「時ひらく」 | ちび子

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本好き猫 ちび子

母ちゃんが娘の頃。日曜日の朝、誰も居ない街中のあのデパートの前に鎮座したライオンに勢い飛び付き跨ろうとし、友達に引きずり降ろされた経験がある。あの時にもし跨っていたら、今頃母ちゃんは願いが叶って億万長者だったかも知れないとこの本を読んでから ちらっ と思ったりしている。

         

表紙のデザインは三越の「華ひらく」の包装紙と同じである。本屋でこれを見た時に、なんじゃこりゃ 酷いパクリだなと持ったが、何の事はない、このアンソロジー「時ひらく」に載っている短編全て三越が舞台になっているのだ(少なくとも必ず三越に関係している)。著者は辻村深月、伊坂幸太郎、阿川佐和子、奥田陸、柚木麻子、東野圭吾でFTっぽいのやSFやミステリやいろいろだった。著者の名前を見てきっとこんな話だろうなと想像すれば、大体そんな話だったって感じである。

トリの東野圭吾は冒頭から湯川学が登場(TVドラマで福山雅治主演のイメージが付いて話の方のガリレオも何だかかっこいい感じになってしまったが、俺としては元々の佐野史郎の方が好きである)。三越が舞台の話の筈なのになぁと思いながらと読み進めると、ずるずると世界観に引き込まれてしまった。美味いなあ東野圭吾。

アンソロジーは大抵こいつの作品は口に合わなかったなってのが混ざるんだが、今回のこの本は今までに読んだ事のある人ばっかりの作品だっただけに、安心して読了する事が出来、序に腹いっぱい気分を味わえた。

三越前のライオンに跨ると願いが叶うという話を何人かの著者も取り上げている。この本を読んだ後だと尚更跨りに行きたい気分になったなぁ。