南出弁護士が、児童相談所は、家庭再統合の努力を一切していないとおしゃっていました。
(<記者会見>児童相談所被害の実態を報告し、改善要望(H26.10.15)ー南出弁護士より② )
果たして、児童相談所は、家庭再統合についてどのように考えているのでしょうか?
児童相談所職員が書かれた「家族再統合へ向けた取り組み」についての論文がありましたので、紹介させていただきます。
※解説、奈々草の言葉は緑文字としました。
※引用文はピンク文字としました。
家庭再統合へ向けた取り組み組み (心理臨床の広場 Vol5 No.1 2012 28頁~29頁)
弘前更生学院・前青森県むつ児童相談所 関谷道夫 著
【家庭再統合の第一歩】
心理臨床に携わるものが苦手とすることの一つに、マス(集団・組織・地域社会)への介入があります。
アウトリーチでは尚更です。
今般の東日本大震災の被災地支援ではそのことが実感させられました。
個人との面接に慣れ親しんでいると、コミュニティに飛び込んだとき、入り口で戸惑ってしまいます。
これまで培ってきたものが通用せず、アウェーの世界に飛び込んだ気持ちになります。
新たな発想と柔軟なアプローチが求められます。
親と子のエンパワーと関係の再構築を目指す家庭再統合も似ているところがあります。
近年の児童相談所は虐待通告によって、拒否的・攻撃的な虐待親と対峙し、常に迅速かつ適切な対応が求められるなど、常在戦場の様相を呈しています。
虐待の通告があった場合は、48時間以内に子供の安全確認を直接目視することになっており、この一瞬に、子供の生命・健康の維持を最優先し、親の意思に反しても職権で保護するか?
在宅のままで指導していくか?といった点について即断が求められます。
実は、親子分離のプロセスで、家庭再統合までを想定して、きめ細かく対応しておくことが、家庭再統合の成否を決める重要な要因になります。
児童臨床の最前線にいる専門家として、家族の動きを見極める訓練された確かな眼が必要です。
【笑いと涙のほほえみプロデュース】
家族再統合も含め、第一次・二次・三次予防を踏まえた循環的な虐待対策を構築しようとしたとき、ハイリスクマネジメントとともに、全体としてリスクを低減させようとするポピュレーションアプローチは欠かせません。
コミュニティを視野に入れた家庭再統合です。
個別の親子分離と家族再統合だけでは、もぐら叩きに終わってしまいます。
県域を視野に入れた具体的で実効性のあるアプローチが必要だと考えていたときに「青い森のほほえみプロデュース事業」が産声をあげました。
かつて児童虐待対応に奮闘してた一人の心理職経験者の発案から始まったものです。
「自らほほえみ」また「周りの人からはほほえみを引き出せる」人材を県内に大勢養成し、虐待やいじめの少ない元気で明るい地域を作りたい。
そんな想いを「青森県職員庁内ベンチャー制度」(職員が事業を提案し、直接、知事にプレゼンし、OKを得られたら、その職員自らが実施する仕組み)で発案したところ知事に強く支持され、全国初の「ほほえみ&笑い」によるユニークな地域づくりが始まりました。
これは芸人を施設や病院に派遣するものではありません。
県民一人ひとりが、日常生活の中でほほえみをプロデュースする「主人公」になろうという斬新な取組みです。
最初に4泊5日の合宿で、トップの「コア笑いプロデューサー」を養成し、そのコア笑いプロデューサーは、研修会等で「笑いプロデューサー」を事業推進役として養成していくという仕組みです。
三層目の「ほほえみプロデューサー」(日常の生活の中で、周囲の人からほほえみを引き出してくださる方)を数多く養成することが最終の目的です。
この三層構造により、自らがほほえみ、周囲の人からほほえみを引き出せる精神とスキルを習得した人材を着実に増やそうとしたのです。
私は「笑いのネズミ講」と名付けました。
(親の部分が「コア笑いプロデューサー」 子の部分が「笑いプロデューサー」 孫が「ほほえみプロデューサー」)
幸いに、コンプリメント等により自尊感情を高めるワークショップは、参加者や関係者から圧倒的な支持を受け、現在ほほえみプロデューサーは、3万3000人に達しています。
【家族再統合の実践プログラム】
地域社会の機運を盛り上げる活動とともに、その両輪として、ハイリスク家庭に対する緊急介入・親子分離をして親子再統合という具体的実践プログラムも欠かせません。
親子分離で一段落していた時代から、最近は強く親子関係の修復・再構築が求められるようになっています。
その一方で、虐待親の強い引き取り要求に屈し、子どもを親元に戻した直後に殺される悲惨な事件が散見されます。
いわゆる「未熟な家族再統合」と呼ばれるものです。
現場で働くものにとって家族再統合は触れたくない領域の一つです。
虐待親との執拗な確執が続きますし、失敗すればその甘い判断が社会から強く糾弾されることになります。
これらを背景に、自前の社会資源で実践可能な本県独自の家族再統合を目指すことにしました。
直接学ぶことが大切です。
若手の児童心理司をアメリカの「ガールズアンドボイズタウン」、カナダのサツカツーン市・トロント市に派遣し、家族再統合プログラムの指導法や実践方法を学ばせました。
虐待で親子分離した後の親への援助プログラム「コモンセンス・ペアレンティング・トレーニング (CSP)」や、カナダ保健省が中心となってカナダ全域で広く実践されている親教育プログラム「ノーバディーズ・パーフェクト・プログラム 」などです。
若い児童心理司は定式化されたプログラムへの関心が強く「ペアレントトレーニング 」「サインズ・オブ・セイフティ・アプローチ (SoSA)」など広がっていきました。
「家族療法」についても、立命館大学の団士郎教授 の指導のもとにワークショップを続けています。
<団士郎教授 写真はhttp://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsshs/teacher/family-dan.html
より>
いずれも今日ではポピュラーなプログラムです。
さらに、家族再統合のあらゆる段階で「子供を返せる親なのか?その段階に達しているのか?」といったアセスメントが必要となってきます。
家族再統合のレディネスを見極めることは欠かすことのできない作業です。
限られた資源を、効率よく運用する必要があります。
山梨県立大学の西澤哲教授と、再統合支援に向けた援助のあり方に関する共同研究を行い、「子ども虐待家族再統合サポートプラン 」「支援を要する保護者の面接ガイドライン 」をまとめました。
このときに開発した「親の虐待心性尺度 (PAAI、PAAC)」は点数化されてわかり易く、家族再統合の可否判断基準になるとともに、虐待親の思いや虐待経験などを聞けるチャンスともなりました。
小さくしかアップできず、これでは何が書いてあるかわからないので、因子1のみ引用します。
因子1=体罰肯定 4項目
v6子供をしつけるためには体罰は必要
v30体罰はしつけの方法として有効である
v22体罰を使ってでも子供をしつけるのは親の務め
v14子供が言っても聞かない時は,体罰を加えるし
かない
子供を児童相談所に一時保護された親御さん達にお聞きします。
このようなきめ細かなプログラムに沿って、児童相談所より指導や援助、支援は受けたでしょうか?
※プログラムの内容については、それぞれリンクを貼りました。
プログラム名をクリックするとリンク先が出てきます。
【家族再統合の地域とのコラボ】
児童虐待対応は待ったなしの状態で、心理職には昔のように優雅に家屋支援に取り組んでいるゆとりはありません。
これまで培ったものを積極的に地域に浸透させて、守備範囲を広げる必要があります。
コンササルテーションの発想のもとに、福祉施設・学校・病院などの研修会に積極的に指導者として参加させました。
施設職員や看護師と一緒に家族再統合プログラムを実践し、次第に身を引いて、最終的にはそれぞれの現場で独自に実施できるようにします。
突然、小児科クリニックや児童養護施設から、長期のワークショップをやりたいという要請を受けたことがありましたが、喜んで引き受けました。
家族が最も身近に接している人達が、家族再統合で獲得したスキルを「日常使い」できるようにすることが大切です。
深く絡み合った児童虐待に対する家族再統合の手法の効用と限界については、今後各地の実践の中で検証されていくことになるでしょう。
●文献
山本和郎(1986)「コミュニティ心理学」東京大学出版会
山本菜穂子HP「対人援助マガジン」(6号から連載)
青森県こどもみらい課「子ども虐待家族再統合サポートプラン」等
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「佐世保児相に突然引き離された親と子(1)」
http://www.data-max.co.jp/politics_and_society/2014/11/22637/1113_dm1718_01/
「佐世保児相に突然引き離された親と子(2)」
http://www.data-max.co.jp/politics_and_society/2014/11/22761/1114_dm1718_02/
佐世保児相への多様な意見を紹介
http://www.data-max.co.jp/politics_and_society/2014/11/22819/1114_iken_1/
ぴょんこさんの署名は