緋色の欠片と「地名」 | アニメ批評

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 緋色の欠片というのは、次のようなお話です。春日珠紀という高校生が、両親の海外転勤を機に、祖母の家に呼ばれ、一緒に暮らすことになるのですが、祖母の村に呼ばれた本当の目的は、先祖代々続く「玉依姫」の使命として鬼斬丸という刀の封印をすることでした。そこに、珠紀を守る宿命を負った守護者と呼ばれる少年たちが現れ、玉依姫としての使命に目覚めていく、というお話です。
 ここで、地名、といっても聖地というわけではないです。今日は少しとある本の引用をしてみましょう。
「山形県鶴岡市の南部、旧朝日村大網地区に『七五三掛』と書いて、「しめかけ」と呼ぶ小集落がある。(・・・)
 「七五三」という語は、必ずしも目出度いだけの言葉ではない。
 幼児、特に女児が晴れ着を着てお宮参りをする習慣は、日本人独特の麗しい行事ではある。だが、シメ(標、占)とは本来、朝廷・貴族や神社の占有地など神聖な土地に標識をたてて「不浄なものの立ち入り禁止」を示したこと、その土地のことである。
 『万葉集』巻一ー二〇に載る額田王(ぬかたのおおきみ)の、
 あかねさす、紫野行き標野行き、野守は見ずや、君が袖振る

 という歌は、知っている人も多いだろう。シメという言葉は、今の若者向きの表現をすれば、「バリアー(結界)を張る」というのにほぼ等しい。
 この用語に「七五三」の数字を当てるのは、その標識に使う注連縄(しめなわ)の縄を、左縒りにして七筋、五筋、三筋に縒り垂らすことから、義訓文字として使ったもの。先の「七五三詣で」は、幼児の三歳・五歳・七歳の成長の節目に、人生の安全と潔斎を願う行事である。
 したがって、「七五三」の文字面を見て即、「目出度い」とするのは早とちりである。この地名は、過去にもずっと「地滑り危険地帯」と認識されていて、「むやみに開墾の鋤を入れるな」というタブーの地だった。」
 種を明かせば、この本は楠原佑介著「この地名が危ない」幻冬舎新書p.108の引用なのですが、緋色と物語の構造が実によく似ていますね。鬼斬丸の代わりに地殻変動ととらえれば、上で紹介したエピソードとうり二つになります。
 大地の自然霊を鎮める神官とそれを補佐する人間というのは、日本に固有の物語の枠組みなのかもしれません。
 たとえば、昔歴史の授業で「平安時代の貴族にとって、和歌を詠むことが政治だった」という話を聞いた覚えがあるのですが、和歌の本質が言霊であるとすれば、上の話とも十分つじつまが合います。
 まだまだ、この枠組みの物語には可能性があるなあ、と思った次第です。人文地理学による地名の由来を読解できる学者、霊を鎮めることのできる強力な霊能力者、それにその警護をする人間で、日本各地の霊的バランスの崩れたところを補修する。そこに、霊力にあふれた日本の奪取を目指す海外の霊団の関係者が、日本全体に張り巡らされた結界を突き崩そうと陰謀を張り巡らせる。こんな話、だれかライトノベルで書いてみたらどうでしょうねえ(笑)