- 山のぼりおり/石田 千
(2008 山と渓谷社) - ¥1,890
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美容室に行くと、(読みかけの本も持っていきますが)普段は買わないので雑誌を舐めるように読んでみたり、会社に届くフリーペーパーなんかも面白そうなモノはざらっと目を通します。
どの雑誌かも忘れてしまいましたが、そんな中で紹介されていて惹かれた本を1冊買ってみました。
これも出会いですか。
そんなおぼろげな記憶だけで、著者の年齢も略歴も知らず読み始め、少し読んだところで見返してみると、生年月日と卒業した大学と、出版された作品と俳号。
私より少し年下の女性で、小説を書き俳句を詠むひとだということはわかりました。
これは著者が三年かけて十の山を登り、それぞれいついて書いたエッセイに、一緒に登った写真家・坂本真典さんのモノクロ写真が挟まれています。
著者の中から湧き出てくるのか、ひとつひとつ試行錯誤の上選んだ言葉か、短く切った俳人らしい感性を感じる文章と言葉の波に心をゆだねて、描き出される風景と、出逢った山と生き物たちと人の言葉と。
お酒とラーメンとドラ焼きとお風呂の好きな普通のひとのようです。そしてきっと何より人や木や花を含む「生き物」が好きなひと、かな。
昆虫の顔をテレビのキャラクターに喩えてみたり、ときどきくすっと笑わせてもくれます。
何が書いてあったかというより、山に登ってみたくなる本です。
そんな山の中で出逢った温かいひとやいつもと違う自分や何かの答えや、そんな山で見つけた何かを持ってまた自分を待つ日常に戻ってきたくなる、そんな本です。