『あしたの華姫』(著/畠中恵)
前記事『まことの華姫』の続編。
両国の見世物小屋で豪華絢爛な姫様人形、華姫との話芸を生業とする月草。
小屋の客入りも良いし一帯を仕切る親分・山越の覚えも良い。順風満帆に見えた月草だが、山越の親分の跡目問題に何故か巻き込まれ今回も難題をふっかけられることに。
前作はそれぞれ独立した問題の『まこと』を見抜く話の短編連作だったが、今回は事件を解決しようとすると山越の親分の跡取り問題が絡んでくると言う、共通テーマを持った短編連作になっている。
大きな盛り場を収めているだけに、山越の親分の跡目問題は一筋縄ではいかない。
私もこの話を読むまで、親分と呼ばれる人たちの跡取りとなるのがこんなに困難だとは思わなかった。
どうひっくり返っても親分に選ばれる条件に足りてない月草が、跡目に端を発した問題を解決しなくてはいけないのだから大変だ。
それどころか同じ両国の芸人衆に、月草は山越親分を裏切ったと誤解されてしまうのだからたまらない。
華姫を抱えて、問題の『まこと』を探し奮闘する月草。勿論、生真面目な彼には華姫以外にも信じてくれる仲間がいる。
月草は次々起こる問題を解決に、まことを示すことが出来るのか。
華姫との巧妙なやり取りやお華追いたちの活躍も変わらずの見どころ。
しかし、妖とか神様とか、人と違う常識を持つ者がいないとこうも読み易くなるものか。
妖も神様も人間が理解できない基準で動くので主人公が振り回されることが多いのだが、今回主人公を振り回しているのも同じ人間なので理由が分かった時に納得しやすい。
畠中氏の描く人ならざる者は魅力的だが、感情移入がしにくいときがある。
今回はそれがないので、そういう意味では読み解き易かった。