びっしり張られていて、やはり栴檀は双葉より芳しでした。
個人的には、各人が登場するたびに、敬称がつくフルネームだったり、愛称だったりと統一されてないのが、すごく読みにくかったです。
名前覚えるの苦手やねん。
真犯人については、まったく思いつかなくて、ふう~んて感じでした。
しかし、ロマンス部分の結末が、一人を除いてハッピイエンドなのがほほえましかったです。
ヘイスティングズ、こちらもポンコツやん。
一組の男女の幸福ほど大切なものはこの世にはありません