『ライオン~こころのこいぶみ~』⑦ | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

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ご注意下さい!!私のブログは『愛』と『毒舌』と『突っ込み』と『妄想』で出来上がってます!!記事を読む前に覚悟を決めてくださいね(^^;。よろしくお願いします☆

以下の文面はフィクションです。実在する人物、団体、組織等とは一切関係がございません。

似てる人が居ても、それは偶然の産物です。

妄想と現実を混同しないように気をつけましょう。

ちなみに、今回は(やっぱり)基本がBLです。

苦手な人は避けてくださいm( _ _ ;)m

しょせん素人が書いてるモノなので、過剰の期待はしないで下さいね~~。



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ひどく身体の節々が痛んで目が覚めた。

何が起こったのかを思い出す前に、荒れた店内が視界に入る。

酒を飲んで車を運転するわけにいかず、あのまま店のソファーで一眠りしたのだった。


同じように何人かダチがそこらに転がっている。

無鉄砲で無計画なのは、どいつもこいつも一緒なようだ。


「おう、雄輔が一番に起きるとはな」


どうやら寝損ねたらしい一人が、ニヤニヤしながら呟いた。


「どーする?ここも片付けなくちゃだろ?」

「まだ良いさ、みんなもう少し寝たいだろう」

「でも俺、早く帰らないと・・・」

「気にするなよ、用事があるならバックれて構わないぜ。埋め合わせは次の時で十分だ」


そう言ってクリスタルカイザーのボトルを投げて渡してきた。

昨日の酒で乾いた喉に独特の軟水が染み渡る。

わりぃな、と馴染みの悪戯な笑顔を向けると、友人は懐かしそうに眼を細めて笑ってくれた。

ここも間違いなく、雄輔にとって帰ってこれる場所だったのだ。


手早く荷物をまとめ、外の車に向かう。

今日はロングシフトだったので、早めに家に戻って身支度を整えたかった。

今から戻れば、ちゃんとしたベッドで一眠りしてからシャワーを浴びる時間くらいはある。

でもそれ以上に。

出勤前の直樹に会えるかもしれない。そんな期待があったのだ。


運転席に座ったときに、思い出して携帯を取り出した。

宴が始まってから、ずっとポケットに入れっぱなしにしてたのだ。

見てるとメールをどんどん受信してる。

おかしいな、と首を傾げてから、地下にあるタカトシの店が圏外だということを思い出した。

一晩に届いたメールが一挙に押し寄せているというわけか。

それにしても。


『メール受信完了』


そのメッセージを確認してから開く。

ほとんどのメールが直樹からだ。

彼の身に何かあったのかと、嫌な予感を覚えながら最新のメールを開いてみる。


『このメールに気が付いたら返信ください。時間は構いません』


これだけでは意味が通らない。

慌てて遡ってメールを開いていくうちにしたがって、雄輔の困惑は増すばかりだった。

まさか、と思い今度は送信ボックスを開く。

一番上、直樹に送ったはずのメールの横に小さく『送信失敗』の文字が刻まれていた。




―――――マジかよっ!!




携帯を助手席に放り投げると、雄輔は前後の確認もそこそこに車を急発進させた。

噛み締めた奥歯がきしんでる。でもそんなことに気が付く余裕もなかった。


『誰かと一緒で僕からのメールに気が付いてないだけかな?

事故とかじゃなければそれで良いから・・・。』


直樹からのメールが頭の中でぐるぐる回ってる。

どんだけ心配させれば気が済むんだよ、俺は!

自分を罵る想いが、アクセルを強く踏み込ませる。

早く、早く直樹の元に帰りたかった。

一晩、ずっと心配してくれただろう人の元へ・・・。






「・・・あ、っつぅ」


嫌な頭痛が引きずっている。

ダイニングテーブルにつっぷしたまま眠ってしまったようだ。

まだ雄輔が戻ってきた気配はない。

時計を見ればいつもより少しだけ時間が早いことに、ほっと一息つく。


相変わらず食欲が戻ってこないので、先にシャワーを浴びることにして席をたつ。

手足がなんとなく痺れてるようだったが、身体が温まればもとに戻るだろう。

熱めのお湯を頭からかぶり、髪も身体もざっくりと、だけど手ぬかりなく洗い流した。


朝から何も採らないのは良くないので、形ばかりにフルーツとヨーグルトを冷蔵庫から出してくる。

携帯は相変わらず何も受信してないようだ。

雄輔からの連絡が無いことより、悪い知らせが入ってないことに安堵する。


もう行かなくちゃ。


雄輔宛てに簡単なメモを残し、ネクタイを直して玄関に向かう。

忘れ物はないか鞄の中身の最終確認をしながら嘲笑が湧き出てきた。

一緒に暮らして恋人が何の連絡のなく一晩帰ってこなかったのに、当たり前に日常の生活こなしてる自分が浅ましいとさえ思えたのだ。


この程度なのか?僕の気持ちは・・・。


「直樹!」


何が現実なのか、一瞬判別できなかった。

前触れもなく玄関の扉が開き、雄輔が駆け込んできたのだ。

あまりに唐突に、そしてタイミングよく帰ってきた彼に、直樹が真実味を見失ってしまっても仕方あるまい。


「ゆう、ちゃん?」


ああ、良かった。どこも怪我とかしてなさそうだ。

少し顔がむくんでる。やっぱりどこかで飲んでいたに違いない。

なんにせよ、ちゃんとこの部屋に帰ってきてくれたのなら、もう余計な心配はしなくて済む。


複雑な感情を一気にまとめて、直樹はほっと胸を撫で下ろした。


「ノック、ごめん!オレ、昨日はさ・・」

「うん、だいたい想像はつくから、謝らなくても大丈夫だよ。

ボク、もう時間ないから行くけど、雄ちゃんも仕事前にはちゃんとシャワーくらい浴びて行くんだよ」


それじゃ、と足場にその場を去ろうとした直樹の腕を雄輔が掴んで引き留めた。

え?と怪訝な顔で振り返る直樹に、雄輔は困惑よりも切羽詰まった顔を見せる。

彼の表情を見た瞬間、直樹はややこしくなるぞ、とすぐに悟った。

それは雄輔が事態を納得してない時に見せる顔だったからだ。




続く