「国立演芸場」 で開催されました 「入船亭扇遊独演会・神無月の独り看板」 に

   伺いました。

 

   「開口一番 柳家寿伴 『出来心』」 

   (最近の 「開口一番」 で、この 『出来心』 を聞く事が多いような気がしますなぁ)

   ドジで間抜けな泥棒、泥棒にでもなろうかと思い立って盗人稼業を始めた 「でも

   どろ」 って云う奴です。
   「どうだ、真面目に泥棒に励んでいるかい? 何を遣っても上手く行かねぇんじゃ

   ねえか? そろそろ足を洗うかい」

   「親分、心を入れ替えて盗人稼業に励みますから! あ、そうだ こないだ 『土蔵

   破り』 を遣りやしてね」

   「そうかい、そうかい。 で、如何したい?」

   「いや、それが大笑い! 土蔵に、人独り通れる穴を開けましてね」

   「随分大きな穴だね、目立つじゃねえか。 穴なんて 潜れる程度で良いんだよ」

   「土蔵の中に入りやしたら 草が生えてましてね、大きな石小さな石が並んで、月

   まで見えて・・・・・」

   「なんだい? 草が、石が、月がってぇのは?」

   「いえね、土蔵だと思ったら 寺の練塀で墓場に入っちまって・・・あはは、大笑い」

   「馬鹿野郎! 土蔵と墓場の区別もつかねえのか!」

   「それで今度は 大きな庭の在る家を狙いやしてね、ブランコは在るし池には鶴の

   噴水も在りましてね・・・それがまた大笑い! 気が付いたら 『日比谷公園』 でね」

   「見込みが無ぇから廃業するかい、まあ お前に 『土蔵破り』 は 未だ未だ無理だ、

   『空き巣』 を遣ってみちゃあ如何だい。 空き家を狙って 盗みに入るんだよ、まあ

   試しに遣ってみろい。 目星をつけた家で人が居るか居ないか声を掛けて確かめ

   るんだよ。 人が居たら慌てずにな 『この辺りは 何丁目何番地でございますか? 

   何の何兵衛さんをご存んじですか』 なんぞ言やあ怪しまれずに済むから。 まあ、

   盗んだ後に捕まっちまっても、盗んだ物を返して 『ほんの 出来心でございまして、

   家には八十になります年老いた母と七つを頭に四人の子供が腹を空かせ待って

   おりまして、ついつい 出来心でございます』 なんぞ言やあ、許してくれて小遣い

   でも呉れようと云う寸法だ」

   「捕まって 小遣い貰えるなら、その方が良いんじゃねえか・・・それじゃ親分 早速

   仕事に出かけますんで 大きな風呂敷を貸してください 」
   「風呂敷? そんなもの 如何するんだい」
   「へえ、盗んだ物を包んで・・・・・」 
   「馬鹿野郎! 盗みに入るんだ、その家の風呂敷 使やぁ良いじゃねえか!」
   「でも、返しに行くのが 面倒臭いから」
   「返さなくて良いんだよ、なに義理が立たねえ? 何を言ってやがんだ 早く行って

   来い!」
   「じゃあ 親分。 空き巣に行ってきます!」
   「馬鹿! 大声を出すんじゃねぇ」

 

   「少々物を お尋ねします・・・・・」
   「おい、隣で遣るんじゃない! 町内から出て遣れ!」

   「ああ、親分の家の隣は 拙いよな」

   「御免下さい! お留守ですか? 空き巣に入られますよ、憚りに隠れてなんて

   嫌ですよ・・・・・入りますよ」

   「おう、何だい?」

   「あああ、居た! あのう この辺りは何丁目何番地で、何の何兵衛さんのお宅

   は何処?・・・あわわ」

   「何だと! 何を言っているんだ、何兵衛だって? 怪しい奴だな」  

   「いえ、怪しくないんで・・・そうだ、『最後兵衛(屁ぇ)』 って云う方の家を訪ねて」

   「『最後兵衛(屁ぇ)』 だって? 何だい、早く言えよ・・・俺だ!」

   「ええっ、そんな名前の人が本当に居るんですかい!」

   「怪しいな、お前 『空き巣狙い』 じゃねえか?」

   「いやいや 出来心でございます。 七つの年老いた母と 八十を頭に四人の子供

   が家に居りまして・・・・・さいなら!」

   「いや、危ない処だった! あっ買ったばかりの下駄を忘れてきた!」

 

   (「開口一番」 なので短く纏め 「柳家寿伴」 が高座を下りますと 「待ってました!」

   の声が掛かる中、「入船亭扇遊師匠」 が登場いたします)

 

 

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