お付きでしたっ!! | 能役者青木健一のお稽古日記。

能役者青木健一のお稽古日記。

能役者、観世流青木健一(梅若研能会所属)の日々の活動や能に対する想いを記すお稽古日記。

父一郎からの教え、芸大在学時の先生方からの芸談等を更新。

こんばんわ、青木であります。


今朝、話しました観世喜正さんの会の報告をするでありますケロロ軍曹



今日は国立能楽堂に行って参りました。観世喜正さんの「第三回 喜正の会」で上演される能「大原御幸」に万三郎先生がツレ・法皇としてご出演でして、自分がお付き兼楽屋働きで出勤させて頂きました。


普段、お付きと言いますと、先生が仕舞や地頭としてご出演される時が多く、大抵の仕事内容はお召し替えの際に先生の洋服をハンガーにかけたり、仕舞用の袴の準備後かたづけ、着物をたたむ…などです。こう言う時は靴下を足袋に履き替えるだけで、スーツのままで仕事をします。


しかし、今日の先生は能のお役。当然、楽屋内にある装束の間で能装束をお召しになるわけで、今回は自分も紋付き袴を用意してきました。ここで能楽マメ知識!歌舞伎には衣装を着付ける専門の着付師がいるそうですが、能の場合は能役者が能装束を着付けしていきます。ですので、自分もまだ勉強中ですが、着付けをします。



さて、11時過ぎに楽屋入りしまして、先生の能装束を「仕掛け(いつでも能装束を着付けられる様に準備する事)」をしました。万三郎先生の着付けは午後1時の開演とほぼ同じくらいに始まりました。能装束は着付けられる人の前側を担当する人が1人、後ろを担当する人が1人、着付ける人のお手伝いをする人が1人、と3人掛かりで着付けてゆきます。前側は熟練した方が担当しますが、前を九皐会(きゅうこうかい)の長沼さんにお願い致しまして、後ろは自分が担当致しました。


研能会の例会の時などは、着付けの時に分からない事があったらば、すぐに先輩に聞けるのですが、今回は自分ひとりしかいないわけですから、すごく緊張しました。(´;ω;`)でも、何とか装束を付け終わってひと安心…と思っていたら最大の難関が待ってました。それは…


「花帽子」(瀬戸内寂聴さんが被ってる白い布みたいのね)


これって人によって付け方が違うんです。不甲斐ない事に自分は付けられないので、長沼さんの付けるお手伝いをしながら、花帽子の付け方を勉強させて頂きました。




ささ、楽屋の装束の間で僕が装束と格闘している頃、舞台では午後1時から梅若六郎先生の仕舞「景清」、高澤さんの「奈須与市語」、観世喜行先生の舞囃子「船弁慶」が上演されていました。お付きの勉強になる所は、万三郎先生のお仕舞やお地謡の勉強が出来るのはもちろんの事、普段お舞台で共演しない方の舞いや謡を拝聴出来る所です。今日も装束の着付けの途中は装束の間にあるテレビをチラチラと盗み見したり、五色幕の隣の御簾越しに拝見してました。


六郎先生の「景清」、太刀に見立てた扇を右手に持ち、正面をキッと見据えた立ち姿は、それだけで平家物語、屋島の合戦の情景を観客は思い描く事が出来たはずで、自分も勉強させて頂きました。


喜行先生の「船弁慶」は長刀さばきにただただ見とれていました。本物の長刀では無いんですが、刃に手を少しでもあてただけでたちまちに血が噴き出してしまうような、そんな生き生きとした長刀の扱いを拝見し、大変勉強になりました。


(当然、「大原御幸」も拝見し、勉強させて頂きましたが、自分の先生の事などを書くなんて恐れ多いので控えます。)




お付きって、大変なんですけど、いい意味で刺激になります。もう本当に、純粋に「能ってイイなぁ~」って思える瞬間に出会える事が多いです。僕の財産(*´・ω・`)



さてさて、明日は今年最後の研能会ですね。張り切って謡ってきます(`・ω・´)