『お台場戦隊ヘキサレンジャー~最終章~』⑭ | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

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ご注意下さい!!私のブログは『愛』と『毒舌』と『突っ込み』と『妄想』で出来上がってます!!記事を読む前に覚悟を決めてくださいね(^^;。よろしくお願いします☆


可哀想に、訓練はしたかもしれないが、実戦の痛みを知らずにここまで来てしまったのか。


力尽きて立ち上がることすらできず、地面に蹲るしかない若き戦士たちの哀れな姿に、ユエは空しさを覚えずにはいられなかった。

彼らがどんな苦しい訓練を乗り越えてきたかは分からぬが、完全が確保されたお庭の中での特訓などたかが知れている。

戦闘に耐えうる体力や運動能力を身に付けることと、実際に身体を張って戦うということは根本的に別次元の話なのだ。


何に彼らは踊らされたのだろう?

正義の味方という、子供のころからの純粋な憧れ?

自分たちは世界を救えるという陶酔的な自己欺瞞?


それとも。


彼らも、大人たちに都合の良い駒として揃えられただけなのだろうか。


「準備運動くらいにしかならねーな。これならユエとやりあってる方がまだマシだぜ」


成すすべもない関の胸ぐらを掴み上げて、テラが鼻先でせせら笑うように言い放った。

恐怖よりも自信喪失で強張った少年の顔を、濃色のゴーグルの奥から物珍しそうに眺めている。

その視線が、ねっとりとまとわりつくのが関にも伝わっていた。


「俺たちを、どうするつもりだ・・・?」


殺すのか、とは聞けなかった。

それがまた甘いのだと、本当の戦いが何たるかを知らない子供の反応だと、テラは嘲笑を濃くして関を地面に投げ落とした。


「殺しゃーしねーよ。別にお前らには興味も恨みもねーしな。どの程度のもんか試しただけさ」

「テラ、いい加減にしてやれ。力加減が出来ないのはお前の悪い癖だ」

「そんなことを言うなら、俺は何度もサン兄貴に殺されかけたぜ?お互いさまだろ」


お互いさまの使い方が間違っています、とユエが訂正しなかったのは、優しさからではなく面倒臭かったからだ。


「すまないね、坊やたち。ただ、地球を守るなんて豪語するからには、これくらい痛い思いをしておいたほうが良いだろう?

本当の痛みを知らなければ、君らがしていることはバーチャルゲームと同じだよ」


そう諭しながら、サンはどうにか上半身だけは起こしている森に近づいた。

悔しさに塗れた瞳だけは力を失わず、無鉄砲な光を宿して彼らを睨みつけている。

限りなく不利な、壊滅的な状況でありながら挑む姿勢を崩さない。

あの男が気に入りそうな人材だ、と喉の下でほくそ笑んだ。


「そうだとしても、君が持つにはコレは少々荷が重すぎるだろう」


静かに腕を伸ばしたかと思うと、森の首元にぶら下がっていた飾り玉をもぎ取った。

それは森が抵抗する間もないくらいの、スムーズで滑らかな動きだった。


「アニキ、それが本物で他はただの反響板みたいなもんだぜ」


リアンたちのメンバーは胸元に象徴のような勾玉型の貴石を一様につけている。

それがどんな意味を持っているか、リアン達も詳しくは知らされていない。


「っ・・・、返せ!」

「子供が持つには危険なおもちゃだよ、これは」


取り返そうと手を伸ばした森の足を、軽くひっかけると彼はその場に力なく崩れた。

もう一度立ち上がろうと踏ん張った足元がよろけて、自ら地面に撃沈する。

力及ばない悔しさに、這いつくばった地面に爪を喰い込ませ顔を歪ませる森。


痛みも悔しさも心に刻んでおくと良い。

それが自分を強くさせようとする最大の原動力となるのだから。




キン・・・、と空気が割ける鋭い波動を感じた。

どうやらもう一つの目当てが来たようだ。

空の彼方に目を凝らす。

太陽のすぐわきに認めた小さな光の点は、瞬く間に大きな煌めきとなってその地に舞い降りた。


「・・・ようやく来たか」


まるで空に輝く太陽の分身のように、金色に輝くバトルスーツを纏った新たな戦士。

金を通り越して白にまで見えるその輝きは、目に焼き付くほどの強靭さだった。

そうやって彼らとは分けられるのだ。


光に在る者と、影に潜む者と。





続く(月曜あたりに・・・)