以下の文面はフィクションです。実在する人物、団体、組織等とは一切関係がございません。
似てる人が居ても、それは偶然の産物です。
妄想と現実を混同しないように気をつけましょう。
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薄暗いステージ裾で、三人が突き出した拳を合わせる。
袖のカラーが三色そろったのは、いつ以来だったのか。
これから起こる、いや、起こすサプライズに唇の端がくすぐったくニヤけるのは、仕方ないだろう。
「それじゃ、ステージの上でな」
うん、と頷いた野久保はメインステージ下へ動く。
つるのと上地は、そのままセンターステージの下まで移動する。
その最中、一歩後ろを歩いていた上地が笑いを含んだ声で呟いた。
「あいつ、ここまで来て緊張してやんの」
「分かったか?」
「ったりめーじゃん!どんだけあいつのテンパッるところを見てきたと思ってんの?」
「そりゃそーだ。ココに来てる人で、あいつが戻ってきたのを喜ばない人なんていないのにな」
去年のヘキコン。
彼が楽屋まで来ている、と聞いた時の観客の割れそうな歓声。
確かにその声は野久保の心まで届いたのに、いざ現実を目の前にして少しの不安が生まれてる。
無頓着のようで繊細で、だけど開き直ると強くて。
相変わらず、野久保は野久保だった。
なんでもない顔を必死で造るけど、二人にはバレバレな彼のままだった。
「じゃ、先に行ってくる」
「おぅ。行ってらっしゃい」
軽くハイタッチして、移動床の下に立つ。
両サイドにはいつも冷やかすコンビが、これまたどこか緊張した顔でスタンバッていた。
「はい、床、上げます!」
ザァっと光が降り注ぎ、客席の歓声が聞こえてきた。
待ってろよ、もうすぐに面白いものを見せてやる。
みんなが、ずっと待ち望んでいたものだ。
祈りは、いつか通じるんだぜ。
「・・・いまさら緊張してるとか言うんじゃねーぞ」
人の事をとやかく言うが、そのときの上地のドヤ顔だって相当なものだった。
とはいえ、恐らく自分も彼に負けないドヤ顔をしているのだろうけど。
そんな上地と一瞬目を合わせて、同じ様にニヤっと笑うとそのままメインステージを振り返った。
会場内に緊張が走る。
まさか、そんなわけは・・・。
期待と不安の入り混じった空気に、誰もが息を飲んだ。
メインステージに照明が集まる。
ゆっくり上がって来る奈落。
そこに立つのは、そうだよ、みんなが待って待って、待ち続けた男だよ。
それまで真っ暗だったメインモニターに大きく彼の笑顔が映し出された。
何かまだ吹っ切れてない、押し殺したような笑顔。
だけど聞いてみろ、このつんざめく程の歓声を。
悔しいが、今日一番の歓声が、お前を歓迎してるんだぜ。
「野久保直樹ーーー!!!」
はっと顔を上げて、野久保は二人の兄貴の顔を捉えた。
早くこっちに来いと、無言の笑顔で、いやらしいくらいに男前な笑顔で待っている。
いつだって、あの自信溢れた笑顔のそばにいたかった。
だから必死で走っていた。
いろんな不安を胸にしまっても、足だけは前に進めていた。
堪え切れずに、彼らの待つステージへ駆け出す。
やっとここまで帰ってこれた、最後の最後に間に合った。
だから・・・。
「え?」
焦ったのが悪かったのか、緊張していたせいなのか、花道途中で野久保のつま先が床にひっかかった。
気持ちが前倒しだった分、勢いが止まらない。
そのまま、もろに顔から、ビッターン!と野久保は床に転んでしまった。
「ちょっ!ノック!!」
スサマジイ音と共にオオコケしたので、会場中、笑う事すらできなかった。
あまりの衝撃に野久保もすぐに起き上がれない。
大丈夫なのか、と恐る恐る上地とつるのが近寄って行くと、ようやく彼が体を起こした。
妙に、サイズが違ってしまった体を。
「・・・、の、野久保さん・・・?」
「ぅ・・・、ビエー・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。ーーン!!」
まさかの展開。
幼稚園児サイズにちっこくなった野久保が、ビービー泣きわめいているではないか。
「なんで?コレ(幼児化)って感染すんの?」
「ゆーちゃん、あーたがどうにかしなさい!」
「なんで俺なの?子守つったらつーのさんの得意分野じゃん!」
「あーたが小さくなる時はいつも直ちゃんが面倒みてるんだから、今度はあーたがどうにかしてよ!」
「むちゃ・・・、うわ、ノック、泣くな、男の子だろっ」
「ブエーーーン!!・゚゚・。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。・゚゚・。」
痛いのか恥ずかしいのか、はたまた我慢してた何かが切れたのか、とにかく野久保の泣き方は半端なく止まりそうにない。
上地が抱き上げてよしよしとしてあげても、つるのがあやしてみても全く効果なし。
これが楽屋ならまだいいが、今はコンサートの本番中である。
ヒシっと雄輔に捕まって大声を上げて泣いている勢いは、当分収まりそうにない。
ああ、普段ならちっさくなって可愛い♪とか余裕をかませるところなのに。
頼むから、
誰かこの魔法を即刻解いてくれ・・・。
「つるちゃーん、お疲れなのは分かるけどそろそろ起きて。今日もイベントでしょ」
愛妻の声に、つるのは驚いて目を開けた。
落ち着けば自宅のベッドの上。
冷静に記憶をたどれば、ヘキコンは昨晩のうちにつつがなく終っていた。
打ち上げで飲んだ酒が悪かったのか、夢に見るほど興奮してのか、とにもかくにも、野久保が幼児化してお手上げ、なんて状況は起きてなかった。
つか、そんなサプライズ勘弁してくれだわ。
「そうそう、だいたいノックとはあの後も普通にツイートしてたじゃな~い」
一息ついて起きようとすると、ミキが何か言いたげにずっとつるのの顔を眺めていた。
「ミキちゃん?ボキ、何か変?」
「ううん。ただそこの新しい隠し子、どうにかしないとじゃないの?」
へ?っと自分がかけていた布団をめくりあげると、ベッドの隙間にキチンと線対称を描くように向かい合って眠っている男児が二人いる。
嫌な汗がドーーンと背中を流れ落ちた。
か、勘弁してくれ・・・。
「ちょっとゆーすけ!お前朝から打ち合わせだって言ってただろう!?直樹も!今日から舞台の稽古に本格的に戻らないといけないんだろがっ!とにかく起きろ!いや、大人に戻れ!!」
ゆさゆさと肩をゆすっても、幸せそうに寝息をたててるお子ちゃまには聞こえちゃいない。
ちゃんと彼らの事務所のスタッフはこの事態を知っているのだろうか?
「しらないわよー。昨日、つるちゃんが嬉しそうに両脇に抱えて帰って来たんだから」
犯人オレかーーーっ!
「起きろーーっ、とにかく起きてくれーーー!!」
つるのの泣き声に近い訴えもほとんどスルーな子供たちは、久しぶりに遠くで聞こえるあにぃの声に安心してさらに気持ちよく眠り続けたのでした☆
終わり( ´艸`)