注意1:
ここに書かれているお話はフィクションです。完全妄想だとご理解の上、お読みください。
(妄想のテイストが好みでなくても、怒らないようにお願いします)
注意2:
こちら、不定期連載になります。むしろ書きたいシーンだけ書くような荒っぽい仕上がりとなります。
注意3:
基本が『こんな役をドラマでやってほしい~♪』なので、イメージが違うことは覚悟しておいて下さい。
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自転車をめいっぱいこぎながら、失敗したかな、と崎本は天を仰いだ。
このくらいの雨雲なら雨は降らないだろうとタカをくくっていつものチャリ通を決め込んだのだが、今にも空から滴が落ちてきそうだ。
せめて職場に着くまでは降らないでくれ、と念じながらペダルを漕ぐ。
通勤時間は45分。
この調子でいけばなんとか間に合う、と安心したそのとき、目の端に映ったソレに足を引き止められた。
町裏の公園、人気のないベンチに置いて行かれた一冊のスケッチブック。
よせばいいのに、自転車を停めてスケッチブックを手に取る。
A3サイズのどっしりした作り。
興味だけで中を開いて、崎本は驚きの声をあげそうになった。
カラフルな色合いで、沢山の服のデザインが書きなぐられている。
アパレルのことはてんで分からない崎本だが、これがどれだけの価値と意味があるのかは一見して分かった。
「すっげーーー」
感心しきりの様子でパラパラとめくっていくと、そのデザインに由来するコメントも書き添えられている。
アイディア溢れるそれらに、天気の悪さも忘れて眼を奪われていた、その時だった。
スケッチブックの端っこに、ポタン、と空から滴が落ちてくる。
慌ててスケッチブックを閉じて、胸に抱えこんだ。
このままではせっかくのデザインが雨に流れてしまう。
落し物は交番に持っていくのが定番だが、一番近い交番は今来た道を逆走しないと辿りつけない。
迷っているうちに雨粒はどんどん大きくなって、崎本の艶やかな髪の上を転がり落ちて行く。
「もー、なるようになれ、だっ!」
崎本は片手でスケッチブックを抱え、片手で自転車のハンドルを取って駆け出した。
雨脚強くなる町に切り込むように。
「それでびしょ濡れのご登場となったわけですか」
呆れ混じりの剛士の言葉だが、どこか優しい。
すっかり濡れそぼった黒髪を借りたタオルでガシガシと拭きながら、崎本は嬉しそうに付けくわえた。
「交番から戻ってくる時に、手持ちのクリアファイルにマジックインキで書き置きしてきたから完璧です」
「書き置き?」
「はい!スケッチブックは交番に届けてありますって、書いて置いてきたんです。
メモ帳だと雨で解けちゃいますけど、プラスチックのクリアファイルだから大丈夫っす(^^)v」
雨なんてへっちゃらな満点笑顔の前で、剛士はただただ言葉を失うしかなかった。
そんなことをせずにさっさと事務所に来ていれば、これほどびしょ濡れにならずにすんだだろう。
落とし主だって失せ物となれば、まずは交番に助けを求めるはずなのに。
それでも。
かろうじて雨を凌いだ木の下で、必死にへにゃへにゃなクリアファイルに伝言を書き遺している。
彼の輝いた笑顔が、見てきたみたいに剛士には想像できたのだ。
スケッチブックに無事再会できた持ち主が、喜んでくれると心から信じている彼の笑顔が。
「服もびしょ濡れですね。僕の着替えがあるから貸しましょう」
「本当ですか?!ありがとうございます(*^ ^*)」
仕舞ったままだったので少し埃っぽくなってしまった着替えを、崎本は何故だか嬉しそうに受け取ってルンルンの笑顔で着替えに行った。
ひどく懐かれているような気がする。
上司とか雇い主とか師匠とか、そうゆう立場的なものを超越して好まれているようだ。
「まあ、悪い気はしないですよね」
思わず口元に笑みが零れる。
慕われる、というのは、なんとなく甘い感覚と優越感を与えてくれるものだ。
それも相手があれだけ素直で可愛らしい子なのだから猶更である。
「せんせー、今すぐに熱いお茶をいれますからねーー」
着替えが終わったのか、給湯室から崎本の稚さが残っている声が響く。
熱いお茶で温まった方が良いのは彼のほうだろう。
なにげに虚弱な彼の体調を気にしながら、剛士は崎本が淹れたてのお茶と共に戻ってくるのを待った。
しばし待つと、湯飲みに淹れたお茶を携えた崎本が元気な笑みを浮かべて戻ってきた。
今日は緑茶かな?と湯飲みを覗き込んだ剛士の顔色が失せる。
これは、この怪しく濁った色は・・・。
「さ、崎本くん、今日のこれはなにかな・・・?」
「なんと!今ハヤリのセンブリ茶です!」
流行って・・・orz_ウレシクナイデス
某有名番組の罰ゲームでもお馴染みで苦さは伊達じゃない。
なんたってその名の由来が『1000回振り出してもまだ苦い』と言われてるくらいなのだから。
「先生、苦くっても体に良いですから、笑顔で飲みましょ♪
特に胃腸虚弱や下痢・腹痛、さらには脱毛に効くといわれるんですよ!」
「脱毛ですか・・・」
僕のおでこはそんなにヤバイですか?と情けなくて声に出せない剛士であった。
自覚症状はあるけど、それを認めたら負けなような気がする。
心配してくれるのは有り難いけど、そんなにはっきり言わなくても・・・。
「ね、センセ、一緒に飲みましょ^^」
「そんなに勧められると、逆に落ち込みますよ・・・」
「ですから、一緒に」
「・・・一緒に?」
「そうです、一緒に。マジ(・_・)カオ」
・・・・・・・・・・・・。
「崎本くんも、猫っ毛ですもんね・・・」
その後二人が仲良く腰に手を当てて、センブリ茶を一気飲みしたのは言うまでもないだろう。
(ファンの人、石を投げないでくれ~~~)
続く