【メノポハンド】とは。。。
更年期や産後の授乳期、もしくは生活習慣病を患っているケースで起こる手の痛み・こわばり・痺れ・変形などの症状を指す。
女性ホルモン〝エストロゲン〟が減少することにより関節や腱の周囲の滑膜に炎症が起こることが原因とされている。
世界では〝メノポーザルバンド〟と呼ばれ、日本では日本手外科学会が新たに〝メノポハンド〟と名付けて予防や改善について啓蒙しているのだそう。
《主な症例》
・ドゲルバン病
腱鞘炎の1種。狭窄性腱鞘炎。手首の母指側が腫れて痛む。長母指外転筋腱と短母指伸筋腱が橈骨茎状突起部と伸筋支帯に絞扼されて起こる。
・ばね指
主に母指、中指、薬指で起こる。指の使い過ぎにより腱鞘が肥厚したり、腱が肥大することで通過障害を起こしばね現象がみられるようになる。
・変形性関節症
ヘバーデン結節(第1関節)、ブシャール結節(第2関節)、母指CM関節(母指の根元)などが挙げられる。
・手根管症候群
親指〜中指までを支配する正中神経が圧迫されて痺れを生じる。
20年以上前まで遡ると更年期や女性ホルモン〝エストロゲン〟の変動と上記のような手の症状との関係は結びつけられていなかったとのこと。
現在では子宮内膜や乳腺・骨・皮膚・血管などにもあるエストロゲン受容体が手指の関節や腱の周囲に近い〝滑膜(※)〟に非常に多いことがわかってきたのだそう。
エストロゲンは手指の血管を拡張して血流を良くし、関節の滑膜を柔軟に保って腱や腱鞘を保護する役割を果たしていますが、急激に減少すると滑液が作られず腱や関節が腫れて痛み、動かしにくくなり、こわばっていくというのが上記の症例のメカニズム。
※滑膜
関節を包む袋のような部分である関節包の内部にあり、潤滑油の役割を担う滑液を作り出す働きを持つ。
エストロゲンの急激な減少が起こるのは主に①更年期 ②産後の授乳期などが挙げられます。
②では手指の変形はないものの、妊娠中に高かったエストロゲン値が急激に元に戻るため、手指や手首の痛みやこわばりが起こるとされます。産後のエストロゲン減少はやがて落ち着きますが、更年期ではエストロゲン値が低い状態が続きます。
加齢とともに徐々に滑膜の炎症が酷くなり、やがて変形を引き起こすに至ります。手指の痛みを放っておくと7〜10年で指の変形に進行する可能性があるとのこと。
《対処法》
①ホルモン補充療法
HRT(Hormone Replacement Therapy)
②エクオール摂取
③ステロイド注射
④手指の体操、ストレッチ
⑤手術
①ホルモン補充療法 HRT
2017年度番のガイドラインには『エストラジオール(※E2)はホットフラッシュ以外に睡眠障害・関節痛・四肢痛の改善効果を示す』『HRTは関節痛発症を予防する可能性がある』と記述されているとのこと。
※E2
水酸基を2個持つエストロゲン(女性ホルモンの1種)。主要なエストロゲンであるE1・
E2・E3の中で子宮内膜や子宮筋に対する生物学的活性が最も強いステロイドホルモン。主に卵巣から分泌され、黄体形成ホルモン(LH)・卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌刺激を受ける
②エクオール摂取
エストロゲンによく似た作用を持つことから予防につながるというデータが出ているのだそう。エストロゲン受容体にはα・βがあり、β受容体は骨や関節周囲の滑膜に多く分布されていることがわかってきたのだとか。エクオールはβ受容体と合体しやすい特徴があるため症状改善に効果があると言われている。
また、家族性があることがわかっているため母親に症状がみられる場合にはエクオールで予防を。エストロゲンと似た働きを持つエクオールは大豆製品から生み出されることから大豆製品を摂ることで予防につながるケースもあるとのこと。
1日あたり10mgの摂取が推奨されていて、豆腐200g(1丁の3/4程度)、納豆50g(1パック)、豆乳200cc(コップ1杯程度)が目安になるのでいずれかを摂るようにすると良い。
但し、大豆製品を摂ったとしても必ずしも腸内細菌でエクオールに変換されるわけではなく、エクオールを作り出せる方と作り出せない方がいるのだそう。ある調査では約6割の方が作り出すことができないという結果も。4割は大豆製品で、6割はサプリメントで摂ることで補うのがオススメとのこと。自身がエクオールを作り出せるかどうか調べるには〝エクオール尿検査キット〟を利用するのが○。
③ステロイド注射
炎症や痛みが強い場合に用いる。
④手指の体操・ストレッチ
睡眠中は身体を動かさないため末梢の血流が悪くなり朝の手のこわばりが起きやすい傾向にある。エストロゲンなどのホルモンは基本的に血流に乗って手指の腱や関節に運ばれるため血流を良くしておくことが大切。入浴時や桶にお湯を溜めて手浴して温めるなどがオススメ。
起床時に手をグッと握って開くを繰り返す、指をマッサージする、指を軽く反らしてストレッチするなど手指の血流を良くしてこわばりを和らげるようにする。
《手指のストレッチ》
・手のひらのストレッチ(痛み、痺れの予防)
手のひらを前に突き出し、揃えた指を反対の手でグッと手前に反らすことで指の付け根部分を伸ばす。
1日1〜2分程度。こまめに行ってもOK。指を1本ずつ反らすとより効果的。
・親指まわし(親指の付け根部分の関節のこわばりを回避)
親指の付け根をぐるぐると回す。1日1〜2分程度。但し、すでに痛みが出ている場合には無理に動かさないようにする。
今回は女性に多いとされる手指の痛みや痺れを伴う【メノポハンド】についてご紹介しました。
更年期や産後における女性ホルモンの変動が大きく影響するとされる〝メノポハンド〟ですが、専門医の力を借りたり、セルフケアを施すことにより予防・改善が可能であることが確認できました。
手指の関節に違和感がある、もしくは日常生活に支障があるほどの痛みを伴う場合には早めの対処をオススメします。