「国立演芸場」で開催された「一天四海・・・龍志・扇遊・鯉昇・正蔵四人会 新涼の刻」に

    伺いました。

   (「新涼」 とは 「秋の初めの涼しさ・・・初秋の涼気」 の事だそうですが 今日は 非常に強い

   「台風21号」 が 「徳島県南部」 に上陸し、更に 「兵庫県神戸市付近」 に再上陸して「近畿

    地方」 を中心に 日本各地に風雨の災害を齎した日なんですね)

 

    ま、そう云う日なのですが・・・・・先ずは 「前座・柳家寿伴」 が 「開口一番」 を務めます。

 

   『道灌』

   「ご隠居」 と申しますのは 「横丁の」 とか 「裏の」 とかが付きまして、高層マンション13階

    にお住いの」 とかはございませんなぁ~。

    その 「ご隠居」 の処に 「八五郎」 が訪ねて参りますと、「噺」 の幕が開く訳でございまして、

   「ああ、なんだい 『八っつあん』 かい。 まあ、お上がりよ。 粗茶だが飲んで行きなさい」

   「そうですかい、じゃあ 『粗座布団』 に座って 『粗茶』 を戴く事に・・・・・」

   「お前が 『粗茶』 って云う事はないだろ。 『茶菓子』 は食べるかい?」

   「『粗茶菓子』 ですか・・・じゃあ、『天丼』 を三つほど戴いて」

   「何を言っているんだ、『天丼』 は 茶菓子にはならんな。 『羊羹』 は 如何かな?」

   「『羊羹?』、『羊羹』 は 十一本も喰うと うんざりで・・・・ご隠居! んん、そこにある屏風は

    なんですか」

   「ああ これか 『貼り混ぜの屏風』 と云ってな、私の 『道楽』 だな」

   「その、椎茸の親方みてぇな 帽子被って虎の皮の股引履いて突っ立って 側に女が黄色い

   もん持ってお辞儀をして・・・あれは、誰ですかい?」

   「椎茸の親方ぁ~?! それは 『太田道灌』 じゃな、『山吹の里』 の伝説を 描いておるな。

    狩りの帰りに山中で 『村雨』 に遭って、あばら家に雨具を借りに来た処だな。 椎茸帽子

   ではない 『騎射笠』、虎皮の股引に見えるのは 『行縢(むかばき)』 と云う狩りの仕度だ」

   「へぇ~、その 『道灌さん』 ってえのは偉いんで?」

   「そうじゃな 昔の武将で、江戸に城を築いた方で・・・『歌道』 にも長けていたそうじゃよ」

   「えっ、江戸に城を? 江戸城は 『徳川さん』 じゃないんですか、あ 『道灌さん』 が築いた

    城を 『徳川さん』 が直したのね」

   「その あばら家から出てきた若い女が お恥ずかしゅうございますと 『山吹の枝』 を 盆に

   乗せて差し出して 頭を下げて家の中に 引っ込んでしまったんだな。 『道灌』 は、意味が

   解らずに 戸惑っていると、家来の一人が 畏れながらと進み出てまして 『これは <七重

   八重 花は咲けども 山吹の 実の一つだに無きぞ悲しき> と云う古歌になぞらえまして、

   <実の> と <蓑(みの)> とを 掛けて、雨具が無いと云う断りでございましょう』 と 教え

   たんだそうだよ。 『道灌』 はなぁ、『ああ、余は まだ歌道に暗い』 と嘆いて、以来 『和歌』

   に励んで 立派な 『歌人』 として知られるようになったんだ」

   「ナナエヤエ~、ナナエヤエ~ んん 良いなぁ。 ご隠居、家にね よく傘を借りに来る奴が

    居るんですよ。 そいつに、その和歌で断って遣ろうと思うんでね その和歌を書いちゃあ

   呉れま せんか・・・あの~ 仮名でお願いしますよ」

   

   「八五郎」 が帰宅し 程無くしますと 雨が降り出しまして、例の男が飛び込んで参りました。

    しめた! とばかりに 「傘だろ、傘借りに来たんだろ?」

   「いや 傘は在るんだい、提灯 貸してくんねぇか。 これから本所まで用足しなんだが、暗く

    なるとイケねぇから提灯貸して・・・・・」

   『雨具』 でなくては 『ナナエヤエ~』 が出来ませんから、困った 「八五郎」 は 「あのさぁ~、

   『雨具』 を貸してくれって言っておくれよ、言やぁ、『提灯』 を貸して遣らぁ」

    遣って来た男は 「八五郎」 の言う通りにしないと 「提灯」 が借りられないので 「(しょうが

    ねぇなぁ~)んじゃ 傘を貸しちゃ呉んねぇか?」

   「八五郎」 が少女を演じまして 「(へっ 来やがったな 『道灌』) お恥ずかしゅうございます

   (ご隠居が書いた紙を差し出しまして) これをお読みくださいませ」

   「なんだい、今度は紙を読めだとぉ~ なに? ナナヘヤヘ ハナハサケドモ ヤマブシノ

    ミソヒトダルト ナベトカマシキ (七重八重 花は咲けども 山伏の 味噌一樽と 鍋と釜敷)

    こりゃあ 短けぇ 都々逸かい?」

   「都々逸だぁ~?、てめえは 歌道に暗いな」

   「角(カド) が暗れぇから 『提灯』 借りに来た」