それでは、デフギヤ3.983.3交換整備の その2です・・・・ が・・・・
部品待ちと、週末の天気の悪さと、親戚の弔事が重なって、しばらく手をつけることが出来ませんでした。サンデーメカニックはこんなもんです。
 
デフ関係に用いる全てのベアリングを交換するのですが、ベアリングが新品になると、必ず歯あたり調整の為にシム調整が必要になります。
 
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この写真はドライブピニオンとそれに用いられる部品です
左から、
ドライブピニオン、シム、ドライブピニオン側ベアリング、スペーサー、スリンガ、ドライブピニオンフランジ

下に行ってワッシャー、ナットです。(この写真はパブ用のものです)
 




これからドライブピニオンとリングギヤの歯あたり調整をしていくわけですが、ドライブピニオンとベアリングとの間に、ドライブピニオンの高さを調整する厚めのシムが入れてあります。 
このデフは、厚みが
1.98mmのものがついていました。
このシムはパブギヤの一番薄いもののようです。ヨタ用デフに指定のシムは
2.332.57が標準のようです。
 
イメージ 2でも小生、業者ではないので、調整用シムなんてほとんど在庫していません。 
汎用のシムリングは通販サイトで買えます。内径に対して外形が大きいタイプなので、ちょっと高価です。必要最低限の種類で、狙い近くのバリエーションが、ある程度構成できるよう考えて発注しました。数も少ないので割高になりますが仕方ありません。


汎用シムが到着しました。
 

 
これがデファレンシャルユニットを外した状態です(リングギヤとベアリングが付いています)。
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機能としては、車が曲がるときなどの内輪差などによる左右の車輪の回転数差を吸収するものです。リングギヤがオレンジ色になってますが、これは光明丹の色です。歯あたりなどを直接見る為につかいます。









イメージ 4光明丹は粉なので、適当なオイルと混ぜて作ります。
これをリングギヤの一部のギヤに塗ってギヤをバック方向に回してその転写具合で歯あたりを見ます。
 









デフ関係のベアリングは全てトヨタからの供給は終わりましたが、デフのサイドベアリングは標準品が流通しています。しかしこのベアリングは、国内流通量が少なく、ベアリング屋さんに頼んでも、入手に時間がかかることがあります。 それ以外の2種のベアリングはトヨタスペシャルなので、同じものは手に入りません。


しかし、一部だけ寸法だけが異なったものが標準品にありました(入手はしにくいですが)。さらに、いずれも、さほど大掛かりな加工をすることなく取り付ける方法がありました。
デフの故障は大きな事故にもつながりますし、ブログに小生の愚案を記載すると、変な嫌がらせや、クレームをつける方がいます。皆さんの助けとなればと一方的に思って投稿しているのですが精神的にも苦痛なので、お尋ねいただいた方に説明させていただきます。ベアリング入手についても、ご相談いただければ安価(時価)で入手可能です。
 
今回のデフ整備でも、ドライブシャフト側の大きいほうのベアリングは上記の一部寸法違いの標準品を使っています。プロペラシャフトフランジ側のベアリングは、上記のものではなく、北海道のF氏が、内径違いの標準品にスペーサースリーブを挿入したカスタム品を作って供給されていたのを依頼者の方がお持ちだったので、これを使うこととしました。
 
早速作業ですが、小生、ヨタハチ用のデフ調整用マスターゲージなど持ってるわけないので、トライ&エラー調整法です(勝手に命名)。
 
とりあえず、勘でシム高さを決めて、全てのベアリングを新品にして仮組みをしてみました。
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ドライブピニオンの軸に、
2.45mmに勝手に決めたシム(組み合わせで作ります)→ベアリング(大)→








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変な形のスペーサ→薄いシム(
0.25mm)→






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デフキャリア→ベアリング(小)→スリンガ→





ドライブピニオンフランジ→ワッシャー→フランジナットの順で組み付け、フランジナットを徐々に規定トルクまで締め付けていきます。締め付け途中で、時々、軸を手で回して、ベアリングを落ち着かせながら行います(これが大事)。
 
締め付けトルクが規定値に近づいたら、フランジの回転トルクをバネばかりで測定し、与圧過多になっていないかも確認しながら行ないます(これも大事)。

組みあがったら、デファレンシャルユニットを取り付けます。
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噛み合わせを手でまわして感じながら、デフサイドベアリングの調整ネジを1ノッチずつ調整して、デスサイドベアリングに与圧をかけながら、リングギアとのバックラッシを減らしていきます。
 
バックラッシが適当な感じ(0.15mmくらい)になったら、ピニオンに光明丹を塗り、歯あたりを見ます。 この歯あたりで次のシムの調整量を予測します。



後はこの繰り返しです。結構時間がかかります。

結局シム厚は、
2.30mmとなりました。この数字になるのに、シム厚を少しずつ調整して12回も組み直ししました。すっごく時間がかかります、専用冶具やまともな道具が無い小生の作業環境ではかなり疲れます。
これでシムは決定です。それでは最後のばらしと、組み立てに入ります・・・・


そういえば、このデフに使われているスペーサーは、おかしな形をしています。
40年代中盤から、つい最近まで、さまざまな車輌で近似構造のデフの、円錐ころ軸受けのベアリング間に使われるスペーサーは、この形状を良く見ます。
 
これは強いバネ性を持たすためと勝手に思ってます。
強いバネ性のあるスペーサーで2つのベアリング間に強い反発力をもたせることで、フランジナットの締め付け量だけで、ベアリングの与圧を調整できる優れものだ!と勝手に想定しています。
事実、強いバネ性の為、フランジナットの締め付けトルク指定許容範囲内での与圧調整範囲が広く、ベアリング与圧調整がとても簡単です。
 
ヨタハチ用の鉄デフキャリアを分解すると、少しテーパーになった、高剛性の円筒形スペーサーが使われているのを見ます。
 
このスペーサーは完全な剛体です。バネ性はほとんどありません。そのためスペーサーの長さが、もろにベアリングの与圧を決定します。
ドライブピニオンへの加重を支える為、フランジナットは高いトルクで締め付けますが、このスペーサーが剛体がゆえに、もし少しでもスペーサーが短かったら、ベアリング与圧のかけすぎとなってベアリングをすぐに壊します。
また、少しでも長すぎれば、与圧不足でガタが出ます。
ハイポイドギヤのピニオンの軸方向のガタは禁物です。このためトヨタでも0.04mm刻みで53.954.1mmまで細かく長さが選べるようになっていたようです。
 
円錐コロ軸受けは、ベアリングにあたりがついて落ち着いてくると、このデフキャリア構造では与圧が下がります。その分を見越してやや強めに調整しなければなりませんが、スペーサーの長さのみの調整では、メカニックが不慣れだった場合や、適当(悪い意味で)に作業されると、与圧不足や与圧過多となってしまったことが多いようです。
そのせいもあって、ヨハチ鉄キャリアデフのベアリングがおかしくなったものに、よく出あうのかもしれません。


最後の組み立てと調整は次回ということで・・・・・!