【芒種(ぼうしゅ)】
6/5当日、もしくは6/5〜6/20(夏至の前日)までの期間を指す。
〝芒〟は〝のぎ〟とも読み、稲や麦などの種を包む殻に生えているトゲのこと。芒(のぎ)のある穀物や稲や麦など穂の出る穀物の種を蒔く季節ということから【芒種(ぼうしゅ)】といわれている。
暦の解説書〝暦便覧〟には
『芒ある穀類稼種(※)する時なれば也』
とあり、
芒(のぎ)のある穀物を植える時季、すなわち田植えの時季を表している。
※稼種
種を植えるという意味





《七十二候》
二十四節気をさらに3つに分ける

◎初侯(第二十五侯) 6/5〜6/9頃
【蟷螂生(かまきりしょうず)】

カマキリが卵からかえる頃。
カマキリのトレードマークは手の鎌であり〝鎌で切る〟から〝鎌切り〟となったといわれているが、鎌を持ち上げ待ち伏せする姿が祈っている様子にみえることから〝拝み虫〟とも呼ばれるのだそう。
カマキリは英語で『mantis』、語源はギリシャ語で〝予言者〟〝僧侶〟という意味なのだとか。


◎次侯(第二十六侯) 6/10〜6/15頃
【腐草為螢(くされたるくさほたるとなる)】

草の中から蛍が舞い、光を放ち始める頃。
暑さで蒸れて腐った草が蛍になったと考えられていたことが表現されているのだそう。
水辺や野の暗がりに浮かんでは消える蛍の光は夏の風物詩。蛍の放つ淡い光は〝蛍火〟と呼ばれ夏の季語となっている。


◎末侯(第二十七侯) 6/16〜6/20頃
【梅子黄(うめのみきばむ)】

青かった梅の実が黄ばんで熟す頃。
熟していない梅は生で食べると身体に負担になるため梅干しや梅酒などにした。
ジメジメとした梅雨に入り免疫力が落ちがちなこの時季、クエン酸が豊富で疲労回復・食欲増進の作用がある梅干しは古くから重宝された。殺菌作用も強いため食中毒の予防にも。





《芒種 あれこれ》

☑梅雨に入り蒸し暑い日が増える芒種の頃は、湿気が身体に溜まりやすくなり、消化不良や下痢などの胃腸トラブルが多くなる。


☑身体の中に溜まった余分な水分を引き起こすトラブルを〝湿邪〟といい、身体が重だるい・疲れやすい・眠くなりやすい・関節や筋肉の痛みが出やすい・頭重感などの症状が現れやすい。


☑梅雨の時季の下痢は、湿邪によって胃腸の働きが低下しスムーズに消化吸収できていないことが原因。
冷房や冷たい飲食によっても身体全体が冷え胃腸機能が低下するため要注意。


☑田植え
日本では育てた苗代を田植えする方法が一般的で、この苗代は寒さに弱いため芒種の時季が適しているとのこと。


☑蛍狩り
蛍のシーズンの最盛期。


☑五月雨
陰暦の5月頃に降り続く雨で、いわゆる梅雨のことを指す言葉。


☑稽古始め
能で大成した世阿弥の著作の冒頭文にある『この芸において、おほかた七歳を以て初めてとす』という一文が元。語呂の良さもあり〝6歳の6/6〟が定着し上達しやすいといわれてきた。
片手で指折りにいち・に・さんと数えていくと6のところで小指を立てる形になり、『子(小指)を立てること』を小指の立つ様子になぞらえて習い事を始めるのに適した日とされた。





《芒種の時季に旬を迎える食材》

■野菜・果物

いんげん豆、枝豆、そら豆、とうもろこし、トマト、きゅうり、茄子、オクラ、ししとう、つるむらさき、大葉、生姜、茗荷、らっきょう、梅、杏、びわ、さくらんぼ                
                 など

■魚介類
鮎、鰯、鯵、カジキマグロ、カマス、カワハギ、カンパチ、キス、スズキ、トビウオ、イカ、クルマエビ、ホヤ     
                 など





今回は二十四節気【芒種(ぼうしゅ)】についてご紹介しました。
〝梅雨〟という言葉はこの時季に梅の実が薄黄色に色づくことに由来しているのだそう。〝梅〟の熟する頃の〝雨〟という意味。
季節の言葉の成り立ちを知ると、これまでとまた違う見え方で季節の変化を感じるかもしれません。