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クロヤギ頭の読まず買い

ちまちまと進まない読書をしつつ、本を買うのは止められない。

こんなに買っていつ読むん?と自分に一人ツッコミを入れつつ日々を暮らす不良主婦の読書(購入)記録ブログ

欲しい (集英社文庫)/永井 するみ

¥680
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先日ふわっと微かに金木犀の香りが漂ったかと思えば、すでに濃厚な香りが道々に溢れる季節になりました。

三連休が済んで今日から出勤という方も多いでしょうが、私は土日と出勤で昨日今日と連休。

子どもも夫も出かけた後ののんびりした時間を楽しんでいます。

これは珍しく買ってすぐ読んだはずなのですが、読書メーターで日付を見ると8月28日…

当分、こんなのんびりペースの更新でお許しをば。


主人公はある人材派遣会社の女社長・紀ノ川由希子。

取引先の男性・久原と不倫関係にありますが、情事の後自宅に戻る男への満たされない想いをお気に入りの派遣ホスト・テルと過ごすことで埋めています。

久原の勤める取引先に派遣したばかりの若い女性・槙ありさの勤務中に別れた夫が金の無心に現れ、離婚して娘を育てながら働く彼女に同情した由希子は力になろうと心を砕き、久原やただの客として以上に由希子に尽くすテルに、彼女とそのいかにも女好きのする元夫・優也の働き口のことを相談してみたりするのですが、ありさ本人は会社に迷惑がかかるという理由で派遣登録を解除する意向を変えません。

やがて久原は急にありさに関心を示し始め、ストーカーまがいの行為の後、死亡する事件が。

久原はあるサイトを通じて「ありさ」とメールのやり取りをしていたとわかるのですが…


事件らしい事件は久原の事故死のみ。

時に他の登場人物に視点を変えた語りの中で描かれる、人の心の負の部分が主眼。

自分の住む街のどこかにいそうな登場人物が、現代の世相の中で、善悪の境界線も曖昧に心の欲するまま生きている…そんなリアルさが魅力。

象徴的なタイトルもうまいですね。


さて、天気も爽やかで夕食まで特に予定のない自由な休日。

今日は何をして過ごそうかなぁ♪
NOVA 2---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)/東 浩紀

¥998
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これも先月盆前あたりに読んだはず…、すっかり放置していて今頃記事にしています。

日本のSFアンソロジーって今までにあまり読んだ記憶がないのですが、SF作家というイメージのない方から未知の作家さんもいて、楽しい本でした。


SFらしい2編「かくも無数の悲鳴」(神林長平)「バベルの牢獄」(法月綸太郎)、少年の異次元体験を描いた「レンズマンの子供」(小路幸也)、視覚に訴える世界と地図の小説の枠に嵌らないショートメッセージ「夕陽にゆうくりなき声満ちて風」(倉田タカシ)、内田百けんとブローディガンの同名の作品にひっかけたといういつの時代とも判然しない東京を描いたヨコ書の日記形式で綴られる「東京の日記」(恩田陸)、奇妙なショート・ショート集「てのひら宇宙譚」(田辺青蛙)、翻訳ミステリーのような雰囲気の「衝突」(曽根圭介)、未来の火星での少年らしい痛みの伴ったボーイ・ミーツ・ガールスストーリー「クリュセの魚」(東浩紀)、ジャンルを超えて宮部みゆきらしい「聖痕」、淡々と語られながら後を引く印象の「行列(プロセッション)」(西崎憲)などなど…。

SF読みじゃない本読みが構えなくても気軽に読め、しかも面白い。

また是非そのうち『NOVA1』の方も読んでみたいですね。

●神林長平「かくも無数の悲鳴」
●小路幸也「レンズマンの子供」
●法月綸太郎「バベルの牢獄」
●倉田タカシ「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」
●恩田陸「東京の日記」
●田辺青蛙「てのひら宇宙譚」
●曽根圭介「衝突」
●東浩紀「クリュセの魚」
●新城カズマ「マトリカレント」
●津原泰水「五色の舟」
●西崎憲「行列(プロセッション)」

最近SF読みじゃないどころか、本読みでもなくなってきてるので、体力気力を充実させてせめて本読みの端くれに入れてもらえるように頑張ります(^^ゞ
肝、焼ける/朝倉 かすみ
(2005)
¥1,575
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文庫も出ているようですが、古本なら単行本のが安かったので購入。

期待の新人だとかそんなコメントをおぼろげに見た記憶があったのと、最初にさらっと作品を読んだ感じやペンネームのイメージから、もっと若い人かと思っていましたが、1960年北海道生まれの女性だそうです。

肝、焼ける
一番下の妹
春季カタル
コマドリさんのこと
一入  ※(ひとしお)

5話が収録された短編集。


表題作は、北海道に転勤になった年下の恋人と遠距離恋愛中の三十路に差し掛かった女性が主人公。

煮え切らない彼氏の言動に「肝、焼ける」想いを抱きながら、連絡もせずに訪ねた北の街。

聞きなれない方言で語り合う初めて会う街の人たちに、旅人の気安さからか彼氏本人には言えない想いやらを何気に話すうちに彼女のもやもやした想いは次第に形を定めていきます。


どの作品ももうそれほど若いとは言えない女性の日常を、その人を取り巻く近しい人々との関わりのなかで描いたものですが、三人しかいない職場の女性の元旦那が他の先輩の現恋人でその板挟みになるという勘弁してよ~って状況の物語(「一番下の妹」)なんかもギトギトせずに読ませてくれる文章力はさすが。

登場する女性たちはそれぞれに迷ったり傷つくことを怖れたりしながらも潔いのです。


次は吉川英治文学賞受賞作のこれを読んでみようかしら。


田村はまだか/朝倉 かすみ

¥1,575
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めぐらし屋 (新潮文庫)/堀江 敏幸
(2010.6)
¥420
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いい本ですよ、これ。

ちょうどお盆前に帰省した時に連れて帰ったのですが、途中まで読んで惚れこんでしまい、今はさいたまに住む友だちと一年ぶりに食事をする機会があった時につい「これ面白いから読む?」と読みかけの本を渡してしまいました。

トーゼン私も続きを読みたいもんで買いなおそうとしたのですが、実家への途中の本屋には無く、結局後で買い物に出た70も半ばを過ぎた父にお願いして買ってきてもらうことに。

いい歳をした娘ですが、やはり父親は娘に甘い?

ま、うちの父も本屋は大好きなのでいいことにいたしませう。

そういえば父にこの前押し売りした荒山徹を持って帰ってくるのを忘れてしまいましたが。


さてさて、そういうこの本も父と娘の物語。

離れて暮らしていた父親が亡くなってしばらく後、整理のつもりで訪ねた父の部屋で見つけた1冊のノート。

そこには「めぐらし屋」の文字と、蕗子さんが小学生の時に書いた傘の絵が貼り付けてありました。

そこにかかってきた1本の電話…そんな偶然から亡き父の自分の知らない横顔を知ることになります。

母親には性格が父親に似ていると言われていた彼女は、やがて父の始めた「めぐらし屋」を引き継ぐことになるのですが、これ以上は詳しく言いますまい。

ドキドキハラハラの物語もいいですが、主人公を巡る人々の小さなエピソードのひとつひとつがじんわりと心に沁み、行間に流れる空気が愛しくなる、そんな類の物語です。

ミステリ好きもノンフィクション好きも、たまにはこんな本をいかがでしょうか。
みなさん、さようなら (幻冬舎文庫)/久保寺 健彦
(2010.8)
¥760
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久しぶりに家でゆっくりできる休みがあったので、前日買った本を珍しくすぐに読んでみました。


ある日を境に19棟ある団地の敷地内から出られなくなった少年・悟。

大人たちには胡散臭く思われていた彼ですが、毎日団地内をパトロールして小学校時代の同級生の無事を確認する習慣と学校へ行かない(行けない)ことを除けば、大山倍達という武道家に憧れて団地内コミセンのトレーニングルームなどで体を鍛え、本を読み映画を観て、包丁を握れないまま就職した団地内のケーキ屋では師匠にも恵まれ、団地内に住む友人と友情を育み、性に目覚め恋愛もして、看護士として忙しく働く母親"ヒーさん"に見守られながら逞しく成長していきます。

やがて小学校の同級生たちも大人になってほとんどが団地を去り、団地も様変わりしていくのですが…。


極端に狭い世界の中で送る悟の生活のなんと波瀾万丈なことか。

解説は香山二三郎さん。

ツクツクボウシの鳴く夏の終わりにこんな青春小説の変化球、いいですなぁ。