佐賀住まい・福岡勤務の作業療法士の橋間葵です。
夏本番を前に、梅雨の時期の湿気や低気圧が続き、体が疲れやすくなっていませんか。
脳卒中後は特に疲れやすくなったとお話をうかがうこともしばしば。
脳卒中後の疲れやすさは、さまざまな調査がなされています。
今回は、脳卒中後の疲労感について記していきたいと思います。
疲労と疲労感
疲労は、痛みや発熱とともに体の危険信号の3大アラートのひとつであることで有名です。
疲労は、「心身への過負荷により生じた活動能力の低下」、疲労感は「疲労が存在することを自覚する感覚で、多くの場合不快感と活動意欲の低下を認める」と、日本疲労学会は定義しています。
長く歩いたり、筋力トレーニングを続けているとき、筋肉の収縮力が弱まることが「疲労」です。
長く歩いたり、筋力トレーニングによって「疲労」が生じたとき、筋肉痛や全身の倦怠感を自覚するものが「疲労感」です。
疲労と疲労感は明確に分けることは難しいといわれています。
脳卒中後の疲労感
脳卒中後、運動機能障がいがほとんどみられないのに、疲労感を訴える患者さんが数多く存在し、さまざまな調査が行われてきました。
脳卒中後の疲労感について、Acciarresiらは、「発症早期からの疲労感、エネルギー不足、身体的、心理的な活動への嫌悪感などがあり、通常の休養でも改善(Acciarres,2014)」と定義しています。
脳卒中後の疲労感は、30~68%とばらつきがあるものの脳卒中後の疲労感の発生率であると報告されています。
脳卒中発症後の早期からの疲労感は炎症などの要因が関与し、晩年発症の疲労感は心理的・行動学的要因の関連が強いという報告もあります。
出典:治療と就労における阻害要因~脳卒中後の疲労感の特性
脳卒中後のうつを発症していなくても疲労感があるという報告が数多くあり、脳卒中後のうつと脳卒中後の疲労感の関連の有無ははっきりしていません。
脳卒中後の疲労感の病態生理について、以下のような歴史があります。
✔ 1998年以前は運動機能の低下が主として関与すると考えられていた
✔ 2009年~2015年では、生物的・心理的・社会的要因などが多次元的・重層的に関係し、不安やうつ・睡眠障害などが微妙に関連すると推測されていた
出典:治療と就労における阻害要因~脳卒中後の疲労感の特性
✔2016年以降、脳卒中によるダメージを受けた部位の炎症による免疫反応から発症すると考えられている
出典:治療と就労における阻害要因~脳卒中後の疲労感の特性
脳卒中後の疲労感に対する介入
脳卒中後の疲労感に対する介入の報告は多くありません。
運動強度を増し、これに認知療法を加えることで改善できるが、それ以外の介入法では効果がみられていないと報告されています。
運動のみ・認知療法のみでは改善せず、組み合わせることで長期的に疲労感の改善が安定していたと報告されています。
脳卒中後の疲労感に対するエビデンスとしては確率はされておらず、さらなる研究がまたれるところです。
最後に
今回は脳卒中後の疲労感について取り上げました。
今後も、脳卒中後の疲労感について随時情報を収集していきたいと思っています。
引用・参考
1) Acciarresi M et al. Post-Stroke Fatigue: Epidemiology, Clinical Characteristics and Treatment.Eur Neurol 2014;72:255–261
2)田中 喜秀 他:ストレスと疲労のバイオマーカー.日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)137,185~188(2011)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/137/4/137_4_185/_pdf
3) 永松 俊哉:抑うつ改善に及ぼす運動の効果.Jpn J Gen Hosp Psychiatry(JGHP)Vol. 25 No. 3 (2013)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjghp/25/3/25_240/_pdf
4) 豊永 敏宏:治療と就労における阻害要因~脳卒中後の疲労感の特性~.日職災医誌,68:162─169,2020
http://www.jsomt.jp/journal/pdf/068030162.pdf
5) コクランライブラリー:脳卒中後の疲労に対する介入
,゚.:。+゚最後まで読んでいただきありがとうございました,゚.:。+゚