以下の文面はフィクションです。
実在の人物・団体・テレビ番組等とは何の関係もありません。
似てる人がいてもそれは偶然の産物と納得してください。
よろしくお願いします。
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雄輔が動く。
「ねーねー大将、この戦闘シーンなんだけど、動き不自然くない?」
雄輔が食べる。
「あ、なにこれー!超珍しいお菓子あんじゃん!!」
雄輔が甘える。
「ノック~、今度またあのお店に連れて行ってよ♪」
・・・・・。
なんということだ、目の前をチラチラと雄輔が動くたびに、心肺機能が異常反応を示している。
無視しようとすればするほど彼のことを無意識に目で追ってしまう。
聞くでもないのに、彼の声ばかりがまっすぐに耳に届いて頭の中にいつまでも残っている。
このままでは本気で身体の異常から体調を崩しそうだ。
サンは溢れそうな脂汗を必死で堪えながら、大海が一目惚れ光線の餌食になったときのことを思い出していた。
一晩明けた朝の状態はどうだったか判断つきにくいが、昼にはもう効き目が切れていたはずだ。
ざっと計算して24時間、ということは・・・。
「まだあと20時間もあるのか・・・!」(始まったばっかやんな)
こんな面倒な身体状態になっているのなら雄輔の居ない部屋にもで避難すればよいのだが、なんとなく彼と同じ場所に留まっていたいと思ってしまう。
なるほど、恋とは理論的に片付けられないものなのだな。
・・・と冷静に解析している辺りは、まだまだ理論的なサンであった。
そういえば、と、この休憩室と指令室を行ったり来たりしている剛士のことを思い出した。
彼は唯一の既婚者だと聞いている。あの男が一番『恋愛事情』というのに詳しいはずだ。
事務方の大海が遠征中で忙しそうなところ悪いのだが、少しばかり話を聞かせてもらおう。
弾けるような雄輔の笑い声に後ろ髪ひかれるのを振り切って、サンは慌ただしく指令室に向かった剛士の後を追った。
「そっかぁ、やっぱりあの光線の影響はあったんだな(;^_^A」
うんうん、とサンは素直に頷いているが、自分から言ってくれなきゃ微塵も気が付かなかったな、と思う剛士であった。
いやむしろ、どう反応して良いか分かってなかっただけなのかもしれない。
完全な大人になってからの初恋ってのは、ちょっとばっかし勝手が違うようだ。
「で、羞の字は今でも奥方をどう思っているんだ?」
単刀直入な切り口に、本当に男女の機微ってやつを理解してないのだなと痛感する。
「どうって、今でもマジで愛してるよ。なんていうか、時間を重ねるごとに深くなる感じかな?」
「なにっ?!こんな情緒不安定かつ不整脈な状態が十年近く続いているということかっ!
もしかして羞恥心の桁外れた生命力はその辺りに所以が・・・」
「ないない、それは関係ないから」
その発想の方向性に付いて行けなくて、もう苦笑をするしかない。
剛士にとって、いや、普通の日本人にとって当たり前のことが当たり前じゃないのだから、可哀想といえばそうなのだが・・・。
一々反応が面白い( ´艸`)プププ
「俺だって最初はドキドキソワソワしちゃったさ。
だけど長く一緒に居ると、『好き』のバロメーターが下がらなくても、気持ちの反応の仕方が変わってくるんだよ。
もっと優しい、ほわ~んとした気分になれる。
ああ、俺は今幸せだな~ってしみじみ感じるようになるんだ。
一日や二日でそこまでになるのは難しいと思うけど」
っていうか、吊り橋効果を利用したような一目惚れ光線だ。
心臓が過剰反応をしても、幸せを嚙締めるような気分にまではしてくれまい。
「まあ、せっかくだからもうちょっと雄輔の傍に居てみたら?
何か違う発見も出来るかもよ?」
軽く促すと、これまたサンは素直に頷いて立ち上がった。
どうやらコト色恋沙汰に関しては剛士を一日の長として認めているらしい。
普段と違った意味で口数少ないサンと伴って休憩室に戻ると、原因である雄輔は午後もお茶タイムの真っ最中であった。
「うう~~、なんだか目がシバシバする~~」
「雄ちゃん、ドライアイがまたひどくなったんじゃないの?ちゃんと目薬してる?」
「目薬差すの苦手なんだよなぁ。ノク、やってよ♪」
やらせるつもりだったんでしょ、と言いたいのを堪えて直樹は雄輔から目薬を受け取った。
まったくの無防備で直樹が目薬を処方してくれるのを待つ。
直樹も慣れたもので、ちょっと彼の瞼を抑えて素早く適量の目薬を彼の瞳の上に滑らせた。
「どう?」
「うん、ちょー気持ち良い!やっぱノク天才!」
こんなことで天才と言われてもなぁ、と若干渋い顔の直樹など気にもせず、雄輔は直樹の背中にいつものように乗っかってくる。
その様子はまるで、飼い主に甘える猫のようだ。
にゃごにゃごと聞こえそうな満面の笑みで、直樹の肩口に頬を摺り寄せる。
今更誰もが見飽きた風景、なのだが。
やばい、サンのバックに炎のオーラが見える・・・![]()
雄輔は勘違いしていた。
サンには一目惚れ光線が効いてない、と。
だから彼の目の前で直樹に甘えているところを見せ付けよう、なんて気持ちはこれっぽっちも無かったのだが、結果として疑似片思い中のサンに直樹とのラブラブっぷりを見せつけることとなってしまったのだ。
「お、おい、サン・・・」
「羞の字!」
すんごい勢いで迫って来られて、思わず『ごめんなさい!』と口走りそうになってしまった剛士だった。
「はい、なんでしょう・・」
「心の字と恥の字を見ていると、なにやらひどく気持ちが掻き乱されている。
腹の底から今まで感じたことのないエネルギーというか、何ともしがたい気流のようなものが溢れてくるのだ。
抑えきれない、怒りにも似た憤りのような感情が湧いて止まらん。
これはもしや・・・」
そうです。それが嫉妬というやつです。
と剛士が説明しようとした瞬間、サンは力いっぱいの握り拳で叫んだ。
「これが、噂に聞く『恋に身を焦がす』というやつなのかっ!!」
駄目だこいつ、区別がついてねーーー!
頭っからずっこけた剛士を放り出し、サンはずんずんと雄輔のほうに寄って行った。
「心の字、もう一度特訓に付き合え」
「はっ?!午前一杯相手してやったじゃん!」
「お前のせいで湧いてくる活力が止まらん!このエネルギーの消化を手伝えと言っているのだ」
「って、訳わかんないんですけど~~~」
雄輔の抵抗空しく。
サンに首根っこを摑まえられ、ズルズルと引き摺られるようにして訓練室に連行されてしまった。
これでゆっくりお茶出来る♪と目論んだ直樹に笑顔で見送られて。
「さすがに同じ太陽を象徴とする二人だね。あんなに仲良しになっちゃって」
「直樹、それって雄輔のお守りをしてくれる人が増えてラッキー♪とか思ってるだろ?」
「えー、そんなはっきり口にはしないよぉ」
腹の中じゃ思ってんじゃん!
穏やかな顔でゆっくりコーヒーブレイクを楽しむ直樹に、やっぱり少し強かになってきたな、と実感する剛士であった。
end
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大海ちゃんが出てこなかったな~。
今日は科捜研もないし、自分的にちょっと物足りない感じに・・・。
ま、大海ちゃんは別の機会にね。
オリキャラがかなり目立ってましたが、少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。
では、またどこかでお会いしましょう。