『お台場戦隊ヘキサレンジャー~最終章~』⑮ | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

逢海司の「明日に向かって撃て!」

ご注意下さい!!私のブログは『愛』と『毒舌』と『突っ込み』と『妄想』で出来上がってます!!記事を読む前に覚悟を決めてくださいね(^^;。よろしくお願いします☆



ちゃんと標準装備して出動するのはこれが初めてだった。

スタッフの仕事は信用しているが、実際にどうなるか現地に飛んでみないと分からない。

それに、移動中に謎の男たちとリアンがどんな展開をいているのかも・・・。


蒸着システムを稼働している移動中は分室からの連絡が受けられない。

現地に降り立って、初めて通信可能になる。

基地から飛び立ってものの数分で、転送ポット内のランプが点滅した。


来た!と体制を取ると同時にポットの扉が開き、上空から現場に向かって雄輔自身が放出される。

この真下で起こっている事態を想定する間もなく、ぐんぐんと空気を切り裂きながら急降下を続けた。

頬を切る風が、メットを通しても感じられる。

迫る地表のポイントを定め、綺麗に空中回転を決めて初めての現場に降り立った。


大きく、息を吸い込む。

気合を入れなおすためにも。



「ダテに待たせたわけじゃない!

太陽戦士、Y-suke、参上!!!」



何も考えてなかったのに、一人でも決めポーズが取れるから不思議だ(各自で妄想するように)



『上地さん、こちらの通信は聞こえてる?かなりマズイ状況なんだけど』

「OK、麻里ちゃん、よく聞こえてるよ。つか、マジでヤバイかもな・・・」


華々しい初登場と身に着けた輝かしいバトルスーツとは裏腹に、マスクの下の雄輔の表情が曇る。

眼下で待ち構えていた風景は、雄輔の予想を遥かに上回る状態だった。


数で上回っているはずのリアンたちは、軒並み倒され地面に這いつくばっている。

一見したところは命の危険にさらされているほどではないが、それもちゃんと検査してみなければ分からない。

そして無傷なままで、雄輔に挑戦的な眼差しを送る三人組。


基本がフルフェイスのメット式のマスクを使用している『ヘキサレンジャー』に対し、彼らは目元をゴーグルで覆い隠す程度の装備しかしていない。

ゴーグルからつながるインカムで連絡を取り合うことも可能だろうが、それにしても不用心すぎる風体だ。

バトルスーツもフィットタイプで、どの程度の機能が含まれているか図りにくい。

まるで普通の布服のような長い裾が、巻き上がる風に靡いていた。


「兄上、あいつも兄上と同じ『太陽』を名乗っているみたいですよ」


三人のうちの一番華奢に見える男が、柔らかい口調に侮蔑の色を滲ませたトーンでそう呟いた。

耳に届くその声が不自然に罅割れて機械的に聞こえる。

口元のインカムマイクにボイスチェンジャーの機能でも組み込まれているのだろうか?


・・・・?ボイスチェンジャー?


何か違和感のようなものが、雄輔の心の中を走った。

正体を知られないためにそんな工作をするのは常套手段だが、納得できないモヤモヤとしたものが胸に突っかかる。

なんだ、この奇妙な符号は・・・?


「お前は羞恥心イエローだな!?そんな豪勢なナリをしてくるとは、ご苦労なことだ」

「うるせ!お前たちこそ何者だっ!新しい悪の組織なのか?!」

「俺たちか?俺たちの名は『カオス』。

出鼻を挫くみたいだが、悪とか正義とかには興味はない。俺たちが興味があるのは、お前たち羞恥心だけだ」


どうゆう意味だ?と雄輔が眉を顰めていると、一人が携えている剣を翳して雄輔に飛びかかってきた。

咄嗟に雄輔も剣を取り出してその刃を受け止める。

実戦で初めて使う割には、スムーズに扱えたものだ。


「自己紹介代わりだ。俺の名は『テラ』。カオスの切り込み隊長ってとこだな!」


雄輔が受け止めた刃を撥ね退けると、男は後方に回転して身をかわし、その勢いのままに新たな攻撃を仕掛ける。

まるで演舞のような滑らかな動きには無駄がなく、繰り出される剣の応襲に雄輔は受け止めるだけで必死だった。


「ちょい!!はええって!!」


思わず口をついた泣き言に、テラと名乗った男は鼻先で笑い返した。


「初めての戦闘で、それだけ俺の剣を受け止められりゃ、立派なもんだぜ」

「てめ、偉そうに!!」


雄輔が切りかかろうとすると、軽やかに飛び去って刃を躱した。

熱くなってテラを追いかけようとした瞬間。


『上地さん、前方に注意を!』


麻里の声に引き寄せられるまま前方に睨みを効かすと、複数の礫が雄輔に襲いかかってきた。

さすがの運動神経でそれらを叩き落としたが、麻里の指示がなければ危ないところだった。


「飛び道具って反則じゃねぇの?!」


叫んだところで雄輔は我が目を疑った。

その男の手の平に、いや、手の平から浮いた状態で拳ほどの石が空に留まっていたのだ。


「すみませんね、ボクの能力はこっちが優勢なので。

申し遅れましたが、ボクの名前は『ユエ』です。以後お見知りおきを・・・」

「ちゅーか、超能力の方がさらに反則だろうがっ!!」


にこっ、と薄い唇が可愛らしい笑みの形を作ったかと思うと、ユエは宙に浮かしていた石を次々と雄輔に投げ付けた。

数が増えたそれらは払い落とすよりも避ける方が早いと、雄輔は機敏なフットワークで飛んでくる礫の攻撃を躱す。

一陣が去ったところで悠然と構えるユエに攻撃を仕掛けようとしたのだが。


『後ろ!石が戻ってきます!!』


躱したはずの石が、大きく弧を描いてUターンして来たのだ。

これは対処の仕方がないと、雄輔は間一髪で高くジャンプし舞い戻ってきた石の攻撃をやり過ごした。


「マジかよ、あんな奴らどーやって戦えってーの?」


フワリと舞って滞空時間を稼いでいるところへ、最後の男がまっすぐに飛び込んできた。

武器や小手先を使わずに、肉弾戦宜しく繰り出される拳を雄輔も掌で受け止める。


「俺の動きを防ぎきるとはさすがだな」

「なめんな!こっちは長年正義の味方やってんだ!!」

「それも付け焼刃だろう?俺の名は『サン』。お前と同じ太陽を象徴とする者だ」


拳に気を取られていた隙をついたサンの回し蹴りが雄輔の横っ腹に見事にヒットする。

軽く蹴りだされたわりにその威力は重く、雄輔はそのまますっ飛ばされた。


「くっそ!」


すぐさま立ち上がり、三人揃った相手に身構えた。

恐らくリーダーであろうサンを中央にして、左右にユエとテラが控えている。

雄輔一人ごとき、脅威など微塵も感じてもいないという自負が滲み出ているその立ち姿。


・・・なんだ、この既視感は。

俺はこいつらとどこかで会っているのか?

それとも俺の出来損ないの頭が、何かと取り間違えているのか?


戦いに集中しなくてはいけないのに、湧いてくる疑問符が頭を混乱させる。

何だ、何が納得できないんだ?

こいつらは一体、何者なんだ?


「羞恥心イエロー、いや、Y-suke。今日は挨拶代わりだ、これで引いてやる。

次に会ったときは、その首、本気で貰うから覚悟しておけよ」


混乱する雄輔を尻目に、『カオス』と名乗った男達はたちまちにその場から立ち去って行った。

雄輔も追おうと思えば追えたのだが、傷ついたリアン達を残して深追いは出来ない。

それに、名前が知れたところで不解明なことが多すぎる。


「麻里ちゃん、あいつらの追跡できてる?」

『・・・すみません、途中からはレーダーからも消えてしまって』

「分かった、それじゃリアン達を輸送できる交通手段の手配をお願い。俺一人じゃみんなを抱えて帰れないや」


何ひとつ釈然としない。

それでも分かったことは、奴らの狙いが『羞恥心』である、ということ。


直樹が居ないのに?それも構わずに?

いや、直樹が消えた原因をあいつらなら知っているのか?


頭が痛くなってきたので、それ以上は考えることを一度やめた。

それよりも今は、怪我を負った仲間の救護が最優先事項だ。


いずれにせよ、自分たちが狙いというからには、彼らとは遠くないうちに再戦することになるのだから。






続く