お台場戦隊 ヘキサレンジャー【第四の男】 | 逢海司の「明日に向かって撃て!」

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ご注意下さい!!私のブログは『愛』と『毒舌』と『突っ込み』と『妄想』で出来上がってます!!記事を読む前に覚悟を決めてくださいね(^^;。よろしくお願いします☆

第一話『起』



引き摺るほどの長いマントを翻し立ち構える直樹の周囲に

不吉な黒い装束を纏った幾人もの『敵』が次々と出現する。

完全に取り囲まれた彼は、腰に装備してある電子ブレードを手にした。

起動してない状態ではグリップのみの姿をしているが、戦闘時にはレーザータイプの剣身を発動させてサーベルの形に完成させる。

某有名映画の『ライセイバー』を想像してもらえれば近いだろう。

ちなみにこのグリップに付属パーツを取り付けてレーザービーム銃としての使用も可能だ。


じわじわと距離を縮める敵を前に、直樹は青い光を放つブレードを起動させた。

顔の前に構える剣の光が、直樹を青白く照らす。



『右前方45度、動きます!』



崎本の指令が、メットに内蔵されたマイクから直接耳元に響く。

彼の言葉に従って直樹は右前方に踏み込み、目の前の敵を一刀した。

ざっと消えてなくなる敵の姿。



『そのまま左を倒して、直後に右ターン。後方の敵に対処してください』



ひとつ敵を倒したからと安心は出来ない。

次々と襲い掛かる敵に、崎本の指示通りに動いても追いつけない。

それどころか続けざまの指示に頭と動きが一致せずに混乱する。



『ちがう!そっちに避けたら敵が!!』



崎本の助言も間に合わなかった。

振りかぶった敵の大きな鋼の刃が、容赦なく直樹に襲い掛かる。

咄嗟に攻撃をかけることも身を交わすことも出来ず、思わず直樹は

硬直したままで目を閉じてしまった。


周囲が一瞬にして真っ暗になる。

そして。




『はい、直ちゃんゲームオーバー』




コンクリで囲まれた部屋に、剛士の声が響いた。

白熱灯の光にさらされた部屋で、直樹が罰が悪そうに指令ルームを見上げる。

指示を出していた崎本が呆れたように頭を抱えていた。


地下に作られたシュミレータールーム。

ここで実戦経験の無い直樹や雄輔は、近く始まる戦いに向けての特訓を受けていた。




「野久保さん、これで何回死んだと思ってるんですか」


「ごめんごめん、崎本くんの指示通りに動こうとは頑張ってるんだけどね」


「いずれはご自分の判断だけで戦ってもらわなくちゃいけないのに、


自分から敵に突っ込んでどうするんですか?」



崎本のお小言は、年下のわりにきつい ・イジイジ( ´・ω・`)σ"

(命と世界平和が掛かっているんだからそれも当然なのだが)



「仕方ないな、お兄ちゃんがお手本を見せてあげよう。


雄輔、お前が好きなように演習プログラム組んでいいから、


オレが下に下りるまでにセットしておいて」




オレ?と雄輔は驚いたようにしていたが、こんな大掛かりな『おもちゃ』を弄くれる

機会はあまりないので、崎本に使い方を教わりながら好きにプログラムしていった。

剛士が困っちゃうようなのがいいな~、なんて、遊び心を含ませながら。




「おーい、準備はいいかぁ?」



実演場に着いた剛士に向って、雄輔は特大の笑顔で『○』と示した。

全く、何が楽しいのだかと、崎本が指令用のインカムをつけてブースに入る。



「はじめるよ♪」



雄輔の言葉と共に、先程の直樹のときと同じように複数の敵が出現にした。

新たにプログラムを組み合わせているので、どんな動きでくるのかは剛士も崎本も知らない。

実践に近い状況での二人の対応を見れるわけだ。



『動きます、まずは目の前から左、右で攻撃。左に一身避けてからさらに前進左です』



崎本の早き指令にも遅れず、いや、指令が下るのとほぼ同時に剛士が動く。

軽やかに的確に相手の攻撃を交わし撃退していく様は、まるで剣舞でも見ているようだ。




『右ターンで一歩退いてから左30度、正面、右60度。さらにターン、隙間を抜けてください』


『そのまま敵が来るのを順に。左90度注意して。後ろはノーガードで大丈夫です』


『一歩寄ってから屈んで、下から切り上げて前進、右に固まっています』



剛士の動きもさることながら、崎本の完璧な指令に直樹も雄輔も感服して言葉が出ない。

彼の判断が完璧だからこそ、剛士も疑いもせずに指示されたとおりに動けるのだ。



『ラスト、大物です。先に脚を打って動きを封じて、避けた右から入ってください』



剛士の動きは、ほとんど崎本の声に添って行われている。

まるでそれは音声コントロールされるゲームのキャラクターのように忠実で、

正確さと迅速さ、そして二人の間の絆を見せ付けているようだった。


最後の敵を横っ腹から切り倒しすと、部屋のライトがオールアップされた。

打ちっぱなしのコンクリの壁に照明が反射して眩しいくらいだ。



「つーのさん、すっげー!」



パタパタと子犬のように、人懐こい笑顔で雄輔が剛士に近づく。

もちろん隣には感服しきりといった表情の直樹も居る。

ちょっと苦笑いした剛士の目の前に、当たり前のように二人が並んだ。


上から眺める崎本の視線は冷めている。

侮蔑、と言っても良いくらいに冷ややかだった。

そんな彼の視線の意味を知ってか知らずか、剛士は煌々と光を放つブレードを握る手に力を篭める。


わずかに、雄輔が首を傾げた瞬間だった。


大きく振りかぶられた剛士の電子ブレードが、無防備な二人を一刀両断したのは。







続く。