(再)お台場戦隊 ヘキサレンジャー【episod ZERO】+α | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

逢海司の「明日に向かって撃て!」

ご注意下さい!!私のブログは『愛』と『毒舌』と『突っ込み』と『妄想』で出来上がってます!!記事を読む前に覚悟を決めてくださいね(^^;。よろしくお願いします☆

 目覚ましが鳴るのと殆ど同時に、直樹はけたたましく成り立てるベルを止めた。

 昨日の急な引越し作業の名残で、身体には疲労感が残っている。

 鍛えていたつもりでも、こういったイレギュラーな運動には弱いものだ。


 だるさが残る体を引き摺って起き上がり、昨晩のうちに用意しておいた服に着替える。

 慣れない部屋での生活。腕にはごっつい変身ブレスが取り付けてある。

 自分の運命は大きく変わったのだと思い知る第一歩でもあった。


 よく分からない正義の味方集団に就職(ちょっと違う)してしまった直樹は、

 その秘密基地の一部に設置されている居住区に入るように言い渡された。

 何時出動指令が出るか分からないし、敵に狙われるかもしれない。

 基地内で生活してくれたほうが、管理がしやすいというのがその理由だった。


 命の保障はないが、衣食住の確保は約束された。

 お給料も出るらしい。

 このご時勢で優遇された環境なんだか、劣悪な職場に入ってしまったのか、

 最終的判断をするには材料が不足していた。


 まあ、同僚は面白そうな人が揃っているけど。


 自分が寝ていたベッドを振り返ると、そこにはまだ夢の世界を彷徨っている小さな男の子がいた。

 直樹の隠し子、ではない。

 貰った早々、変身ブレスで遊んだ結果、元の姿に戻れなくなった上地雄輔である。

 

 暗証番号の打ち込みエラーで機能を停止したしまった変身ブレスは、

 ただいま研究所に持ち帰られて再起させるための調整をしている。

 思ったよりも繊細な機械らしく、戻ってくるには少し時間がかかるそうだ。


 「雄ちゃん、朝ごはん食べに行くよ」


 優しく声をかけると、彼は『ご飯』という単語に反応して目を開けた。

 それでもまだ寝ぼけていて、視線がうろうろと彷徨っている。

 起きるのに手を貸してあげようとすると、縋るように腕を伸ばしてくるので、

 そのままよいしょ、と抱きかかえて起こしてあげた。


「大丈夫?起きれる?」

「んん~、ノク、おはよぉ」


 目を擦りながらむにむにと何か呟く。

 まだ半分寝てるな~と苦笑を浮かべながら、抱っこしたままで食堂に向かった。

 きっと食べ物を前にしたらしっかり覚醒するだろうから。


 雄輔も直樹と同じくこの基地への引越しを余儀なくされたのだが、

 小さな身体で慣れない場所の生活は不便だし危険だろうというので、

 成行き上、直樹が面倒をみることになってしまっていた。

 中身は元のさたちの雄輔のままなのはずなのだが、本物の子供といるようにしか思えない。

 思わず直樹が『雄ちゃん』なんて可愛らしい愛称を付けてしまったのも理解して頂けるだろう。


 食堂には朝ごはん定食A・Bがトレイに乗って並べられていた。

 みんなそれぞれに好みのトレイを持って適当な席に座っている。


「雄ちゃんは焼き魚と煮魚とどっちが良い?」

「俺は今日は煮魚~ (=^▽^=) 」


 煮付けの甘辛な香りに覚醒したのか、鰈の味噌煮のトレイを選んで取り上げる。

 直樹は朝なのでさっぱりしたシャケの切り身にした。

 ゆっくり歩く直樹を先導するように空いてる席を探していた雄輔が、

テーブルの脇まで来て、動きをピタっと止めて直樹が追いつくのを恨めしそうに待ってる。


「置けない・・・」


 テーブルが高すぎて、雄輔の朝ごはんが乗ったトレイを上手に置くことが難しいのだ。

 ああ、とにっこり笑って、直樹は自分のトレイを置いた隣に、雄輔のトレイを並べて置いた。

 それから、雄輔のために子供用の高い椅子を食堂の端っこから借りてきて、

雄輔を抱き上げて座らせてあげる。

 普通の男子なら恥ずかしがるが、雄輔は世話を焼いてもらうのが嬉しいみたいに

されるがままになって直樹に甘えてる。

 どーみても、幼稚園児と引率の保父さんだ。

 間違ってもこれから世界平和のために戦う仲間には見えない。


「あー、雄輔とナオタン、みっけ!」

「まだ小さいままなんだぁ。のくぼっちも大変だね~」

「ユースケは小さいからってのっくんに甘えすぎよ。しっかりしなさい」


 揃ってやってきたのは、日本食なんて似合わなそうなPaboさんたちである。

 (もちろん、彼女達だって食事は同じメニューだ)

 彼女達は許可も挨拶も無く同じテーブルにバンバンと自分らの食事を置くと、

お子様な姿のままの雄輔を物珍しそうに弄くり始めた。


「いや~ん、ほっぺ、ふにふに~」

「髪の色ってそのままなんだ」

「やっぱり子供の肌って、張りと艶が全然違うわね~」

「お前ら!おれはおもちゃじゃねぇって!気安く障んなよっ」

「「「いーじゃん♪」」」


 女の子達にモテモテでも、あれは嬉しくないな~と、一人冷静に眺める直樹だった。

 しかし、

 何時の間に彼女達にあだ名をつけられたのだろう・・・?

 (雄輔なんてもう呼び捨てだし(-"-;))







「それでですね、身体が小さくなってしまったのは仕方ないとして、なんの冗談なのかな、

そこの二人は」


 朝食後、これからの説明があるからと新人二人を会議室に呼び出したのは良いのだが、
そのふざけた態度に剛士は怒る気力も失いそうだった。

 指示された椅子に座る直樹、の膝の上にちょこんと雄輔が乗っかっているのだ。

 これから、真剣に世界平和の話をするようには到底見えない。


「ここの椅子、低いしクッションが柔らかいから、普通に座ると雄ちゃんが椅子に埋まっちゃって、

テーブルから顔が出ないんですよ。だからボクの膝の上に避難してもらいました(o^冖^o)」


 どーやら直樹は。

 先日の膝枕事件以来、なにかが吹っ切れてしまったらしい。

 そんな直樹の成長に(?)、思わず目頭が熱くなる剛士だった。


「サッキー、あのバカの変身ブレス、いつ戻ってくるの?」

「まだ2~3日かかります。赤信号研究所の博士たちも変身ブレスの増産改良に追われていて

ここのところオーバーワークで疲れてましたから、すぐには難しいですね」

「あーそう (T▽T;)モウヤダ。時間が空いたらサッキーも手伝ってあげて」


 おれ、あんな奴らの姿見てたら戦闘意欲失くすよ。

 挫けて肩を落とす剛士なんて気にせず、キャピキャピといちゃつく雄輔と直樹だった・・・。


「とにかく、いろんな説明するから資料を見て」


 これ以上の精神的ダメージを受ける前に話を進めようと、剛士が本題を切り出した。

 雄輔も直樹も年齢的には立派な大人なので、真面目な顔になって資料を手に取る。

 良かった、どうやら話はまともに出来そうだ。

 剛士はほっと胸を撫で下ろした、そのときだった。


 基地内にけたたましく警報が鳴り響き、エマージェンシーを知らせるランプが一斉に点灯を始めた。

 

「何事だ!」


 すぐさまモニターを外部用に切り替えた崎本が、素早く情報を招集し管制官と連絡をとる。

 さっきまでヘタレていた剛士の顔に、刺す様な厳しさと緊迫感が走った。 

 初めての目の当たりにする事態に、直樹と雄輔の表情も強張る。


 まさか、これは。


「緊急事態発生!目黒区碑文谷に悪の組織の一派、アンガ・ルーズが来襲したもよう!

 ヘキサレンジャーの出動要請が正式に下りました!」


 崎本のオペレーション内容に、一瞬直樹と雄輔は顔を見合わせた。

 まだ二人はなんのレクチャーも受けていない。

 それどころか、雄輔は子供のままで変身ブレスも無いような状態だ。

 どうやって悪の組織と戦えって言うのだろうか・・・。


「あんだよ、アンガかぁ。面倒なのが来ちまったな」

「どうしますか?つるのさんが一人で行くには厳しいと思いますが」

「ちょーーっと、待ったぁ!」


 この事態に颯爽と登場したのは、あの派手はPaboさんたちだった。


「うちらだって『お台場戦隊 ヘキサレンジャー』の一員だよ」

「アンガの二人くらい、私たちで充分だって♪」

「そうですぅ。たけパパは少し休んでください~~」


「・・・・・(-"-;)、どうしますか、つるのさん。ちなみに最高責任者の紳助さんは沖縄に帰ってますが」

「えぇ~っ。決定権、俺が持ってんのぉ?」


 金髪の、少し草臥れかけた髪をかき乱しながら、小さくなった雄輔と、雄輔の保護者みたいな直樹、

そしてヤル気満々のPaboの三人を見渡して、最後に不貞腐れた顔の崎本と目を合わせた。

 ため息をついたのは、自分が先だったか崎本が先だったのか・・・。


「分かった、今回はPaboちゃんたちに行ってもらいましょう。

 ただし、絶対に無茶しちゃ駄目だよ!いいね!!」


「「「わーーーい!(ノ^^)八(^▽^)八(^^ )ノ☆」」」


「だから!遊びに行くんじゃないんだからっ!!」


 剛士の心配なんて何処吹く風。

 Paboの三人は足取りも軽く出動して行ったのであった。





次回 【お台場戦隊 ヘキサレンジャー】『Pabo,戦う!!』


お楽しみに!(〃^∇^)o