“カテーテル外しましょう”

と、看護師が来た。カテーテルをつまんで、

  ”深呼吸しましょう~“

という。何回かしたところで、

  “吐いて~。力を抜いて~”

といわれた瞬間にスポッと抜かれた。痛みは特になかったが、しばらくは管がまだ残っているような、締まらない感覚が続いた。これにはさすがに違和感が ( ‘’ω’’ )

  “オシッコいくと、しばらくは空気が漏れるようにプスプス出てくるからね!”

と言われた。

 

 カテーテルが抜かれると、早速、立つ練習が始まった。まず、ベッドのリクライニングを立てて上半身を起した。とたんに、また内蔵が全体にズルッと下に動いた感覚があった。まだ鎮痛剤が効いているのか、不思議に痛みはそれほどない。ベッドの端に座るところまできた。

  “水を飲んでいいよ”

と言われ、冷蔵庫の中のお茶を取ってもらい、術後初めて一口飲んだら胃がギュッと縮んだ。

 

 これから立ち上がるのだが、腹に力が入らない。小さな穴とは言うものの、腹筋を切っているのだから当たり前だ。手を引いてもらい、二度目で立ち上がったが、前かがみになってしまう。点滴のスタンドに捕まり、ゆっくり背中を起していく。顔を前に向けることができた。そのままドアのところまで進む。看護実習生に介添えを受けながら、一歩一歩、とぼとぼと。元の位置に戻って一度座る。また立ち上がって、同じように今度は二往復。

 

 看護師は

  “今日中にスタッフステーション2周が目標だよ”

というが、そんな悠長なもんでは到底明日の退院には間に合わない。ミッションに静かなる闘志を燃やす身としては、なんとか早く歩けるようになりたい思いで必死だった。

 

 ここで休憩となった。看護師は、尿瓶を取りに行ってくると、出かけていった。カテーテルを外して初回の尿を取らないとならないらしい。妻に立ち上がって歩けたことをメールしようとスマホを見たら、妻からのメールが入っていた。

 ”明日退院が無理そうなら自分で延ばして貰うようお願いしてね”

となっている。だが、こちらは『明日歩いて退院してやる』と意気込んでいる。歩き始めて、ボチボチ歩行訓練にとり組んでいることだけメールしておいた。直ぐに妻からの返信があり、午後に母(義母)が見舞いに来てくれることが書いてあった。それまでにはもう少し格好よく歩けるようになっておきたい。

 

 看護師が尿瓶を持ってきた。

 “出るときこれにとってね”

と言ってまた戻っていった。

 

 実習生はシャワーも浴びれない人の身体を拭く練習をさせてほしいそうで、準備に行った。ここから約30分間、自主トレに励んだ。この間、病棟係らしき看護師が来て、

 “明日の退院はAM 10:00でよかったかな?”

と聞いてきた。

 “いやいや、息子の学校があるから午後にしてくれ”

と答えた。何時になるかは午後に妻がきてからすり合わせることになった。

 

 AM 11:30頃、実習生がお湯と身体を拭くセットを持ってきた。顔や腕など手の届く範囲は自分で拭き、残りは実習生とその先生に頭から背中、足先まできれいに拭いてもらい、レンタルの寝間着から自分のトレーナーとジャージに着替えさせてもらった。下着も晴れて紙オムツを卒業し、トランクスになった。