フランソワ・アンリ・ピノー氏のケーリング社と言ってぴんと来るのはあなたがラグジュアリーやファッションブランド、または投資や金融に関わる仕事をしているからではないでしょうか?

では、イヴ・サンローラン、バレンシアガ、グッチやボッテガベネ、等のハイブランドを傘下に持つ会社といえばすぐに解りますよね。

そう、今のヨーロッパのラグジュアリーは、ルイ・ヴィトンやディオール、ティファニー、ショーメやブルガリ、等を傘下に持つLVMH(モエエヘネシー・ルイヴィトン)社とケーリング社に支えられているのです。

 

今回、9月の第3週末に毎年開催されるヨーロッパ遺産の日に合わせて、

このケーリング社の本社がオープンされ、ピノー財団(Mr.ピノーが現代アートのコレクションを支援する目的でつくった)のコレクションと「身に纏えるアート」であるバレンシアガのアーカイブを展示する展覧会が開催されました。この週末だけの無料展示だったので、もちろん長蛇の列が作られていましたが、お陰様で本当に素晴らしい展示を観ることができました。エリゼ宮訪問の抽選にははずれてしまったけど、その残念な気持ちを腐食してぐぐっと気分を高揚させてくれる幸せな時間を過ごすことができました。

 

ケーリングの本社は、パリ左岸、7区のデパート、ボンマルシェからほど近い場所にあります。ヴォージュ広場が造られたのと同じアンリ4世の時代のレンガと石造りの建物は、かつて教会として建てられ、1878年からはオスピス・レネックとして機能していた病院です。

その名残は、その昔、薬草を薬にしていた本社の中庭の薬草園に残っています。

 

レネック医師はブルターニュ出身で、この辺りもケーリング社の創立者であるフランソワ・ピノー氏と深い関わりがあります。何故ならば、ピノー氏はブルターニュ出身で、かの地で建設会社を営み、1代で木材の卸で財を成した人だから。並並ならぬ努力と野心の人だからです。

 

ピノー氏は、ラグジュアリーで得た利益を現代アートの支援や展示、それともう一つ、女性を輝かせるために投資しています。一つはカンヌ映画祭で「WOMEN IN MOTION」というプログラムを持ったり、アルルの写真展でアートやカルチャーで輝いている女性たちにスポットを与えるということです。

もう一つが、DVやセクシャルハラスメントなどで暴力を振るわれた女性たちを支援する協会です。

 

キラキラするラグジャリーブランドにアンチを唱える若者の多いなか、

庶民が暮らすストリートに目を向けてそれを応援する姿勢が

新たなラグジュアリーブランドの使命となっているのでしょう。