神話のはじまり

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寝ても醒めても ~ Nuit et Jour ~-santrini.jpg











よほどかわいいと思っていただいたの?
それでも昨夜のあまりの激しさに、涙も涸れはて、からだを動かすこともできずに、
キャビンの底で死んだように眠っていたの。

どのくらいたったのかしら。
ラッタルのドアが開いて、日光を塞ぐような影から
「おい、デッキに上っておいで」
と彼の声。

「ええ」
力なく返事して、あわてて身づくろいをして、梯子を上って甲板に出ると、
瞬間にジッと灼かれるような、目もくらむばかりの眩しい光が過剰にあふれて、
私は思わずよろめいて。

「どうした?」
私をささえながら、かぶさるようにあなたの白い歯が笑っています。
大好きな彼の香りがして、おもわず目を閉じて吸い込んだの。
もう一度あなたを見上げると、あなたの顔のうしろに、
驚くほどの広く碧い空が、いっぱいになっているのに気づいたわ。

「ごめんなさい」
抱えてくださった腕から身をはなしてへたり込むと、
群青の海の色が揺蕩して私を襲って怖いほど。

「ご覧、あれがクレタ島だ!」

あなたが指さす彼方に白い花崗岩に緑を滴らせた島がキラキラ輝いている。
私は、あなたを見上げて、その姿がボーッと霞んでいくのを感じた。
涙が、もう何度も涸れ果てたと思っていた涙が、、、
尽きることなく溢れてきて、
私はまたいつの間にか声を上げて泣きじゃくってしまったの。

「ありがとう、あなた。いつか言ってらしたことが本当になったのね。
もう夢じゃないのね......」
慟哭の声はやむことなく、あなたの朗らかな高笑いが太陽に届けと
天空に吸い込まれていく。

それが神話のはじまりーー

「さあ、船長、今夜も魅惑の夜をこの女の子にくれてやろう!」
「Yes,Sir!」