『午前二時不動産の謎解き内覧』(著/奥野じゅん)
連続で深夜営業の店の話なのだが、こちらは店のオープン時間が深夜なだけで物語の大部分は日中に進む。
連作短編集。
深夜の二時にこっそりと開店する午前二時不動産は、都内の格安物件、所謂ワケあり物件を専門に仲介している。
大抵が死亡事故が起こった物件なのだが、特筆すべきはその物件に『謎』が絡んでいるということだ。
この謎を解き明かした者だけが、この物件と契約を結べるという奇妙なシステムで運営している。
『謎』と一口にいっても、不思議な現象だったり貸主である大家が疑問に思っていることだったりと色々だ。
事故物件ではあるが家賃や住環境の良い部屋と契約するため、借り手は不動産屋の柏原と共に謎に挑む。
当然、物件ごとに柏原のパートナーが変わるのだが、探偵役が次々変わっていくのも面白い。
しかも前話の探偵役だった人物が新しい謎解きのアドバイスをくれたりする。
一回限りの登場でなくその後が知れるのは読者としては嬉しいし、万能に見える柏原がかつての顧客を頼る姿は人間味があって良い。
ちょっと亡くなった人の心情を慮る描写がくどいかな?と思う個所もあるが、それも作品の味なのかもしれない。
個人的に物件とか間取りとか好きなので、出来ればシリーズ化して欲しい作品。