*フレッシュな新人(ai-kata三人衆)を見てたら、フレッシュな頃の自分に逢いたくなりました。
読み返してみると、あまりにピュアな自分にびっくりです。
たった2年でここまで人(私)は変わるのか・・・。トオイメ(≡ω≡)
そんなわけで、今から2年前の作品ですがお付き合い下さいまし☆
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以下の文面はフィクションです。
実在する人物、団体、組織等とは一切関係がございません。
似てる人が居ても、それは偶然の一致です。
ですので、どっかに通報したりチクったりしないでください★
・・・、頼むよ、マジで (ToT)
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――――――――2008年―――――――――
「ノック♪」
たかが名前を呼ばれただけなのに、
どうしてこんなに嬉しいんだろう。
なんでこんなにうきうきするんだろう。
きっと彼が特別だからだ。
いつでもお日様みたいに輝いて。
周りを明るく照らしてくれる人だから、
笑顔を向けられただけで、
彼のパワーを分けてもらえるんだ。
彼の笑顔を見ていたくて、
困難なときも踏ん張って頑張れた。
彼の隣に居たくって、
無理難題にも答えてきた。
彼と対等でありたいから、
少しばかりの無茶もした。
全部全部、彼と一緒に笑っていたかったから。
ただそれだけだったんだ。
疲れているんだなぁ。
楽屋でネジの切れたおもちゃみたいに寝転ぶ雄輔は、
洒落じゃないくらいの顔色で衣装のまま眠りこけていた。
ドラマ2本抱えて、三人での活動も容赦なくて、
冗談じゃなく、死んだみたいに眠ってる。
そんな動かない寝顔を、
直樹は飽きもせずにずっと眺めていた。
「直樹は本当に雄輔が好きだねぇ」
こちらも、負けずに顔色の悪い剛士が、
煙草を吹かしながら呟いた。
(彼が諸々の理由から禁煙するのは
もう少し後のことである)
「うん、大好き。剛にぃのことも同じくらい好きですよ」
「・・・・ありがと」
そのとき剛士は、なんとも言えない笑い方をしてみせた。
面映いという表現がその笑顔に合うのだけど、
直樹はまだこの言葉を知らない。
ただいろんな気持ちが含まれてるな、とだけ
彼なりに感じていた。
「でもさ、オレへの好きと雄輔への好きには、違う意味が入ってない?」
違う?と直樹は首を傾げる。
だって三人はいつも一緒で、同じで。
特に剛士と雄輔は共通点が多いから、
自分が二人に『違う』対応をしてたなんて考えれなかった。
「オレのコト、どんなふうに好き?」
「剛にぃは凄い人です。歌も絵も上手いし、頼りがいがあるし。
本当に愛妻家で、すっごくお子さんも大事にしてて。
剛にぃが『よっしゃぁ!』って言えば、なんでも大丈夫な気がするんです」
うんうんって、剛士は満足そうに直樹の褒め言葉に聞き入ってる。
たぶんそんなふうにえーとやうーたんの話しを聞いてるんだろうなって、
言いたい事を言い切るまで、黙って慈愛に満ちた目で聞いてくれるんだって思って。
直樹は自分が剛士を『尊敬』しているんだと遠回りに気が付いた。
「じゃ、雄輔はどうなの?」
「雄ちゃんは・・・」
完全に父親目線になっている剛士に、
今更雄輔のことをあれこれ言うのも恥ずかしさがあったけれど。
「一緒にいると、楽しくなります。
雄ちゃんが笑ってると、つられて笑っちゃうっていうか、
雄ちゃんといると、良いことしか見えなくなるんです。
世の中には悪いコトなんて無くて、絶対に未来は輝いてるんだって」
彼がいるだけで、わけもなく心が躍る。
信じる力が生まれてくる。
まるで本物の太陽みたいな、そんな雄ちゃん。
「だよね、雄輔はいつだってまっさらな光の塊みたいなんだ。
眩しくて強烈で、でもどこか手が届かないみたいで。
儚いくらいに尊い存在に見えることがあるよ。
こいつの正体が爆発的なパワーを持ったただのおばかって知ってても」
はじめてだよ、オレの手に余る奴。
そう呟いて、剛士は雄輔の前髪に指を絡めた。
色を抜きすぎてパサ付いた金髪が、剛士の指の間を流れる。
「ちょっとだけさ、初恋に似てない?
恋を知らない頃に体験した、初恋」
剛士の視線は、雄輔を見てるようでもっと遠くを見ていた。
自分が幼い日に見送った淡い恋の思い出を
心に蘇らせているのかも知れない。
そうだね、初恋は。
それが恋だとは知らずに。
ただなんとなくその人の傍に居たくて、
傍に居れるだけで幸せで。
これからどうなりたいとか、
こんな未来にしたいとか全然無くて、
今、一緒に居れることが楽しくて楽しくて
声をかけたり意味無く触れてみたり
そうやって距離が縮まることが嬉しくて
ただ、それだけだったんだ。
「似てる、かも。初恋に。
でもボク、いくら雄ちゃんが好きでもそーゆー趣味はないですよ」
剛士が大きな声で噴出したので、雄輔が起きてしまった。
ねぼけ眼できょとん、としている姿は、
とても年上には見えなくて。
直樹もなんだか笑ってしまった。
ああ、そうだ。
こうしてただ一緒にいるだけで満たされる。
それだけで充分なんだ。
でもね、剛にぃ。
初恋って、
大概は実らないんだよ。
ただ一緒にいれたらそれで良かった。
大好きだったのは笑顔の彼だった。
なのに、たくさん、泣かせてしまった。
ボロボロに泣き崩れる彼に、
何度も何度も
『ごめんね』と『ありがとう』を繰り返して、
その度に彼は
違う違うと首を振っていた。
何が違うのか、全然分からなかったけど、
絶対に『さよなら』だけは言っちゃいけないんだって、
その言葉が一番彼を傷つけるってことだけは
分かっていた。
だから、言わなかった。
これ以上、彼を苦しめる存在になりたくなかったから。
剛士の自慢の新居に招待されたのは、
夏の盛りが過ぎようとしてた頃だった。
静岡のほうに一旦帰ると告げると、
その前に遊びに来いと誘われたのだった。
海から程近いその家で、
久し振りにえーとやうーたんやおーたんと、
そして始めて4番目の姫に会ったのだった。
父親が帰って来てくれたのと
遊び相手のお兄ちゃんを連れてきてくれたことで
子供達は大はしゃぎだった。
強請られるままに抱っこすると、
思っていたよりもずっと重たくなっていて、
子供の成長って早いなと感心してしまったり、
剛士と奥方のささやかなやりとりに、
いつか自分もあんなふうに
互いを労われる夫婦になりたいなと思ったり、
直樹がすっかりとその浜辺の家に溶け込んだ頃、
剛士は彼を自分の新しい秘密基地に招いてくれた。
相変わらず彼の多才な趣味の道具で埋め尽くされた部屋は
雑然としているようで、どこか整って見えた。
きっと剛士の感性で物が統一されているからだろう。
物珍しげに室内を物色していると、
剛士にメインのパソコンの前に座るように促された。
起動した画面に、ひとつのフォルダが表示される。
「これね、雄輔がオレに送ってきたメール。
こっちに移してまとめておいたんだ。
中には紳助さんや神原のパパから転送されたのも入ってる」
それをなんでボクに?
不審げに剛士の顔を見上げると、
いつか見た慈愛に満ちた父親のような顔で、
穏やかでいとおしげで、だけどどこか寂しげな笑顔で、
直樹に大切なことを教えてくれた。
「全部ね、直樹のコトなの。
雄輔がお前を心配して書いてきたメールばっかりなの」
驚いて画面に目を戻すと、
剛士がフォルダを開いてくれた。
たくさんのメールがそこに詰まっていて、
どこを見ても
ノック、ノックって書いてあった。
「雄ちゃん・・・」
手が震える。
全然本文が読めないのに、涙が溢れる。
ここに居ない雄輔のあったかさに
包まれているみたいだった。
「時間、いくらかかってもいいからゆっくり読みな。
オレは外に出てるから」
ぽんと一つ直樹の肩を叩いて、
剛士は静かに部屋を出た。
待ち構えていたようなミキと目が合って、
どちらからともなく苦笑いが漏れる。
「見せたの、あのメール」
「うん、あれは雄輔から直樹へのラブレターみたいなもんだからね」
「今見せるのはかえって可哀想なんじゃない?」
「良いんだよ。あれを読んだら絶対に直樹は帰って来なくちゃいけなくなる。
そのくらい雄輔に想われてるんだって、知っておくべきなんだ」
するとミキがくすっと笑った。
「そうね。じゃ、私が直樹君に
つるちゃんも直樹君を大好きよって教えてあげなくちゃ」
余計なことしないでください。
なんて剛士が言えるわけもなく、
ただクチを尖らせて抗議するのが精一杯だった。
零れてくる涙を避けながら、
直樹はひとつひとつの単語を噛み締めるように
雄輔のメールを読み進めていた。
いつも、ブログで見せてるのとは違う、
彼の、飾りっけなしの本気の言葉。
誰かを励まそうとか、
何かを伝えようとか、
そんな前向きな物ではなく
ただただ、我侭なほどの裸の気持ちを
そこに書き綴っていた。
本当だね、剛にぃ。
まるで初恋だよ。
大事で大切で、
近寄りたくて仕方ないのに、
どうして良いか分からない。
手を伸ばして触れるだけで
その声を聞けるだけで
誰よりも自分は幸せなのだと
思うことが出来た。
思い出すだけで
胸が締め付けられるほど切なく、
現実を忘れてしまうほど甘く、
そして忘れることなど出来ないくらい
強烈に心に焼き付けられていた。
『どうしたら、あいつとずっと一緒に居れるの?
オレは別に何か欲しいわけじゃない。
ううん、なんにもいらない。
持ってるもの、許されてるもの、全部捨てて構わない
ただ、ノックと笑いあっていたいだけなんだ
あいつのホントの笑顔を、
もう一回取り戻したいだけなんだ』
耐え切れず、画面に縋るように泣き崩れた。
雄輔はいつだって、直樹の前では笑ってくれてた。
直樹が余計な心配をしないようにって、
いつもの元気なお日様みたいな雄輔でいてくれた。
本当は、こんなに
胸が引き裂かれるくらい
苦しんでいてくれてたのに・・・。
『オレはノックといつまでも一緒に居たい。
それだけなんだよ』
ごめん、雄ちゃん。ごめんね。
絶対に帰って来るから。
本当のボクを取り戻して、
雄ちゃんの、みんなのところに帰るから。
だから、少しだけ待っていて。
絶対に、絶対に帰って来るから。
絶対に・・・・。
「今頃泣いてるわよ、直樹君」
「たぶんそーだろーねー」
「つるちゃんってこんなにズルい人だったっけ?
自分が言いたいこと、全部雄輔くんにひっかけちゃって。
雄輔くんが送ってきたメールと同じくらい、
つるちゃんだって直樹君を心配したメールを返信してたじゃない」
「ミキちゃん、それ絶対に内緒ですよ。
オレまでそんなんしてたって知ったら、逆に直樹を追い詰めちゃうから。
ユースケ一人の愛情を受け止めるだけで、今の直樹には精一杯でしょ」
どーせ、直樹がキチンと戻ってきたら雄輔がバラすに決まってる。
だから今はアニキの立場で、暖かく見守ってる役で充分だ。
「オレはね、直樹が挫けないで戻ってきて、そんで、
雄輔がまたお日様みたいに笑ってくれたら、それで満足なの」
まだこの先は分からない。
だけど剛士には見えていた。
『ただいま』って気の抜けた笑顔の直樹が言う。
条件反射みたいに、雄輔が飛びついて力一杯抱き締める。
大丈夫、見えてる。
見えてるもんは現実になる。
まだきっと、直樹は泣き続けているだろう。
雄輔もどこかで踏ん張って戦ってるだろう。
全ては明日を手に入れるための試練だ。
乗り越えれるだけの力を二人は持っている。
その胸にある
初恋に似た想いが
二人を支えているから・・・・。
―――――2010年6月――――――
いろんな制約が絡む中、それでも直樹は小さな舞台に立てるところまできていた。
生の舞台では経験の浅い彼を、心から励まし支えてくれる仲間にも恵まれ、
失敗したり躓きながらも、どうにか千秋楽までこぎつけた。
新しいスタートを切った姿を剛士や雄輔にも見て欲しかったが、二人にそんな時間の余裕はなかったし、
有名すぎる彼らを、この小さな劇場に招待するには問題が多すぎる。
それに直樹はまだ二人に何のお返しも約束も出来ない状態だった。
合わせる顔がない。そんな想いばかりが胸の底に蟠っていた。
最後の公演が終わったからと言って余韻に浸る間もなく、
自分達で会場や楽屋の後片付けをしなくてはいけない。
何でもスタッフが準備してくれて当たり前だったなんて、甘やかされていたんだなぁ、と、
感慨深くなりながら、初日よりも増えた荷物をまとめ始める。
そんな作業に追われながらも、千秋楽の興奮は抑えきれるわけもなく、
あっちこっちで勃発する撮影会に混ざろうと携帯に手を伸ばしたときだった。
~~♪~~
その手の中で一通のメールを受信する。
見ていたのかと思うようなタイミングに驚きながらも、
この人ならこのくらいのミラクルは簡単にやってしまうかと苦笑を浮かべて携帯を開いた。
沢山溜まっていた受信メール。
その一番上に輝く雄輔の名前。
『おつかれ!』とタイトルの付いたメールを開くと、短く、だけど彼らしい一文が刻まれていた。
『大変よくがんばりました☆v(^-^)v』
まだ何も話してないのにね。報告一つしてないのに、全部お見通しなんだ。
ふっ・・・、と直樹の口元に柔らかい笑みが浮かぶ。
頑張ったよ、まだまだみんなのレベルには追いつけてないけど、
出来るコト、持てる力、全部振り絞って頑張ったよ。
あまりに不甲斐無い自分にぶち当たって、もっと凹みそうになったけど、
それでも踏ん張って最後まで遣り遂げたよ。
いつか雄ちゃんの隣へ帰れたときに、胸張って笑っていてる自分であるために・・・。
「ちょっと、ノク!ナニ携帯見て動き止ってるの!?」
「メール?誰から??すっごく顔が緩んでるんですけど!!」
ニヤニヤと笑っている仲間たちの眼に、どんな顔をした自分が映っていただろう。
もしかしたら、みんなが知らない顔をしていたのかも知れない。
直樹は群がる仲間の期待に応えるような返事をしてみた。
「んん~~、初恋の人からだよ♪」
含み笑いでそう言うと、みんなが一斉に冷やかしの声をあげた。
中身を見せろ!と手を伸ばしてくる奴までいる。
ダメダメって逃げながら騒いでいたら、案の定、
『騒いでないで早く片付けなさい!』って怒鳴られてしまった。
雄ちゃん、剛にぃ、僕はこんなに元気にやってるよ。
皆の前にいつになった帰れるか分からないけれど、もしかしたらもう帰れないかも知れないけれど、
ちゃんと自分のしたかったことに真正面から取り組んで、一生懸命に生きてるよ。
今度逢ったら話したい事が沢山、伝えたい事が山ほど溜まっているから、覚悟して待っていてね。
昔みたいに、一晩明かしてとことん付き合ってもらうから。
そんな日が、きっと、もうすぐ来るよね・・・?
ねえ、剛にぃ、雄ちゃん。
終わり
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最後だけ付け足してみました☆
もうこんなピュアな話、と言うよりは、こんなカワイコちゃんな野久保さんは書けません・・・。
野久保さんが無事に舞台で復帰して、冷静になって、どんだけ自分が夢見てたか思い知りました。
悪い意味でなくてね、現実を直視してたら彼もイイトシの男になっていたってことです。
髭までさらしてくれてよーー(泣)
本当はブログを始めた7月26日に再放送しようかと思ったのですが、そのころは『エンドレス』真っ只中だったので、初日前日にアップするように設定しておきます。
再放送ばっかりでごめんね~~。