取締役の責任を問われないために注意すべきポイント | 弁護士西脇威夫/企業法務・スポーツ法専門の法律事務所のブログ

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株式会社の取締役は、会社法上、取締役個人の責任が規定されています。


そのような責任を問われることがないよう、どのような場合に会社に対して責任を負わなければならないか考えてみたいと思います。


会社法上、株式会社の取締役は、その任務を怠ったときは、会社に対して、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(会社法4231項)。


取締役が任務を怠ったとされるのは、取締役と会社の関係は、委任に関する規程に従うので、会社に対する善管注意義務・忠実義務の違反があった場合です(会社法330条・355条)。


それでは、いかなる場合に、任務を怠ったとされるのでしょうか。


そもそも経営判断には、決まった公式がない場合がほとんどであり、次どうなる

のか不確実な段階で判断をする必要がでてくる場合や冒険をする必要がある場合も多くあります。



そのような場合の判断にまで任務が怠ったとされ、責任が課せられるとなると、取締役は萎縮してしまい、かえって適切な経営判断を行うことができません。これは株主の利益にもなりません。



ビジネスジャッジメントに対して、それぞれの分野の専門的知識が必要となるため、裁判所がその評価をするべきではないという考えも原則にあると思われます。

 

 そのため、取締役の責任の有無を裁判所が判断する基準として、判例上、経営判断原則というものがあります。


これは、


1、判断の前提となる事実の認識に不注意な誤りがなく、かつ

 2、判断の過程・内容が著しく不合理でない

場合には、取締役はその判断について善管注意義務違反の責任を問われない。」


というものです。



すなわち、取締役にはその判断に広い裁量が認められており、経営判断をした時点で一定の要件を満たす限り、結果的に会社に損害を負わせたとしても法的責任を負わせません。



つまり、事後的、結果論だけの評価がなされてはならないというのが原則的な考えです。


この原則に従うと、取締役が善管注意義務違反を理由に損害賠償責任を負う可能性は低いと言われています。


そのような中、最高裁判所で、取締役の任務懈怠を認めた興味深い判決(福岡魚市場の株主代表訴訟(平成26130日判例時報2213123頁)が出ました。


本件では、親会社Aの取締役3人が、取締役または監査役を兼任している子会社Bが多大な不良在庫を抱えているのを知りながら十分な調査もせず、合計224000万円を貸付けました。しかし親会社は子会社から十分な返済を受けることができず、最終的には188000万円の損失を被りました。


本件における取締役の責任については、一審でも控訴審でも、経営判断の原則の適用が主な争点の一つでした。

すなわち、Bに貸付をすることは経営判断なので、Aの取締役は、法的な責任を問われないかということです。



第一審では、被告となったAの取締役が、AおよびBの在庫の増加の原因を解明すべく具体的かつ詳細な調査をし、又はこれを命ずるべき義務があったにもかかわらず、何ら具体的な対策をとることがなく、BひいてはAの損害を拡大させるに至ったものとして、調査義務を怠った点に、取締役の忠実義務及び善管注意義務違反を認めています。



控訴審でも業績に回復の具体的目処もなく、経済的に行き詰って破綻間近となっていたことがあきらかなBに対して、貸金の回収は当初から望めなかったとして、同様な判断がされました。


最高裁では、遅延損害金に関する上告受理申し立ての理由のみが判断の対象となり、控訴審までで認めた取締役の責任の存否に関する主張は受理されませんでした。

すなわち、最高裁でも取締役に責任があるという判断は変わらなかったということです。


本案件では、明確に経営判断原則の定式に沿った判断がなされているわけではないですが、それを意識して検討されていると考えられます。


一方で、そもそも経営判断の原則が適用されるべき事案でないとの考えもあります。


すなわち、そもそも経営判断原則の趣旨は、上記の通り、次どうなるのか不確実な段階で判断をする必要がでてくる場合や経営上の冒険をする必要がある場合に積極的な企業経営を行うインセンティブを与えることにあります。

しかし、本案件では子会社を倒産させないというリスク回避の場面であるため、そもそも経営判断の原則が適用されるべき事案でない、という考えです。


一般的には、経営判断の原則に従うと、取締役が善管注意義務違反を理由に損害賠償責任を負う可能性は低いかもしれません。

しかし、取締役が業務を行うにあたっては、本案件にみられるように責任を負う場合があります。



法的責任を負わないのであれば何をやってもいいという結論にはなりませんが、どのような場合に法的責任を負うのか、しっかり理解し、責任を問われないための対策も意識して業務を行う必要があります。


次回は、取締役として注意すべきポイントについてもう少し考えてみたいと思います。




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