【腸脳相関(ちょうのうそうかん)】
腸と脳がお互いに影響し合う相互作用を指す。
腸の状態が脳の働きに影響を及ぼす一方、脳の思考や感情が腸の機能に影響を与えるという関係性。

Ex)
・ストレスを感じると脳から腸に信号が送られて胃の不快感や便秘、下痢などの症状を引き起こす

・腸内環境が悪いと不安やうつ状態などのメンタル面のトラブルを引き起こす

・腸に病原菌が感染すると脳で不安感が増す

・腸内細菌が脳の働きに影響を及ぼすという研究が注目されている中で、アルツハイマー型認知症の予防に寄与する可能性があるとされている。





《腸から脳へ及ぼす影響》

・トリプトファン
トリプトファンは必須アミノ酸の一種。
精神の安定・抗うつ・睡眠の質に深く関わる。精神のバランスを保つセロトニンや夜間睡眠を誘うメラトニンの材料になる成分。
食事で摂ったトリプトファンは腸で吸収され、それが脳に移行して脳内セロトニンに。(乳製品、大豆製品、バナナ、穀類、肉類や卵、ナッツ類 etc)


・神経系
自律神経などを介して腸から脳へ情報を伝達する。

・免疫系
腸に存在する免疫細胞は全身の7割に及ぶとされている。
腸内細菌は免疫細胞の活性化を促す役割を担っていて、現在では脳でも免疫細胞を通じた炎症を抑える作用などが働いているのではないかといわれているのだそう。

・短鎖脂肪酸   
短鎖脂肪酸は食物繊維やオリゴ糖などを腸内細菌がエサとして食べることで産生する代謝物質の1つ。
腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸が脳内で働く免疫の機能の調整に関与していると考えられている。





《脳から腸へ及ぼす影響》

ストレスを受けたり緊張状態が続いたりすると、自律神経やホルモンの働きによって腸が機能異常を起こし痛みや不調が起きやすくなる。





[一口メモ]
腸・脳に腸内細菌・微生物が加わった、腸脳―腸内―細菌相関について世界中で研究が行われていて、
例えば

過敏性腸症候群(IBS)・炎症性腸疾患・パーキンソン病・認知症・うつ病・自閉症

などとの関連が示唆されているのだそう。





《ストレスで胃や腸が痛くなるメカニズム》 
       
       [ストレス]
          ⬇️  
               [脳の視床下部]
                   ⬇️
  [副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン]
        (CRH)
    ⬇️         ⬇️
  副交感神経            迷走神経
   (1型CRH受容体)        (2型CRH受容体)
    ⬇️         ⬇️
  結腸・大腸     胃・十二指腸
 (蠕動運動亢進)    (蠕動運動抑制)
 (内臓知覚過敏)   ※消化不良を起こす
    ⬇️         ⬇️
  腹痛・下痢         胃が重い・痛む





《通勤途中に腹痛が起こるのは何故?》
下記のような状況から腹痛が起こるのでは?

①元々副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の濃度が高い朝に仕事に行くというストレスが加わることによって、さらに分泌量が増加すると腹痛や下痢に。

②朝通勤途中に突然腹痛が起き、下車してトイレに駆け込んだ経験がトラウマになると〝また同じ状況に陥るのではないか?〟と強い不安に苛まれる。

③すると、脳の中では副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の分泌がこれまでよりさらに増加してしまい下痢が酷くなってしまう。





☑副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CHR)の分泌量は朝に高く、夜になるにつれて低くなる。ここにストレスが加わるとさらに増加する。

☑人によって1型・2型でのCRH受容体の発現量やその機能に違いがあるため、胃が重く感じるだけのケースもあれば、お腹が緩くなるだけのケースもある。中には両方起こるケースがみられることも。





今回は【腸脳相関】についてご紹介しました。
一口メモにも症例をいくつか挙げましたが、腸➡️脳・脳➡️腸というように相互に影響し合って様々な疾患が起こる可能性があることがわかってきているとのこと。
我々が脳にアプローチするのは難しいので、まずは身近なところで腸内環境を整えることから始めてみてはいかがでしょうか?
ストレスが腸へ影響することはわかっていても全くストレスのない生活はできないので、ストレスがかかっていると感じるときこそ生活習慣や食習慣を見直すことをオススメします。