第1話はこちら↓
まぶたに感じる眩しさで目を開けると、朝になっていた。額には濡れた手拭いがのせられている。隣にいたはずの男の姿はない。
先に寝たと思っていたあの男が、私にこれを?
手拭いを取って枕元に置くと、床に手をつき、ゆっくり起き上がる。眩暈や頭痛はおさまっていた。囲炉裏の焚き火は、まだチロチロ燃えている。私は、小屋の中を歩いて回った。昨日は暗くてわからなかったが、小屋の中は整理されていて、棚には本がたくさんあった。
「起きたか!」
扉が開いて、男が駆け寄ってくる。
「あの…」
話そうとするのを遮るように、男の手が額に飛んできた。手のひらがパチンとくっついてから数秒。男は、口角をきゅっと上げて私に言った。
「よし、下がってる。話していいぞ」
フーッと大きく息を吐いた男は、手に持った桶を地面に置き、柄杓で水をすくってガブリと飲んだ。
「私にも…ください」
「ああ、ほら、飲め」
男は、水の入った柄杓を私に手渡した。それを一気に飲み干すと、今度は自分ですくって味わうように飲んだ。
「おいしい」
「だろうな、3日も飲まず食わずで眠ったきりだったから」
「3日?」
「ああ、そうだ。腹も減ってるだろ?」
そういえば、お腹もぺこぺこだ。
「もう少ししたら、メシが来るから待ってろ」
飯が来るって、出前のこと?私は、深く考えずに頷くと、水をもう一杯すくって飲んだ。
つづく